名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)05
▼ 本記事はこちらの続きとなっております。
名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)01
名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)02
名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)03
名刺代わりの小説100選・2024年版(コメンタリー)04
最後はミステリ・サスペンス小説から10冊選んでみました。〆は『そして誰もいなくなった』、不朽の名作です。多くは有名作・話題作ばかり並んでいるので説明不要かもしれませんね。(そうなったのは自分がミステリに詳しくないからでもあります。)
本記事で取り上げたいのは、笠井潔『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』/ローラン・ビネ『言語の七番目の機能』の2冊。どちらも推理に関わらない部分の記述が豊かで、それゆえに推理小説以上の深みを見出すことができました。
『転生の魔』は、ミステリとしての完成度は(同作者でもより良い作品があるだろうという意味で)そこまで高くないと感じるのですが、作中で描写される学生運動の雰囲気や矛盾、思弁小説的な語りに惹かれました。また、タイトルからお察しになった方もいらっしゃるかもしれませんが、私の大好きな作品が引用されています。そういう点でも外せない一作だと感じました。
『言語の七番目の機能』について。ローラン・ビネは『HHhH』の方が有名かもしれません。ですがこちらも面白いです。作者はロラン・バルトの交通事故死という史実に疑問符を挿入して、ミステリ小説に仕立て上げてしまいました。なんとロラン・バルトを殺した犯人がいるというのです! 作中に登場するフランス現代思想の大家たちもたいそうコミカルに描写されていて、(そこまでしてええんか?、と思いつつ)読んでいて笑ってしまいます。
ここで一つ注釈を。言語の機能について、言語学者であるヤコブソンは下記の6機能に分類しています。
ここにもう一つ、言語には隠された機能があるのではないか? これが『言語の七番目の機能』というタイトルに回収されていくことになります。が、実のところどうなのか。その点については小説を読んでお楽しみいただけると幸いです。
【終】
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