テニス上達メモ012.ボレーは振ったほうが安定するという新常識!?
▶ボレーは「振るな」と指導されるから難しい?
「ボレーはラケットを振るな!」
「面を作って当てるだけ!」とよく指導されます。
至近距離の対戦相手から打たれたボールをノーバウンドで打ち返すため、時間的&空間的な余裕がないからというのが、その理由。
ところが実際に、ピッタリと打点のところで面を作って、絶対にラケットを後ろに引かず、顔の前に構えておいて、コーチの教えのとおりに打ってみても、ガツッと嫌な当たりになったりしませんか?
振らずに当てているだけなのに、芯に来ない……。
実は、「振らないから難しい」かもしれないのです。
▶ゴルフの「ワッグル」を、テニスのボレーに応用
ラケットを固定して持つよりも、ヘッドを軽く振ったほうが、重心位置を感じ取りやすくなります。
ゴルフでいう「ワッグル」みたいなもの。
筋肉そのものに、筋肉が今どれくらい伸びているのか、縮んでいるのかを感知するセンサーがあり、手や腕の力を抜いて振った場合に、重心位置や長さ感覚などを感じやすくなります。
ですから少し振ってみると、意外にもミート率が高くなるのです。
▶パットもバントもボレーも、振ったほうがミート率が高まる可能性
ゴルフでは、振り幅を出せないショートパットのほうが、芯に来にくいというのは経験的によく知られています。
野球のバッティングでも子どもたちに打たせると、振るヒッティングよりも振らないバントのほうが、ミート率が下がる傾向です。
飛んでくるボールのスピードや相手との距離感などお構いなしの振りすぎは、もちろん打球タイミングが間に合わなくなるかもしれませんが、ボレーはある程度スイングしたほうが、ミート率が高まる可能性があるのです。
▶ラケットを振らない「意識」が、ボレーを難しくする
もちろんラケットを振ろうと「意識」すると、ボールに集中できなくなります。
しかし今、「無意識」で振ってしまっているというなら問題ありません。
むしろ改善しようとして「ラケットを振ってはいけない」「固定しよう」「手首はコックする」などと「意識」するほうが、ボールに集中できなくなる弊害が大きくなります。
またラケットを固定すると、腕のしなやかな動きが使えなくなります。
ボールを捕える練習として、超初心者にそのような指導(ラケットを止めておいて手出しのボールを当てさせる)をするコーチもいますけれども、試してみると分かるとおり、むしろラケットにボールがかすりすらしなくなったりするのです。
仮にラケットを振って(しまって)、「振り遅れる」というなら、いつもご説明している「現実に対するイメージのズレ問題」。
対戦相手から打たれたボールが、自分の打点に飛んでくるまでの時間を推しはかるイメージが、ズレているのです。
▶振らないから、緊張、力み、リズムレスを招く
「ワッグル」のようなもの、とお伝えしました。
アドレスに入ってクラブヘッドを小刻みに動かしたりするのは、筋肉をほぐしたり、無駄な力みを抜いたり、リズムを作ったりする狙いがあります。
これをテニスに当てはめて逆にいうと、ボレーでラケットを振らずに固めてしまえば筋肉が緊張し、力んで、リズムも作れない理屈になります。
またワッグルではクラブヘッドの重さが感じられるというから、テニスに当てはめて言うと、振ることでラケットの重心位置を感じやすくなるとも説明できます。
それによって、芯に来やすくなるから安定もする。
▶「インパクトしてから押し運ぶ」。そんなこと、できますか?
常識的なテニス指導がアドバイスする「テイクバックを小さくすれば振り遅れない」「ボレーはラケットを振らなければちゃんと当たる」というほど、見た目のフォームで解決する表層的な話ではありません。
たとえばそう指導する人に、「振らずに、ではどうやって決定力を高めるのか?」と問えば、「ラケットは止めておいて、インパクトしてからフォロースルーで押し運ぶ」などというけれど、ボールが当たって飛んで行ったあとのフォロースルーでどんなに、どのようなラケット操作をしても、そのショットに何ら影響力を及ぼすことなど不可能なのです。
▶インナーゴルフの「バック・ヒット(ダ、ダッ、ダー)」
ちなみにゴルフがなぜ、難しいかというと、止まっているボールを相手にするからというのがその一因でしょう。
テニスのように動いているボールを相手にするほうが、一般的な印象に反して比較的簡単。
ゴルフのように止まっているボールを相手にする場合、思考が生じやすいうえ、リズムを自分で作り出さなければならない難しさがあります。
それを何とかするためにティモシー・ガルウェイは、世界的にはかの有名な(だけど日本のテニス指導はフォーム矯正に腐心するあまり、一般にほとんど知られていないから愛好家にも広まらない)「バウンス・ヒット法」を応用し、「バック・ヒット(ダ、ダッ、ダー)」として流用したのが、『インナーゴルフ』だったのでした。
テニスでいう「バウンス・ヒット法」、あるいはゴルフの場合の「バック・ヒット(ダ、ダッ、ダー)」により、思考をなくせるとともに、リズムに乗れます。
▶頭で考えては、上手くいくものもいかなくなる
「思考をなくす?」
「考えたほうがいいんじゃないの?」
そんなふうにいぶかる向きも、あるかもしれません。
哲学では「人間は考える葦である」などとパスカルが言うように、水辺にか細く生えるがごとく人間は弱々しい存在ではあるけれど、思考することが崇高であるかのようにもてはやす風潮が、あるいは世間一般的にもあるとはいえ、よく考える思慮深い人ほど賢明なわけではありません。
少なくともテニスやゴルフ、あるいはマインドフルネス、禅においては、あれこれ考えない人ほど賢明というふうに捉えます。
打ち方について頭で考えては、上手くいくものも上手くいきません。
ボールに身を委ね、体に任せるのです。
ボレーを打つときボールに集中し、体が振るようであれば、あとは振るに任せるのがのびのびプレーするコツです。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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