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ヒステリーと機能性神経障害
先週の研修会で、
慢性ストレスに対するアプローチを考える上では脳科学の知識が必要ですよ、っていう話をしました。
(今からの申し込みでも、10月4日までアーカイブで見れます!)
なぜならば、
ストレスによって脳の機能が変化してしまうからですね。
さて、
脳に異常があるんじゃね?と疑った場合に受診するのは「神経内科」です。
一方で、
精神機能に異常があるんじゃないか?と思った時に門を叩くのは「精神科」です。
もうお分かりだと思いますが、
両方の領域にまたがっている疾患もそれなりに存在するんですよね。
今回はその中でも代表格である、ヒステリーについて深掘りしていきます。
今はヒステリーとは言わない
ヒステリーは現在の診断基準でいうと、
「転換性障害・解離性障害」に分類されています。
●転換性障害(変換症)
葛藤やストレスといった心理的要因が、身体症状として転換されていることを示す。
簡単に言うと、
身体には何の問題もないのに、運動機能や感覚機能に異常をきたす障害です。
●解離性障害
極度のストレスや心的外傷が引き金となって精神や身体的機能が意識から解離し、自分の意志でコントロールできなくなった状態。
漫画でよくある、
「衝撃の事実を知ったヒロインが失神する」のは解離性てんかんです(笑)
さらに、
転換性障害の別名として「機能性神経障害(FND)」があります。
ややこしいですね…
機能性神経障害とは
機能性神経障害における身体症状には、実に様々なものがあります。
・握力の低下
・運動麻痺
・感覚障害
・視覚障害
・歩行障害
・振戦
・てんかん発作
etc.
一見すると、「え、脳卒中?!」と思ってしまうような身体障害が出るんですね。
そのため、神経内科医による鑑別診断がとても重要になってきます。
さらに特筆すべきなのは、
DSM-5 (精神疾患の診断・統計マニュアル)における 機能性神経障害(FND) の診断基準では、
心理的要因の特定が不要になったことです。
昨今、
「ヒステリー」や「心因性」といった言葉をあまり聞かなくなった理由もここにあります。
心と身体のどっちが原因なのか?を問うよりも、
「ニュートラルな病名を患者と共有して症状の回復に繋げようぜ!」
という考えが主流になってきているんですね。
うん、これは良い流れだと僕も思います。
器質的な疾患(脳障害とか)を除外することも大事だよ、
と先に書きましたが、これも程度の問題です。
「除外診断のための徹底的な検査は必要ない」というのが、
DSM-4 TR からDSM-5への改訂で示されているんですね。
なぜならば、
「あちこちの病院をたらい回しにされていろいろ検査したけど、結局悪いところは見つからなかった」
みたいな患者は難治例になりやすいからです。
そういう患者さん、けっこういますよね…
機能性神経障害の陽性徴候
運動麻痺についての鑑別検査を少しですが紹介しましょう。
・Drift without pronation
バレー徴候検査の肢位を取った際、麻痺側上肢が回内することなく落下する
・Leg-dragging gait
ぶん回し歩行にならず、麻連している(と訴えのある)方の足を引きずるように歩く
・Hoover's sign
![](https://assets.st-note.com/img/1695126681205-rVxXwKOGjQ.jpg?width=1200)
✔️健側下肢を伸展挙上したときに、麻連側の下肢を床面に押し付ける力を、踵の下に置いた検者の手で評価する。
→器質性障害では力が弱く(麻痺してるから)、機能性では強くなる(ホントは神経障害がないから)
✔️麻連側下肢を伸展挙上したときに、健側の下肢を床面に押し付ける力を、踵の下に置いた検者の手で評価する。
→器質性障害では力が出る(頑張って上げようとした代償)が、機能性では弱い。
・Sonoo's Hip abductor sign
一側下肢外転位で、両下肢に内転方向へ抵抗をかけた時に動くか否かを評価する。
![](https://assets.st-note.com/img/1695126726609-jzaMKrjwf6.jpg?width=1200)
✔️器質性麻痺では、健肢外転でも患肢外転でも患肢が抵抗に負けて動いてしまう。
✔️機能性麻痺では、患肢外転時に強いはずの健側も検者の抵抗に負けて動く。
→健肢外転時には弱いはずの患側も抵抗に抗して動かない。
やり方さえ分かってしまえば、僕らでも簡単にできそうですね!
ちなみに、病歴から機能性神経障害を疑うヒントは以下の通りです。
・若い女性
・急性発症、非進行性の経過
・多数の自覚症状(身体の多数の部位の痛みや違和感など)
・疾病利得(症状があることで何らかの利益を得ること)
・精神疾患、自傷行為の存在
・軽度の外傷が誘因
こういう患者さんって、結構いるな〜という印象ですね…
機能性神経障害の治療
脳神経内科医の診療=説明自体が認知行動療法となる
と言われています。
その際の注意事項をまとめるとこんな感じ。
①「機能性神経障害」「機能性筋力低下」などの明確な診断名を告げる
世の中に多い疾患であることも伝える
②神経系の構造に異常はないけれども脳からの命令が身体に届いていない状態なのだと説明する
コンピュー タで言うと,ハードウェアに問題はなくソフトウェアの問題なのだというたとえを用いる
③神経系に器質的な障害はないのだから必ず回復すると保証する
④初診時に精神的問題についての質問はすべきでなく、精神的な問題だと言う必要はない
原因を尋ねられたら「人により様々で、外傷やストレス等が誘発することもあるが原因不明のことも多い」ぐらいの答えにとどめる
⑤座位で Hoover 徴候をやって、力が入ることを実感してもらう
⑥ できる限り次回の予約をとる
2 回目の診察で再度診断を確認し、初回の説明の効果を確認する
回復の可能性が高い機能性疾患ですよ、
という新しい認知を患者さんに与えることが認知行動療法になり、実際に生活や行動様式が変わるわけですね。
ここまでのアプローチで改善が得られなかった場合に、理学療法の適応となります。
近年、理学療法の有効性を示す報告も増えてきています。
その具体的な内容については、次回ご紹介したいと思います!
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理学療法士を11年やってきたけど、自分のパーソナリティを今すぐ理解して欲しい。学校では「患者や同僚との関わり方」は教えてくれない。真面目な人ほど対人関係でメンタルを病みやすい。でも、自分の根っこを知ると変われる。パーソナリティを作る”5つの特性”について分かりやすくリプ欄に書きました
— 寺島佑@理学療法士×ストレス心理学 (@re_1021_) February 27, 2023
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