孫悟空のミトコンドリア

健康とは何だろうか?

WHO(世界保健機関)によると、健康とは、

病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること

と定義されている。

うん、正直かなりハードルが高いといえる。
こんなスーパーヒューマンはレアなのではないか?

次にこうした従来の健康の定義を飛び越えて、もう少し広義に捉えてみようと生まれたのが、
wellness」という概念である。

「wellness」とは、

輝くように生き生きとしている状態
本人が病気であるか否かだけに注目せず、健康を手段とし、生き生きと輝く人生を目指す姿勢や志向

である。

これは、1961年に米国のハルバート・ダン医師が提唱したそうである。

その後、世界中の研究者らがこぞって、wellnessの解釈と追定義を重ねており、様々な解釈が試みられている。
そして、近年の定義として、

身体の健康、精神の健康、環境の健康、社会的健康を基盤にして、輝く人生をデザインしていく、自己実現

といったことが提唱されている。

wellnessはある一点だけを切り取った状態、目指すべきゴールというよりも自己実現に向けたプロセスに重点を置いている。

こうして見ると、健康の定義はとても多元的である。
どんな定義に共感するかは各々の好みみたいな感がある。
選択肢が多い現代は、健康の定義も幅広く、どれをチョイスするかも自由裁量となる。

最近、わたしが見た中で最も適切かつ正確に健康を捉えているなと感じた説明は、マフトルド•ヒューバーの定義である。
ヒューバーは「ポジティブヘルス」の提唱者である。

彼は健康とは、

社会的、身体的、感情的な問題に直面したときに適応し、本人主導で管理する能力

としている。

つまり、わたしたちは人生において絶えず難題にぶち当たる訳だけれども、こうした幾度となく立ちはだかる壁を超えていく力、いわば「困難や逆境への適応能力」こそが健康なのであるとするのが、ヒューバーが示す健康となる。

折れずにレジリエンスを高めていく過程に健康があるということである。

ミトコンドリアのバイオハック

あなたの身体を構成する40兆の細胞には1000兆を超えるミトコンドリアが存在し、その入り組んだ膜の表面積は合計で約1万4000平方メートル、サッカー場約4個分の広さになる。ミトコンドリアの仕事は細胞内のプロトンを外に汲み出すことであり、毎秒10の21乗個を超えるプロトンを汲み出している。これは既知の宇宙にある恒星の数にほぼ等しい

ニック•レーン(イギリスの生化学者)

健康を追い求めていくと、ミトコンドリアに行き着くこととなる。
ミトコンドリアは自分の一部ではなく、固有の器官だという。
それ自体で独自のDNAを持っている。
私たちヒトとミトコンドリアは双方向的な関係にあり、互いに影響を及ぼしあっている。

ミトコンドリアは細胞の発電所の役割を果たす細胞内器官であり、電荷を蓄えるバッテリーである。
われわれヒトを構成する約37兆個ともいわれる細胞にとって、このミトコンドリアがいかに重要かがわかる。

ミトコンドリアをハックすることが、脳と身体をハックすることにつながり、wellnessとなるのである。

ミトコンドリアに与える影響として、NGなのが、運動不足や食べすぎ、慢性的なストレス、社会的断絶、孤独であったりする。

逆にミトコンドリアの機能を向上させうるものは何かというと、これと逆のことをすればいい。

喫煙しているなら、禁煙する。
栄養豊富で多様性に富んだ食事を摂取する。
運動する。
肥満を予防する。
過度な飲酒はしない。
自然や人の触れ合いを増やす。

といった具合である。

なぜ、サイヤ人は強いのか?

漫画『ドラゴンボールZ』の主人公である孫悟空は強敵と戦い、土壇場でこそ力を発揮する。
あれこそ、ヒューバーが提唱する健康そのものではないかと、わたしは考えるのである。
常に強敵と戦うことを生きがいとして、死闘を繰り広げるたびに、ぎりぎりの中で勝利を勝ち取り、より強くなっていく。
自分の持てる能力以上のものを引き出せないと、負けてしまうような相手と対することでよりレジリエンスが高まるのである。

孫悟空が強い原因を探ると、そこにサイヤ人の持つミトコンドリアの強さにあると推測する訳である。

適度なストレスがミトコンドリアを最適化する

孫悟空が強敵と戦っているときには、とてつもなくウキウキして楽しんでいるとはいえ、適度なストレスがかかっているはずである。
そして、そのストレスがミトコンドリアにとってはプラスに働くのである。
この作用は、

ホルミシス

と呼ばれる。

ホルミシスとは、ストレッサーがもたらすプラスの効果のことである。
ストレスとは、カラダにとってはネガティヴな印象があるが、役に立つこともある。

ホルミシスは、〝適度のストレスが有益な生物学的反応を生み出す〟ことを意味する。

なんとかもって超えられる程度の壁を設定することで、ミトコンドリアに負荷をかける。
それにより、ミトコンドリアはその需要に応える形でエネルギー産生量を増やす。

そして、その後に大事なのが、十分な休息である。
しっかり、回復時間を取ることでミトコンドリアは、ストレッサーから受けたストレスに対してレジリエンスを発揮する。

ストレスと回復のバランス〟が欠かせないのである。

孫悟空は漫画の中で、死闘を繰り広げた後は、大抵、エネルギーチャージのために食事をし、しっかりと休息している。
その食事量は亀仙人やブルマをはじめ仲間たちも唖然とし、脱帽するほどである。
あれこそ、ミトコンドリアにとっては、最適なハックなのである。

レジリエンスを高める

わたしたちにも、サイヤ人ほどとはいかないまでもレジリエンスを高めることは出来る。

その代表例として挙げると、

サウナやファスティング(断食)、適度にストレスがかかる仕事、有酸素運動やウェイトトレーニング、登山やダイビング、HITTと呼ばれる高強度インターバルトレーニング

などである。

どれもカラダにとっては、適度なストレッサーとなるものである。
このストレッサーを利用して、ミトコンドリアを刺激する。
そして、その後はしっかりと意識して休息する。
このサイクルがサイヤ人のように細胞レベルで我々を健康にするのである。

ミトコンドリアを意識して、生活するかしないかで結果は如実に差が出てくるはずである。

ホルミシスを知ることで、ストレスがネガティヴなものではなく、カラダにとっては有益になるものであると分かると、ストレスを楽しいもの、むしろ歓迎すべきものとして捉えることが出来るので面白い。

しかし、度を越えたストレスはその然りではないので、見極めは肝心である。
過度のストレスは慢性炎症の原因となり、カラダにとっては害になり得るので、そこはうまく柳のようにかわしていきたいものである。




ホルミシス

ゼノホルミシス

ストレス

サイヤ人

野菜の持つ毒
岸辺露伴

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