『ルックバック』(アニメ映画)
視聴環境:グランドシネマサンシャイン(シアター3)
※ちょっとだけネタバレします。
【内容】
自信満々で活発な主人公と、引きこもりの少女、2人はやがて共同して漫画を描くようになる…
『チェンソーマン』などの漫画を描く藤本タツキによる漫画作品のアニメ映画版。
【感想】
上質な青春映画とか純文学を観たような感覚になる作品でした。
映像のルックというか、作画のレベルが次世代のものになっている…
クレヨンしんちゃんとかみたいに、作画の線を必要最低限にするというレベルをより次世代的に発展させたというか…
フォトリアルな作画的表現から、ちゃんと絵としてリアリティを抽出した上で、2Dアニメ化しているというか。
線が艶かしい…
線を動かす、ものを絵にして動かすことの快楽性みたいなものを感じる作品でした。
最近の同一作者原作の『チェンソーマン』や『鬼滅の刃』を始めとしたクオリティの爆上がりしたアニメシリーズ的なアニメ表現を、より進めた表現になっているなあと…
絵のディフォルメの仕方も、アニメーション的な文法というよりも、江口寿史とかイラストレーション的な文法で作ろうとしているなあと…
アニメの一場面を切り取っても、それがセンスの良いイラストレーションになってあるというか…
少数精鋭で、凄腕のアニメーターが作った優れた作画ばかりのアニメで、短いだけに捨てカット的なシーンも少ないのも、この作品にとってはプラスになっているとも感じました。
この作品を観てしまうと、『この世界の片隅に』でやっていたアニメ表現が、少し稚拙に見えてしまうのではないかとも感じました。
ストーリーも創作することをテーマとした青春ものというだけではなく、タイムループ的な手法も取り入れつつも、その枠組みを利用して、より私的な表現に昇華しているなあと感じました。
物語のクライマックスに出てくる京都アニメーション放火事件を思わせる事件も、青年期における喪失の象徴的なものを思わせるだけではなく…
アニメで、京都アニメーションの事件を思わせるということを考えると、よりその意味するところが大きいなあとも感じました。
あと、声優をやっている俳優の河井優実も、凄くいい演技していたのも印象に残りました。
日曜日の午後に急遽いくことにしたのですが、3時間ほど前に予約しようとしたら、座席が9割が埋まっていたりして、人気あることを感じた作品でした。
1時間に満たない作品で、劇場での回転数が稼げるので、観客動員数もかなりいくのではないでしょうか…
色々と感情を動かされて、まだこの作品について、上手く言語化出来ていない状態だったりしますが…
唯一言えるのは、この作品は青春アニメというかアニメ作品として、これから残っていく作品だと思いました。
https://lookback-anime.com