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沿道から「ありがとう」が聞こえる

もうスタートまであと数分というところ。それまで招待選手の紹介や、大会主催者のあいさつでわいわい盛り上がっていたが、一斉に静まり返る。

「それでは、東日本大震災で被災された方々に黙祷をします」と、アナウンスが入る。

かぶっていた帽子を脱ぐ。首を垂れる。黙祷ーーー。

11月3日。文化の日。晴れの特異日(1年で一番晴れる確率が高い日)ともいわれるこの日、東北・みやぎ復興マラソンが開催された。

今大会は、東日本大震災の被災地の復興に寄与することを目的に2017年から始まった

私は、昨年の東北・みやぎ復興マラソンで初フルマラソンデビューをし、今回でフルマラソンは3回目の挑戦となった。スタート会場についてから、ウォーミングアップをし、トイレに行き、エナジージェルを飲み、もう一回トイレに行き、荷物を預け、ばたばたアセアセしていた。

ずっと高揚感があった。これまで何となくジョギングをして出てきた大会だったが、今回初めてまともに練習して臨んだ本番だった。準備万端で、いい結果を望んでわくわくでいっぱい。そわそわしながら、スタート地点に着いた。

そこで黙祷があった。一瞬にしてすっと気持ちが落ち着いた。改めて、この大会が復興を祈念して開催されるようになった大会であることを意識した。

全国から集まったランナーと地元のみなさんが、それぞれ想いあう

頑張れー!というのは、マラソンでの沿道でよく聞く言葉だ。もちろん、すごく力になる。もう足が痛い、お尻も痛い、なんなら肩も痛い。キツいと思いながらも何とかもう一歩一歩前に進もうと思える。でも、この大会は応援の言葉だけではない。沿道から「ありがとう!」と感謝の言葉が聞こえる。

すると、選手側も手を振りながら「ありがとう!」と返す。ありがとう!ありがとう!とあちこちから聞こえる。ちょっとユートピアみたいな不思議な空間の様にも感じられる。

コースの7割が津波の浸水域で、エイドステーションでは被災地の特産品が置かれている。ゴールには復興マルシェがあり、今回は4月に地震があった台湾にちなんだ出店もあった。

私は、震災を直接的に経験したことはない。でも、ここ(東北)に住んでいると今大会も含めて震災に関連した催しがたくさんある。当時を想起させる、心臓をぎゅっと締め付けられるような思いを抱くこともあるけれど、ふわっとあたたかい涙が出そうなる瞬間もある。

マラソンは35キロぐらいから、頑張ってもそれまでのペースで走れなくなる。私が序盤飛ばしすぎて、垂れてきてしまっているだけかもしれないけれど、足が痛くて、あと7キロ、あと6キロ、あと5キロ…と早くゴールしたくてたまらなくなる。つらくてもうサングラスの奥の目は、泣きそう。そんなときに、本当に沿道の声援と、ここまで走ってきたからここで終わるのはもったいないという思いだけで走っているといっても過言ではない。

結果は?

年代別4位!
Finisher!!!!

前回4:00:10だったので、自己ベスト大更新!途中、追い風でびゅんびゅん体が前に進んでいき、いいペースで走れたのと、コースが平坦で記録を狙いやすいというラッキーも重なって、思ったよりいいタイムが出た。

こうなったら3時間半切りたくなってきてしまった。来年も出たい。もうマラソンドはまり。あんなにきつかったのに、乗り越えバイアスがかかりまくっている。ゴール後は、気仙沼のふかひれスープをいただいた。体中にしみわたった。塩分が美味しかった…。

途中、エイドのリンゴを食べたら意外と噛むのが大変で、息をできない時間が長く苦しくなってむせまくったこととか、ランナー皆兄弟みたいなハイテンションな気分になって、似たペースで走っているだけの知らない人に話しかけたり、全部がいい思い出になっている。

学生という身分で、時間がいっぱいあって走る時間もたくさんとれたから今回いい結果が出た。今後、この記録を超えられるかわからない。だけど、マラソンは生涯スポーツだし、何より記録を狙うだけではない楽しみ方があるから、今後も続けていきたい。いつか、海外のマラソン大会にも出てみたい。同じ11月3日に開催されていたニューヨークマラソンとか、ホノルルマラソンとか。


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おなかすいた
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