テニス上達メモ043.コートを「横長」に使って、バナナスライスサーブをマスター。「曲がる&滑る率」アップ!
▶スライスサーブは「落ちる」
スライスサーブの習得に役立ちそうなポイントを、ふたつ取り上げます。
極端に曲がって横滑りする「バナナスライスサーブ」の実装法。
まずひとつ目として、スライスサーブは「横曲がりしながら落ちる」イメージを備えます。
特に、「落ちる」という点が、見落とされがちではないでしょうか。
スピンサーブは「落ちる」と一般的に認識されていますが(※注1)、スライスサーブも、回転量にもよりますけれども、落ちる性質の球種です。
たとえば 右利きの場合、サイドスピンをかけて打つとボールには左へ曲がる揚力が働くため、直線的に飛ぶ推進力の強いフラットサーブに比べて、スライスサーブは落ちやすくなる、などとご説明できそうです。
▶回転による弾道変化のメカニズム
先に、回転による弾道変化のメカニズムについてさらっておくと、テニスプレーヤーにとって馴染み深いのはトップスピンでしょう。
進行方向に対して順回転するボールを打った場合、ボールの上側は回転方向に対して空気の流れが逆らうぶん(アゲンスト)、流速が遅くなるから気圧が高くなります。
一方ボールの下側は、回転方向と空気の流れが沿うぶん(フォロー)、流速が速くなるから気圧が低くなります。
空気は流れが遅いと圧力が高くなり、速いと圧力が低くなります。
そして力は圧力の高い方向から小さい方向へ働くから(ベルヌーイの定理)、トップスピンは下向きの揚力を得て落ちやすくなると説明できます(マグヌス効果)。
▶スライスサーブがカーブする理由
ではスライスサーブに話を戻すと、プレーヤーから見た場合、ボールの右側は進行方向に対して回転による空気の流れが逆らうぶん(アゲンスト)、流速が遅くなって気圧が高くなる一方、ボールの左側には進行方向に対して回転による空気の流れが沿うぶん(フォロー)、流速が速くなって気圧が低くなるため、マグヌス効果により左へ引っ張られる揚力が働いて、弾道がカーブするのだとご説明できます。
科学的に分析すると複雑ですけれども、要するにここでは、一体何が言いたいのか?
▶ネット上端から「余裕」の高さを通す
カーブするぶん、直線的に飛ぶ推進力の強いフラットサーブに比べて、スライスサーブは落ちやすいとご説明しました。
ですから高い打点から打つサーブだからといって、打ち下ろすイメージで臨むのは危険という、シンプルかつ周知の事実です。
打ち下ろすイメージだと下にいきすぎて、ネットミスします。
スライスサーブに限らず、打点の高さからネットの上端、そして相手コート側のサービスラインまでを結ぶラインをトレースする(打点目線で見る)と、どんな球種であってもサーブはご存知のとおり、2メートルを遥かに越える身長がないと、打ち下ろすと入りません。
ですから、ネット上端からギリギリの弾道ではなく、余裕を持ってたとえば50センチ上くらいの高さを通過するイメージで打つと、いつも申し上げているストロークと同様にネットミスもしにくく、なおかつスライスサーブは落ちるから、オーバーフォールトもしにくいのです。
▶サーブが高確率で入る「提案」
サーブの入る確率が低いプレーヤーは、特にネット上端ギリギリを狙いすぎるきらいがある。
そうしないと、対戦相手コート側のサービスラインを越えてオーバーフォールトしてしまうイメージがあるからです。
しかしそれは「思い込み」。
実際は、ネット上端以上の高さを通さなければ、サーブは絶対に成功しないのであり、なおかつネット上を通過する高さにはある程度の余裕がないと、入るパーセンテージはどうしても下がるというのが確率論的な提案と言えます。
まとめますと、スライスサーブは落ちやすい。
ですから余裕を持ってたとえばネットの上端から50センチ上くらいの高さを通過するイメージで打つ、というのが、身につけるうえでひとつ目のご提案です。
▶習得のための「ポジションの工夫」
次にスライスサーブ習得に関するもうひとつの工夫として、「ポジション」について取り上げます。
サーブでポジションの話題というのは、些か意外かもしれません。
対戦相手から打たれたランダムなボールに対応するわけではなく、サーブは自分から打ち出すショットなのだから、規定のポジションがある程度定まっていると、「決めつけ」がちです。
しかし、特にスライスサーブをマスターする初歩段階においては、この「ポジションの工夫」が、案外役立つのです。
▶スライスサーブは「ワイドから」
どこに立てばいいかというと、ワイドより(コートの端側)にポジショニングする。
もちろん試合では、サイドラインの仮想延長線上の外側へ踏み越えてはならない定めがあるので、その範囲内でポジションを調整しますが、練習であればそのルールを取っ払い、もっと端から打つ経験も実験としておもしろいでしょう。
ワイドから打ったほうが、コートを「横長」に使って大きく曲げる感覚をつかみやすいというのがその理由。
センターから打つと、つい直線的な「縦長」の弾道範囲をイメージしてしまい、フラットサーブに近い中途半端なスライスしか打てず、横回転をかけながら左に曲がる揚力を利用して打つバナナスライス感覚を、いまひとつつかみにくいのです。
▶コートを「横長」に使う
ダブルスではもちろんですが、シングルスでも初めのうちは、ワイドよりのポジションから打つ、コートを「横長」に使った実験をお試しいただければと思います。
曲がるイメージを、つかみやすいですからね。
そしてスピンサーブの話で触れたのと同様、「落ちる」以上に、バウンド後に「横滑りする」イメージを、ワイドからスライスサーブを打つポジションの工夫により、装備しやすくなるのもメリットです。
▶スピードダウンで「曲がり率」アップ
練習としてのみならず、実戦的な観点から言っても、横曲がり・横滑りするバナナスライスの「くせ球」は、対戦相手にとって対応しにくいものです。
大きく曲げて浅く入れると、対戦相手を「前方」へも揺さぶりやすくなり、これが案外効きます。
逆にどれだけ速くても、素直な球筋のサーブだと、対戦相手に間もなく対応されてしまいます。
なのでひとまずスピードは、それほど求めなくて構わない取り組み方をおすすめ。
スピードを求めすぎると「曲がる&滑る率」は減少し、なおかつシングルスでは特にワイドよりから打った場合、自コート側にできたオープンスペースへ対戦相手からリターンを打ち込まれると、時間的にカバーしきれなくなるリスクもありますので。
▶ バナナスライスは「練習」兼「武器」になる
ですから、いたずらにスピードを求めず、「曲がる&滑る率」を高めたバナナスライスのくせ球で対戦相手を追い込み、その間に、オープンスペースを埋めるポジションの回復を図ります。
ぜひ、スライスサーブを身につけるための「練習」として、そして実戦でも対戦相手を追い込む「武器」として、お楽しみただければと思います。
▶注釈まとめ1:スピンサーブに「落ちる」イメージは不利
※注1につきまして。
スピンサーブは本編で述べたとおり「落ちる」認識が広まっていますけれども、落とそうとするイメージで臨むのは得策ではありません。
むしろバウンドしたら「弾み上がる」イメージ。
「落ちる」と「弾み上がる」とでは、ベクトルが真逆です。
そして体は、「落ちる」イメージに従うと萎縮したスイングを行ない、「弾み上がる」イメージに従えば、ダイナミックなスイングを行ないます。
▶注釈まとめ2:ピンポン球を弾ませるには?
それはそうですよね。
ピンポン球でも、地面に「落とそう」とする場合と、高く「弾ませよう」とする場合とでは、腕の振り方がまったく違ってくるはずです。
落とそうとすれば、「置きにいく動き」になるし、弾ませようとすれば、「叩きつける動き」になります。
体はイメージに従って動くという原則を、どうぞお忘れなく。
▶おまけ:「目的達成」のための「手段」を間違わない
最後に、ややもすればスライスサーブやスピンサーブを覚えるというと、ボールの「こすり方」などが意識されるかもしれません。
確かにそれは「手段」かもしれないけれど、「目的」ではない。
スライスサーブを打つ目的は、安定性を高めつつ、弾道を曲げて滑らせること。
スピンサーブを打つ目的は、安定性を高めつつ、バウンドを高く弾ませること。
切符の買い方を覚えるのは、確かに「手段」かもしれないけれど、「目的地」が定まっていなければ、どこへもたどり着けません。
逆に「目的地」が定まっていれば、必要な「手段」は自ずと集まります。
それは、人生も同じではないでしょうか?
「目的」が定まっていないのに、「手段」であるところの仕事やお金や住居を手に入れたところで、どこへたどり着くのかおぼつかない。
目的は人それぞれでしょうけれども、たとえば「健康に生き抜くこと」がそのひとつだとすれば、仕事で心身を病むのは本末転倒だと分かります。
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