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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.41 「体重計と乙女の心」

 春休みに入って、ミキちゃんと会うことが激減した。

 ミユキちゃんとは塾で会う。当然、坂井とも。


 来年の受験目指してバリバリに勉強する……こともなく、毎日ただただだらだらと過ごしていた。



 ユキノが体重計に乗ってうんうん唸っているので何事かと思うと、体重が一キロ増えたと言って悩んでいた。一キロくらい誤差だろ、と言いつつ俺も体重計に乗る。

 ん……?

 54キロ……?

 去年の夏の身体測定より五キロも増えている。


 それをユキノに言ったら、

「お姉ちゃん、ダイエットしなきゃだめだよ! 豚になっちゃうよ!」

 と必死に訴えられた。

 確かに、二三キロだったら誤差かな、と思うが、五キロとなると確実に増えていると思う。

 乙女にとって「太る」とは、死にたいと思う人が出るほどに嫌われていることである。

 俺は五キロくらいしょうがねぇだろ、と思っていたが、ユキノの

「デブになったら彼氏に嫌われちゃう」

 と言う一言がひっかかって、ダイエットを始めることにする。


 まず、おうちヨガと、やせるダンスを始めた。

 これはユキノから進められたもので、部分ダイエットに効果的、と言う謳い文句のもので、ユキノ曰く絶対痩せるから、とのことだった。


 そして母に無理を言って食事を野菜中心、鶏のササミや胸身などが中心のメニューに変更してもらう。

 ボクサーやレスラーの体格作りメニューである。

 他にもこんにゃく中心のおかずにしてもらったり、スムージーを毎朝飲んだりと努力をした。

 いつも食べていたおやつをなくし、一気に痩せる……つもりだった。


 ところが、体重は意に反して三キロ増えてしまう。


 何が原因? 何がいけないの?


 それから俺はダイエットマニアになった。

 ロング息ダイエットも取り入れ、食事もロハスに、半身浴を入念に……

 アロマテラピーも取り入れ、リラックスに努める。


 体重、停滞。


 なにがいいのか、なにが悪いのか、もうわからなくなってきた。


 でも、とにかくその方法でしばらく続けた。


 すると、一気に体重は減り始めた。


 特に新学期に入ってからの一月では、六キロも減った。


 ブラのサイズが若干合っていないように感じる。

 母に言ってブラを新調する。

 アンダーはそのまま、胸だけ大きくなっていることに狂喜乱舞する。



 食事はいつも学食だったのだが、サラダのみのお弁当を持参、授業中に腹が鳴るという恥ずかしい目に遭いながら、なんとか元の体重まで戻した。


 しかし、油断して学食でご飯をたらふく食べていたら、リバウンド。

 五キロまた太ってしまった……


 それからしばらくはダイエット、リバウンドを繰り返していたが、もしかしたら、五キロ増えている体重の方がベスト体重なんじゃないかと思ってダイエットをやめた。


 それ以後、太ることもやせることもなく運動だけは続けている。


 こんな話を男子にしてもわからないだろう。

 俺だってユキノに言われるまで意識したことはなかった。


 女子は大変なのね……改めてそう感じた。



 ◇



 春休みは一緒に過ごせる日も多くて、とても充実していた。

 ミユキちゃんが一緒の日もあったけど、ほとんど二人きりな状態が多く、まさに幸せ絶好調だった。


 何度もキスはしたけど、それ以上に発展することは、まだなかった。

 まだ怖いという俺の気持ちを尊重してくれて、のことだった。


 春休みは、ゆっくり過ぎていって、新学年になった。


 坂井ともミキちゃんともクラスは別れてしまったが、松永だけは一緒だった。誰か知っている人がいるだけで心強かった。

 なんせ、俺には去年の夏より前の記憶がない。ミキちゃんだけが頼りだったからだ。

 松永がいれば、ミキちゃんも必然的にうちの教室にくることが多くなるだろう。


 ホッと胸を撫で下ろした。

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ちびひめ
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