テニス上達メモ049.スイングスピードは、意識して上げる必要はない。それでもボールスピードが楽に上がる、実用性の高い2つの条件
▶スイングスピードは上げなくてもボールスピードは上がる
「スイングスピードを上げれば、ボールスピードも上がる!」
「だから、スイングスピードをもっと上げたい!」
そう考えるプレーヤーは、少なくないでしょう。
結論から言うと、スイングスピードを頑張って上げようとする必要はありません。
本稿では、スイングスピードを上げようとしなくても、ボールスピードがアップするメカニズムについて、詳しくご紹介していきます。
▶「意識」と「眼識」は相容れない相関
なぜ、スイングスピードを上げようとしなくていいのか?(上げようとしてはまずいのか?)
まず上げようと「意識」すると、同時には、ボールが「見えなくなる」からですね。
認識に関する、「一時にひとつ」の原理原則について、おさらいしておきます。
私たちは見ているとき、聞こえないし、聞いているとき、嗅げないし、嗅いでいるとき、味わえないし、味わうとき、感じないし、感じるとき、意識できません。
ゆえに(スイングスピードを上げようと)意識しているとき、(ボールが)見えなくなるのです。
▶ボールに対する「視覚的集中力」を上げる
分かりやすいのは今、これを読んでいる最中にも「空調の音」が鳴っていたかもしれないけれど、読んでいる最中だったから、聞こえなかったはず。
だけどこうして指摘されると、よく聞こえてきましたね。
空調の音をよく聞きながら、今度はこれを読み進められなくなるはずです。
認識に関する「一時にひとつ」の原理原則が働くから、プレー中にスイングスピードを上げようと「意識」する必要はない(上げようとしてはまずい)のです。
テニスを上手くプレーするには、スイングスピードを上げることよりも、ボールに対する視覚的集中力を上げるほうが、優先順位は高いのですから。
※ですから常識的なテニス指導で行なわれる「フォーム」も意識するとまずいのは、言わずもがなです。
▶振り回す割りに「貧打」
また、たとえスイングスピードを上げられたとしても、それでショットのクオリティが直結して向上するとは、考えにくいでしょう。
むしろいたずらにスイングスピードを上げたとしても、いい結果にはつながりにくい。
これはきっと、想像がつきますよね。
例を探せば、枚挙にいとまがありません。
たとえば、やんちゃな男子。
メチャ振りするものの、ガシャ当たりが目に浮かびます。
ブンブン振り回す割りに貧打。
しかも、コントロールもままなりません。
ボールスピードを上げたくて、スイングスピードを上げるのだけれど、結果的にボールスピードはガクンと「下がっている」のです。
▶ゆったり振っても「高速ショット」のわけ
このショットの劣化は、認識に関する「一時にひとつ」の原理原則によるものです。
では、こう思われるかもしれません。
「自分はスイングスピードが遅いから、ボールスピードも上げられない……」
あきらめるしか、ないのでしょうか?
いえ、悲観する心配はないのでご安心ください。
たとえばテニス上級者は、ゆったりと振っているように見えて、飛び出すボールのスピードはそれ以上に速いと、意外に感じたご経験はないでしょうか。
これは、力任せにブンブン振り回す「やんちゃ男子(←あくまでも主観的な例)」と、一体何が違うのでしょうか?
▶「空間認知」と「タイミング」が鍵
ひとつは、スイートエリアの中心でボールを捉える空間認知の精度。
そしてもうひとつは、ボールを「今だ!」と感じる瞬間に捉える打球タイミングの精度(「今だ!」は、「打点の場所」ではなく、「打時の時間」)。
この両方が兼ね備わったとき、「ジャストミート!」となるのです。
両精度の高さを兼備。
これをコンスタントに再現し得るのが、先のゆったり振る割りに、飛び出すボールはそれ以上に速いテニス上級者です。
そうなるためには、どうすればいいでしょうか?
▶スイング中のラケットは「見えない」
前提として、空間認知が正確である土台作りこそ、ジャストミート率を高めるための重要な取り組みとなります。
空間認知というと、前方に展開するテニスコートのラインやネットが、どこにどんなふうにあるかを、目で見なくても、イメージとして把握できる能力と、いつもお伝えしています。
一方で、今回取り上げているボールをスイートエリアの中心で捉えられるか否かも、空間認知によります。
具体的には、ラケットがどこにあるかを、目で見なくても把握できる能力です。
当然ですが、テニスを上手くプレーするには、プレー中は、自分のラケットは見ませんね。
ラケットではなく、プレー中は、ボールを見ます。
なので、ラケットを引いたり、振り出したり、振り抜いたりしている最中は(つまりインプレー中はずっと)、ラケットは見えないので、どこにあるのかは、イメージとして感覚的に把握できなければならないのです。
▶スイートスポットを「外す理由」
要するに、ラケットはまったく見ずにプレーするということ。
見えないラケットをイメージで操作して、見ているボールのところへ持っていくのです。
なのでそのイメージがズレていると、スイートスポットの芯を外します。
当然です。
「ここにある」と感じているはずのラケットが、そこになかったら、正確にボールを捕えられるはずがありません。
それはそうですよね。
ヒザの高さだと思って振っているのに、実際にはそれが、太ももの高さを通過していたら、スイートエリアの中心を外してボールを打ってしまいます。
▶「笑っていいとも」で実証済み
「そんなの当たり前だろ!」
「ラケットの位置ぐらいちゃんと把握しているよ!」
そのようにおっしゃる方もいるかもしれませんが、案外そうではないのです。
百獣の王として知られる武井壮氏が、テレビ番組『笑っていいとも!』でタモリさんに紹介した、両腕を水平(真横)に上げる実験を振り返ります。
※動画が見当たらなかったのですが、こちらのページに詳しく紹介されていました。
多くの人が、「そんなのできるに決まっている!」と、思い込んでいたのではないでしょうか?
ところが実際に試してみると、腕でさえ、自分のイメージどおりに動かせないのです。
水平の高さにコントロールできない。
感覚の通じている腕ですら、そうなるのですから、それより先で振り回すラケットなら、いわずもがなでしょう。
「そんなのできるに決まっている!」と、思い込んでいるだけで、イメージがズレているから、毎回間違う(芯を外す)のです。
▶空間認知のズレを「修正する方法」
では、ズレている空間認知を修正するには、どうすればいいでしょうか?
武井壮氏がタモリさんに指導したのと同様に、第三者の助けを借りる。
あるいは客観的な視点を用いて、腕やラケットがそのつどどこにあるのかを、目で見て確認する練習をする。
鏡を使って、「腕がこんな感じのときには、ラケットはここにある」「このタイミングでは、ラケットはここにくる」と目で見て確認すると、現実にあるラケットの位置と、イメージしているところにあるラケットの位置について、両者のズレが自覚されます。
すると、タモリさんが両腕を水平に上げられるようになったのと同様に、ラケット位置に関する空間認知も修正されます。
この時、多くのプレーヤーが陥りがちなのは、イメージどおりのスイング軌道に鏡の中の自分を合わせようと意識してしまうこと。
ですが、そうではありません。
大事なのは、鏡に映ったスイングの現実を「よく見る」ことなのです。
▶「ブライドタッチ」も空間認知
キーボードを見ずに正確にタイピングできる「ブラインドタッチ」も、この空間認知による成果です。
最初はキーの位置を目で見て確認しながら、練習しましたよね。
やがて見なくても、指を正確にキーへ向けてコントロールできるようになる。
それと同じです。
確認するなんて「そんなの面倒くさい!」と思われるかもしれませんけれども、毎回フレームショットを繰り返す徒労に比べれば、よっぽど「急がば回れで」、イメージのズレが修正されると、間もなくジャストミート率は改善します。
その結果、ゆったりスイングするのに、飛び出すボールはそれ以上に速くなる先の上級者のようになるのです。
なぜでしょうか?
▶球速≒「スイング加速+ギア弾性力」
それは自分のスイングスピードによる加速に加えて、対戦相手のボールから得る反発力、およびストリングやラケットフレームによる弾性力なども、最大限に作用するようになるからです。
ボレーなどは、まさにそうでしょう。
上手いプレーヤーは、ラケットをほとんど振らなくても、驚くほど鋭いボールを返球します。
それこそ、スイートエリアの中心で捉える空間認知と、「今だ!」と感じた瞬間に打つ打球タイミングの、両精度の賜物と言えます。
▶速いボールを打つには、まずは「ゆったり」
実際問題として、スイングスピード単体では、ボールスピードに直結しにくいのです。
ですからいたずらに速く振ろうとするスイングスピードの意識的な加速は、逆に空間認知と打球タイミングの両精度に由来するジャストミート率を低めて、ボールスピードを減衰させるマイナスに働きやすいのです。
なのでまずはゆったりとでいいから、できるだけスイートエリアの中心で、正確に、タイミングよくインパクトしたほうが、ボールスピードは上がります(「ゆったり」を意識しすぎるとまたボールが見えなくなるから「自適スイングスピード」)を推奨。
おまけにコントロールもよくなります。
「やんちゃ男子」(←あくまでも主観的な例)による貧打のノーコンとは、雲泥の差です!
▶「両精度が下がる=受傷率が上がる」相関
さらに付言すると一般プレーヤーにとっては、こちらのほうがより深刻かもしれません。
両精度が下がれば、ラケットフレームとストリングが打球衝撃を吸収できる閾値を超えて、そしてプレーヤーが備える筋肉の耐性も破綻し、ヒジや手首を傷める原因にもなりかねません。
つまり意識的にスイングスピードを上げても、空間認知と打球タイミングの両精度を損なえば、ボールスピードも、ボールコントロールも、健康な体も、損ないかねないロスなのです。
簡単に言うと、スピードを上げようとすると、事故りやすい。
それよりもニュアンスとしては、正確な安全運転で無事故のほうが、結果的に目的地へ早く、安全に到着するイメージです。
車にダメージを強いず、燃費もよいのは、言うまでもありません!
スピードを頑張って上げようとするよりも、よっぽど楽です。
▶空間認知とタイミングの「蜜月」
今回の記事をまとめるにあたって最後にもうひとつ、ボールを正確にスイートスポットの中心で捕えられるかどうかも、空間認知のほかに、打球タイミングが関わっている知識も付け加えます。
空間認知さえ正しければ、ジャストミートできるわけではないのですね。
それはそうです。
ジャストの打球タイミングでラケット面の芯を食うはずなのに、0.1秒そのタイミングがズレたら、スイートエリアの中心よりストリング数本分、離れた箇所でインパクトします。
0.5秒ズレたら、フレーム ショット。
1.0秒だと、空振りでしょう。
ですから、スイング中にラケットがどこにあるかを把握する空間認知か正しいにも関わらず、芯を外して打った場合は、打球タイミングがズレていたと顧みることができます。
▶「10000点のインパクト」。これで「快音」が響く!
空間認知と打球タイミングは「掛け算」です。
どちらかの精度が高くても、もう一方が低ければ、出てくるのはロースコア。
空間認知が100点だとしても、打球タイミングが0点だと「0点」です。
両精度が100点だと、「10000点のインパクト」というわけです。
空間認知はプレーの「土台」であり、タイミングはそのつどアジャストさせる「技(ワザ)」といえます。
自分のインパクト音が「ボコッ」と鈍いのに比べて、プロのインパクト音は毎回、「スパーン」とコートに響きわたる、そんな違いがあるのはなぜ?
プロは、ニューボールだからとか、ストリングを張り替えたばかりだからなどは、少しばかりの影響でしかありませんよ(笑)。
プロは、空間認知と打球タイミングの両精度に由来する、スイートエリアの中心で捉えられるジャストミート率が高いから、まるで楽器を奏でるがごとく(ギターやハープなどの音色も、ストリングの振動によるもの)、「スパーン」と快音をコートに響かせるのです。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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