【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.15 「夏休み、初日」
夏休み初日。
夏休みといえど進学校なのでほぼ毎日課外はある。なので、ミキちゃんは今朝も同じく迎えに来てくれる。
学校に行く途中、ミキちゃんに昨日の開票結果について聞く。
一票は自分だとあかして、もう一票に思い当たる節はないかと聞いてみる。ミキちゃんの返事は
「全然わからない」
だった。
俺はその男子を捕まえようと目論む。しかし、捕まえたところでどうしようというのか……それは俺にもわからなかった。
ミキちゃんは人当たりがよく、面倒見がよい。だから、誰が好意を持っているか判断するのは非常に困難だ。
ミキちゃんから離れずに監視することにした。
課外のときは席も自由なので、ミキちゃんの隣を陣取った。しかし、接近する者は特にいない。ミキちゃんを見つめる様子すら感じなかった。やっぱりあの一票には重みがなかったのか?
何も知らないミキちゃんは今日も友達の恋の相談に応じる。あの一票はホントは女子の書いたものかもしれないと思えてきた。
クラスをぐるっと見渡すと、また坂井と目が合った。なんなんだ、奴は?しょっちゅうこっちを見ているようだけど、ミキちゃんのことを気にしているのか?小一時間問い詰めたい。
その時だ。ミキちゃんを見つめる視線を察知した。
視線を追うと、男子・佐々木がいた。
お前か!お前が犯人だな?!
佐々木はじっとミキちゃんを見つめていて俺の視線には気がついていない。佐々木はミキちゃんをしばらく見つめて、横を向いて軽くため息をついた。
俺は猛烈に佐々木の胸ぐらに飛び込んで行きたい衝動に駆られたが、かろうじてそれを押さえ込んだ。
ミキちゃんの席は一番後ろ、佐々木の席は真ん中辺りだった。だから授業中は視線を感じなかったのだ。今ならはっきりわかる。佐々木、お前ミキちゃんのことを好きだな?
俺はミキちゃんがその視線に勘づかないように祈るしかなかった。
◇
昼過ぎに課外は終わり、ミキちゃんと、どこかでランチして帰ろうという話になる。
どこがいいかな……カストがいいかな、ミセスドーナツがいいかな……
と、視線の先に見覚えある人物が現れた。佐々木だ。
佐々木はミキちゃんに、
「ちょっと大事な話があるんだ」
と切り出した。
やべぇ、こいつ告るつもりだ!
「大事な話なら私も聞くよ!」
としゃしゃり出てみる。
「ミキちゃんだけに話したいから、ごめん」
と言われ、ミキちゃんは佐々木の後に続いた。
「ユウ、ちょっと待っててね」
あうぅ……行かないで、ミキちゃん……
案の定ミキちゃんは茹で蛸みたいに真っ赤になって戻ってきた。
告白されたのは間違いないだろう。問題はその答えだ。
「ミキちゃん、佐々木、なんだって?」
「いや、なんでもない……」
「そんな嘘ついてもすぐにわかるよ!ミキちゃん真っ赤になってるし!告白とか……されたんじゃないの?」
ミキちゃんが更に赤くなる。
「う、うん……実はそうなの……」
やっぱりな、と俺は思う。
「それで、返事は?」
「――まだ待っててって言った」
「それはどうして?」
「佐々木くんのこと、よく知らないし、これから教えてもらうってことで……」
それって、暗黙の了解ってことじゃん? ミキちゃん?
「それなら、俺もミキちゃんのこと、好きだよ」
思わず出た言葉にしまった!と思ったが、ミキちゃんにはもう聞かれてしまった。
「私もユウのことは好きだよ?」
ミキちゃんはそう返してきた。
そういう意味の好きじゃないのに、うわぁあん!
俺はいっそのこと、中身が俺だってことをばらしてしまおうかとすら思った。だが、それも許されるわけでもなく……
俺の初恋はここで終止符を……打たれたかも。