『能面検事(著:中山七里)』 一度走り出した『真実』を、誰が止められるのか?
【内容】
決して表情を変えることのないやり手の検事の不破の活躍を描いた小説。
※ちょっとネタバレします。
【感想】
この作品は、複雑な法曹界の事件を若手弁護士・美晴の視点を通して、非常にわかりやすく描き出しています。特に、ベテラン刑事・不破の魅力が、美晴の新鮮な視点と対比されることで際立ち、読者を物語に引き込む力があります。
意外な結末や警察組織の闇を暴く展開には驚かされましたが、その一方で、美晴の成長物語としても楽しめる点が魅力的でした。物語が進むにつれて、彼女がどのように変わっていくのかが丁寧に描かれており、物語に深みを与えています。
以前、この作家の創作に関するポッドキャストを聴いたことがありますが、彼はどんな作品でも3日でプロットや設定を仕上げ、編集者に見せてから執筆に取り掛かるそうです。そして、編集者からのリテイクは一度もなく、どの作品もスムーズに完成させているとのことです。また、読んだ本の内容をすべて記憶しているとか、睡眠時間が1日3時間ほどしかないなど、驚くべきエピソードをいくつも思い出しました。
そのスピード感で作り上げられた作品にもかかわらず、これほどのクオリティを維持していることに驚かされます。そのため、物語には明確な道筋があり、一気に書き上げたからこその勢いが感じられる文章やストーリー展開が実現しているのだと強く感じました。
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334791230