#創作
短篇小説「あの店は子沢山」
うちの店には優秀な「子」がたくさんいる。子沢山という意味ではない。なぜならば主語は親ではなく店であるからだ。もちろん子供が働いているという意味でもない。そんなことをして労働基準法を堂々と犯すわけにもいかないし、その必要もない。みな立派に成人しており、その親ではなく本人と正式な社員契約すら結んでいる。
すべてのはじまりは店頭に立つ売り子だった。そのころ彼女以外の店員たちは、誰ひとりとして「子」と
短篇小説「アバウト刑事」
トレンチコートのようでトレンチコートでないような、いやコートとすら言えないかもしれないアバウトな上っ張りの襟のような一帯を立て、今日もアバウト刑事が事件の捜査を開始する。具体的にそれがどんな事件かと問われれば答えようがない。なぜならば彼は、アバウト刑事だからだ。
とはいえ仕事は仕事。まずは現場へ急行しなければならないのが刑事の務めだ。しかし現場といっても、どこが現場なのかを特定するのは難しい