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私の読書日記:2021/03/15

※※ヘッド画像は 鹿鹿 ユウ さんより

 今日の記事は、最近読んだ本について。最近に読んだ本の感想を手短にまとめておく。

1.アンダース・ハンセン『スマホ脳』

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 スマホが人間の脳に対していかに作用し、いかに悪影響を与えるかについて論じた新書。内容としては面白い。スマホ依存をギャンブル依存に喩えた意見、非効率なマルチタスクを人類は止められないという主張は新鮮であった。数値としてデータも多く出されている。
 しかし、引用文献一覧がないのは、やや痛い。データに関しては引用元の論文が分かるようにするべきだ。主張がセンセーショナルである分、冷静に読むべき一冊である。

2.トマス・ピンチョン『重力の虹』

重力の虹-min - コピー

 読んでいて興奮が止まらない本であった。この小説については、今後詳細に取り上げようと思う。ただ、刺激の強い下品さがある点については注意したい。具体的には”South Park”程度の性的・暴力的描写がある。
 また、この本は百科全書のような小説である。宗教、歴史、文学、科学、ドラッグ等の知識が詰め込まれている。そういう点では、トマス・マン『魔の山』に近い。さすがにドラッグに関する描写はないものの、宗教や歴史や経済や科学の知識がこれでもかと詰まっている。

3.中村文則『教団X』

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 ファンの方には申し訳ないが、私はこの作品を”偉大なる失敗作”だと評したい。露骨な性描写や幅広いテーマ選びを見るに、『重力の虹』のような小説を目指していたのではないかと思う。(もちろん、これは邪推かもしれない。)
 しかし、その試みは完全に失敗してしまったように感じる。特に、宗教団体を舞台として選んでしまったせいで、小説世界に矛盾を生じてしまったように思う。宗教団体というのは閉塞的な空間である。したがって、個々の人物に焦点を当てやすいものの、小説自体の世界は狭くなってしまう。百科事典のような小説には小説世界の大きさが求められるのに、舞台設定が小説世界を狭くしてしまったのだ。先ほど「矛盾している」と申し上げたのは、このせいである。
 ただ、著者の試みに関しては敬意を表したいと思う。日本からも『重力の虹』のような重厚な小説が生れてほしいからである。そういう点では、ぜひ著者を応援したい。

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水石鉄二(みずいし)
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