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こちらは『褐色の蛇~国家認定緩和医・望月亜桜の日常』の「プレ公開版」です。定期購読マガジ…
こちらは『褐色の蛇~国家認定緩和医・望月亜桜の日常』の「プレ公開版」です。定期購読マガジン『コトバとコミュニティの実験場』メンバー限定となっています。正式版は2021年春頃に無料公開予定です。 「お帰り。今日は早かったのね」 亜桜のマンションは病院から歩いて20分の距離にある。自宅のドアを開けると亜桜の母、貴子が玄関まで出迎えてくれた。 「うん、ちょっとお腹が痛くなってさ。薬局に行きたいって言って、16時に早退させてもらったんだ」 「あら、ちょっと大丈夫? 薬飲むよりも先
こちらは『褐色の蛇~国家認定緩和医・望月亜桜の日常』の「プレ公開版」です。定期購読マガジン『コトバとコミュニティの実験場』メンバー限定となっています。正式版は2021年春頃に無料公開予定です。 「802号のスズキさん、もうすぐ呼吸止まります!」 「ほんとに?814号室もさっき急に止まったのよ。家族に連絡しないと。そっちは家族付き添ってるの?」 緩和ケア病棟は、朝からバタバタと忙しい。この場所では死は日常だから、泣き崩れるスタッフはさすがにいないけれども、死の瞬間には多くの