倖成卓志

趣味:古代中国史、神話、伝承、PRG、漫画。その他、いろんなことに興味あり。新しいもの好き。

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最近の記事

書店の愉しみ

売れる本  先日、このようなニュースがあった。  簡単に言えば「委託販売方式を見直し、『売れる本』を主軸にして、ネット書店に対抗しよう」というものである。  書店巡りをしたことがある人なら分かるだろうけど、これは悪手も悪手。  これを提示したコンサルタントは、書店に行ったことすらないのではなかろうか。そう感じてしまう。  結論は後回しにして、とりあえず記事での不満点を挙げて行こう。 『うちにもベストセラーの本があるよ』 意味が分からない。  これも様々な書店巡りをしたこと

    • お礼を言えない人たち

      「ありがとう」と言うのはダサい?  コンビニやスーパーなどのレジで「ありがとう」と言う客がいる。  それに対して、こう主張する人たちがいる。 「買い物をして、金を払っているから、『ありがとう』という必要はない。むしろ、そんなことを言うのはダサい」  と。 「ありがとう」は言う必要がない?  SNSで上記の話題が何度も取り上げられているが、反応はどうだっただろうか。  きちんと調べたわけではないが、私のTL(タイムライン。投稿された内容のうち、関連のあると思われる内容を自

      • 『古代中国の24時間』

        何を食べた?  『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』(中公新書。柿沼陽平)という書物がある。  登場した瞬間、日本中の中国史愛好家がざわついたと言っても過言ではない。  何という面白い、何という素晴らしい本が現れたのか、と。  突然だが、こう聞かれたら、どうするだろうか。 「今日一日、何を食べたか。日記を付けてください」。  本編と何ら関係のないことだが、本編の趣旨がここにある。  答えは人それぞれだが、日記にどう書くだろうか。  たとえば、朝食はトースト

        • 歴史を好きになったきっかけ

          「歴史を好きになったきっかけは何ですか?」  SNSなどで「歴史が好きだ」という人に対して、よくある質問と言える。  意図としては、いくつか考えられる。 ・歴史が好きなので、他の人がどうやって好きになったのかを知りたい。 ・歴史が嫌いなので、どうして好きになったのかを知りたい。 ・とある国の歴史、或いは歴史上のとある人物が好きだが、その他の国の歴史に興味がない。自分の興味がない国の歴史について、どこに魅力があるのかを知りたい。 ・自分よりも詳しい人に、どうしてそんなに詳し

          買い物をする警察官

          制服での買い物  コンビニやスーパーなどで買い物をしている制服姿の警察官を見た人が「サボっている」とクレームを入れたという話がある。  制服姿ということは勤務中であるから、サボっている(勝手に休憩している)と思う人がいても不思議ではない。  SNSでの反応を見ると、この行為に同意する意見としては「警察官としての緊張感が足りない」、「勝手に休むなんて、もってのほか」、「せめて私服に着替えるべきだ」、「安心して買い物が出来ない」というものが見受けられた。  同意しない意見とし

          買い物をする警察官

          子どもを一人にしておくのは良くないという時代に

          あの人は誰か?  埼玉県で、子どもを放置する行為が虐待であるとする条例案が断念の動きとなった。  なぜこの条例案が通ると思ったのかは疑問である。  とはいえ、子どもを放置しておいてはいけないという発想自体には賛成である。  かつて、地域コミュニティがあった時代。  もっと分かりやすく言えば、隣近所の人たちのことを誰もが知っていて、町内会が機能していたような時代。その頃であれば、これは条例案に挙げることすら考えられなかっただろう。  いま家の前を歩いてるのは田中さんの娘で妹

          子どもを一人にしておくのは良くないという時代に

          他の人の分までがんばるぞぃ(日本と中国との違い)

          近くて遠い日本と中国  日本と中国とでは、「漢字」を使うと言う共通点があり、日本では江戸時代以前までは、中国を先進国として憧れる存在だった。教養といえば、『論語』や『史記』や『老子』など、中国の古典を学ぶのが主流といえた。  その一方で、ヨーロッパなどに比べて距離が近く、近しい存在であると「勘違い」することもある。  自分たちと同じような考えを持つはずだという勘違いである。  現在でも、中国人が起こす騒動や主張に対して「あいつらの言っていることがわからない」、「あいつらの

          他の人の分までがんばるぞぃ(日本と中国との違い)

          よりマシな候補者

          候補者選び  7月11日の参議院議員選挙で、あなたは投票しただろうか。  かつて、「酒の席で話してはいけない」こととして、「野球、宗教、政治」などと言われていた。酔った勢いで、激しい論争が始まってしまうからだろう。  野球には熱烈なファンが多く、チームや選手への好き嫌いも激しい。  宗教ではそれぞれに教義があり、時に他の宗教の教義を否定するものもある。  ただし政治の場合は、少し異なる。それぞれの政党や政治理念に違いがあり、他の政党の理念と反することがある点では同じだ。し

          よりマシな候補者

          『そして誰もいなくなった』(アガサ=クリスティ)

          ミステリー  ミステリーというと、トリックのことばかり騒ぐのは日本だけだと久我京介が語っていたが、さらに付け加えるなら、殺人事件を伴うものばかりなのも日本だけかも知れない。  漫画でありアニメにもなった『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』は青少年向けにも関わらず、殺人事件が多いうえに、トリックも複雑なものが多い。さらに言えば、人間ドラマを構築したがるのも、特徴として挙げられるだろう。  実際、外国のミステリー小説では、殺人事件もなく、トリックもなく、盗難事件のような

          『そして誰もいなくなった』(アガサ=クリスティ)

          多数決≠最大支持

          候補者が減って、当選者が変わる  2021年の衆議院選挙では「野党共闘」という言葉が出て来た。  立憲民主党、日本共産党、国民民主党、れいわ新選組、社会民主党の野党5党が、289ある小選挙区のうち213の選挙区で、候補者を一本化する戦略だった。詳しくは省くが、予想に反して、さほどの成果を得られなかった。  この時の問題のひとつに、「支持政党の候補者に投票したい。他の党には投票したくない」というものがあった。  たとえば、ある選挙区で自民、立民、共産から候補者が名乗りを上げる

          多数決≠最大支持

          動物番組までもがオワコン化

           先日、テレビがつまらない理由について、こんなツィートが流れてきた。  それに対して、私も反応した。  これについて、いろいろ考えたので、少し語ってみたい。  先に言っておくが、私はTV番組をほとんど観ない。朝と昼にニュースを15分程度。バラエティは夕食時に30分程度。スポーツの試合なら最後まで観ることもある。その僅かな時間ですら、不満に感じるのだから、「オワコン化した」と言ってしまってもいいかも知れない。 TV番組がつまらない  TV番組がつまらなくなったと言われて

          動物番組までもがオワコン化

          多様性が奪われる

           『多様性』という言葉が聞かれて久しい。  現在広まっているのは、一言で言えば「いろんな価値観を認めよう」という、社会的多様性だろう。なぜそれが広まっているかといえば、今までは「共通の価値観」が大切にされ、それを守るものが『マジョリティ(多数派)』であり、守らないものは『マイノリティ(少数派)』として排除された。しかし、それでは社会がうまく成り立たなくなってきたからだ。  例を挙げれば、以前までは「夫が外で働き、妻は家で家事をする」のが当たり前だった。片親などの特別の事情が

          多様性が奪われる

          『孟夏の太陽』(宮城谷昌光)

           中国の歴史に興味がなくても、あるいはこの時代に興味がなくても、第2話「月下の彦士」はお勧めできる。ドラマや映画の題材にもなった、感動の物語だからである。  取り敢えず読んでみたいという人は、図書館でもいいし、所有している人に借りて読んでもいい。他の時代や国の歴史に興味があれば、他の話も含めて、手元に置いておきたくなるだろう。古代中国史に足を踏み入れる、きっかけになるかも知れない。  『孟夏の太陽』の舞台は、中国の春秋時代、晋の国。  趙氏一族の興亡を描いたもので、最初の

          『孟夏の太陽』(宮城谷昌光)

          『韓非子』「亡徴」より

           『韓非子』という書物については、著作者の韓非も含めていずれ書きたい内容ではあるが、その中に「亡徴」という篇がある。  読んで字のごとく、「亡ぶ徴候」のことである。国が滅亡するのはどのような時に起こりやすいのかを、かなり厳しい視点で描いている。  その中から、ひときわ現在日本に通ずるものを抜き出してみたい。  下記に挙げるような者を為政者や社長にすれば、当然ながら民衆や部下は困窮する。 ・法律や禁制では手を抜き、謀略や遠謀ばかり行い、国内は荒れていて、外国の援けを恃みにして

          『韓非子』「亡徴」より

          知識を自らのものへ

           先日、中公新書『南北朝時代 ー五胡十六国から隋の統一まで』(著:会田大輔)を読了した。その感想ではなく、数日かけて読んでいて、ふと思ったことを書いてみたい。  それは、知識と情報は必ずしもイコール(同等)で結ばれているものではない、ということだ。  先に挙げた書物は、副題の通り、五胡十六国時代から南北朝時代を扱ったもので、日本ではあまり関心の持たれる時代ではない。それ以前の後漢は研究者も多い。後漢末期から三国時代までを著した『三国志』はさまざまな派生作品が作られ、現在でも世

          知識を自らのものへ