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『運命を拓く』(著:中村天風)

【内容】
独自の自己啓発理論を提唱した中村天風の考えをまとめた本。


【感想】
中村天風という名は知っていて、ずっと気になったままになっていたので、読んでみることにしました。
言っていること自体は、自己啓発本とかでよく見掛ける内容かなあと…
ポジティブシンキングとヨガ的な考えをまとめたような…
Wikipediaなどだと、日本におけるニューエイジの先駆者的な捉え方されているようです。

ただ冒頭は、中村天風の生涯について、ざっと説明していたのですが、物凄い濃い人生が語られていました。
学生時代に柔道の練習試合で勝って逆恨みされ、闇討ちされ出刃包丁で襲ってきた生徒を殺してしまったり…
満州に潜入して諜報員をしていたとか…
その後、肺結核を患い苦しみながら、身体を治すために世界中を飛び回り教えを請い、最終的にはインドのヨガの聖人の元で修行して、結核を治して、悟りに至ったとか…

出てくる名前もビッグネームばかりで、親交のあったという孫文になりすましてアメリカに密航するとか、ミュシャのポスターにもなっている大女優サラ・ベルナールのもとで居候していたとか…

また、著作の中には意外な人物の名前が出てきていました。
例えば、田中智学の名前とか…
Wikipediaで中村天風の項目を調べていたら、天風の葬儀委員長は、日本船舶振興会の笹川良一だったり…
また、中村天風の主催している天風会のWEBサイト見ていたら、現パナソニックに創業者の松下幸之助など様々な著名な人間がこの天風会の会員で、その中に今売れっ子の思想家であり武術家の内田樹の合気道の師匠である多田宏が天風会の会員なのだそうです。
左翼系の言論人である内田樹と、右翼の大物である笹川良一が、不思議な形で関わっているというのも興味深いと感じました。
薄らとは知っていたのですが、改めて調べてみると面白いですね。

ここ最近、読んだ天風に直接的間接的に関わった人や場所などのことが、色々と頭の中で結びついてきたりして、なかなか興味深いなあと感じました。
小説『銀河鉄道の父』で取り上げられた宮沢賢治は田中智学とは関わりが深いですし、ノンフィクション『悪名の棺 笹川良一伝』の笹川は天風の葬儀委員長をしていたり…
天風が学友だった三菱財閥の創業者の子息住んでいた屋敷で会話したなんてことを語っていた場所は、一昨日通った清澄公園や清澄庭園だったりとか…
昨日行われた都知事選挙の候補者が所属していた野党は、その議員の中には松下幸之助の作った松下政経塾の出身者が多く在籍して、未だにその影響量があったりとか…
今放映中のアニメ『終末トレインどこへいく?』は、明らかに『銀河鉄道の夜』やそれに影響を受けて描かれた『銀河鉄道999』がベースになっていたり…
色んな物事が絡み合い、影響されあいながら、今に至っているのだなあとかといったことも強烈に感じたりもしました。

知っている人たちにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、戦前から戦後へと続く日本の自分のよく知らなかった一旦を感じた読書体験となった本でした。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000197824

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