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12エピローグ

こちらは『褐色の蛇~国家認定緩和医・望月亜桜の日常』の「プレ公開版」です。定期購読マガジン『コトバとコミュニティの実験場』メンバー限定となっています。正式版は2021年春頃に無料公開予定です。

 この日も病室は静寂だった。
 ベッドに横たわる患者がいる。家族もいる。看護師がいる。そして褐色の液体が詰まった注射器をもつ医師――望月亜桜がいた。
「それでは、はじめます」
 亜桜がそう告げて、患者の顔を見つめる。患者は、穏やかな笑顔で亜桜を見返し、目で頷く。亜桜が手を伸ばすと、患者は無言でその手を弱々しく握り返した。亜桜はその手を家族の手に渡し、注射器を握りなおす。

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「コトバとコミュニティの実験場」 僕はこのマガジンで、「コトバ」と「コミュニティ」の2つをテーマにいろいろな記事を提供していく。その2つを…

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