質問166:脱力を意識すると、グリップまで、ぐにゃぐにゃになってしまう
回答
▶力加減も集中しだい
はじめてのご質問をいただき、ありがとうございました。
ちょうど脱力についての似たご相談が立て続けにありましたので、すでにご覧いただいたあとかもしれません。
直近の回答の繰り返しになり恐れ入りますが、力を抜くことを意識するのではなく、ボールに集中していたら体が最適の力感をコントロールしているというのが望ましいと考えます。
私事で恐縮ですが、かつては力みやすく、振り返ると集中していたときは適度に脱力できていたことが多いようだったのですけれども、これは集中状態で体が勝手に力感をコントロールすることで達せられていたと説明できます。
▶脱力を「意識」するのは逆効果
ですから、入力や脱力を意識することは、逆効果。
その時々の状況によって力感はそのつどアジャストされるべきで、「7割の力で打てばいい」とひとくくりにはできない難しさがあります。
同じフォアでも球種によって、たとえばスライスとスピンとでは力の入れ加減は変わるでしょう。
料理でたとえるならば、大根を切るときと豆腐を切るときとでは、力感はふさわしく変わるのが当然であり、それは対象となる物の硬さや質感、包丁の切れ味などから、自動的に体によってコントロールされていると説明できます。
▶考えるから難しくなる
テニスであれば、飛んでくるボールのスピードやエネルギー、あるいは喚起される打ち返すショットのイメージ、さらにはお使いのラケットの反発性や重み、ガットの硬さなどから、無意識で力感がコントロールされるというのが体による自動調整能力のすごみといえます。
だけどそれは、体に備わる本来的な機能なので、実は驚くまでもないのかもしれません。
体は寒ければ、意思に関係なく毛穴を閉じて体を震わせ体温を高めますし、暑ければ意思に関係なく発汗して皮膚の表面を冷やします。
難しく考える必要はありません。
いえ考えるから難しくなるのです。
力感コントロールも同じようなもの。
入力や脱力を意識するのではなく、そのプレーヤーやその時々の状況に応じて、最適な力感が生じるとご了解ください(関連記事「インパクトで『ギュッ』がいらない理由」)。
だけどそれができなくなるのは、意思で考えてコントロールしようとするから。
するとどの程度、力を抜けばいいのか、入れればいいのか、加減が分からなくなります。
▶脱・入力はバランスが大事
あくまでも一般的な傾向として、力を抜きすぎるよりも、力みすぎるほうにプレー上の弊害が生じやすいというまでの話です。
脱力しすぎて上手くいかないというよりも、入力しすぎて上手くいかない例のほうが多く見て取れます。
それが証拠にいただくメールも、「力まないコツは?」などのご質問はあっても、「力を入れるコツは?」というお悩みは見受けられません。
とはいえだからと言って、脱力すればするほどいいというわけではないのです。
▶リラックスしすぎは危険
これは何も、力を入れるか抜くかのフィジカルだけの話ではなくて、メンタルも同様。
精神的に緊張しすぎてプレーが上手くいかなくなる例のほうが、リラックスしすぎてそうなるよりも、圧倒的に多いと言えます。
ですから試合慣れしていないプレーヤーほど、「緊張したくない」と願います。
「このリラックスしすぎをどうにかしたい」という人はあまりいません。
しかし精神的にもピークパフォーマンスを実現するには、バランスが大事。
すなわち、心が緊張しすぎても弛緩しすぎてもアンバランスで、その釣り合いの取れたハイバランスに、ピークパフォーマンスが生じます。
リラックスしすぎとは言い換えれば、緊張感が足りない状態で、だらけてしまっている。
そうするとメンタルの影響を受けてフィジカルも、プレーするために必要な心拍数が上がってこないし、発汗量も不足するなどして、ベストコンディションとはなりにくいのです(関連記事「リラックスが必ずしもいいわけではない」)。
▶坐禅で背すじを伸ばす理由
ややもすれば「緊張はダメ」「リラックスがいい」と、イメージしがちかもしれないけれど、必ずしもそうではないのです。
それと同じように脱・入力も、その時々の状況に応じたバランスが大事。
たとえば坐禅をするときは、背筋をピンと伸ばすようにしますけれども、それはフォームを整える目的というよりも、心身の適度な緊張感を保つための工夫です(関連記事「緊張と弛緩の『シーソーゲーム』」)。
▶調整するから合わなくなる
サーブのアウトが多い日、ネットが多い日がそれぞれあるというのは、いずれも打球タイミングがズレているためです。
一般的には、タイミングが少し遅いとオーバー、少し早いとネットするというように(必ずではないですが)、説明されることが多いと思います。
だけど、「ネットが多いから大きめに打とう」、「オーバーが多いからタイミングを早めよう」など調整してしまうと、余計に合いません。
なぜなら、「大きめに」「タイミングを早めて」などと何かを意識することこそ、打球タイミングを外す最たる原因だからです。
▶サーブは案外、タイミングが合いづらい
自分では打球タイミングが合っていると思っていても、合っていない。
それでも入らないと、「手首を使おう」「ひざの曲げ伸ばしでスピンをかけよう」などと意識する工数を増やす、あるいはさらに意識する程度を強めるというのが、不調が重症化するプロセスです。
特にサーブは、ゆっくりのトスを打つものだから「打球タイミングは合う」と思い込みがち。
しかし実際には、ほかのショットに比べてみてもボール(トス)の滞空距離、滞空時間が(ストロークやボレーに比べて)短めで、同時にスイングスピードは比較的速めのため、打球タイミングは合いづらいのです。
▶「声なき声」を聴く
打球タイミングを合わせるには、直感に従います。
トスしたボールの毛羽に集中していれば、「今だ!」という声なき声が聴こえてくるはず。
そこを狙ってみてください(関連記事「前でとらえようと『意識している』から……」)。
▶「声なき声」が聴こえないとき
だけど「今だ!」が聴こえないこともあります。
それは、「手首を使おう」「ひざの曲げ伸ばしでスピンをかけよう」などと、頭の中で考え事をするセルフトークによる集中妨害による。
セルフトークが大きくなると、その音量にかき消されて「今だ!」の声なき声は聴こえてきませんので、ご注意いただければと思います(関連記事「セルフトークは全て悪いもの?」)。
▶解決しようとしない
人の話を聴いているつもりでも、「それは間違っている」「こう考えればいいのに」などとセルフトークが始まると、聴いているつもりで、相手の話は聴けなくなることがあると思います(関連記事「何とかしようと意識せずに『ただ聴く』」)。
そんなときは自分の思考をいったん脇に置いて、問題を解決しようなどと考えずに「ただ聴く」ようにすると、相手の話が聴けて、それがかえって問題解決につながる可能性もあるものです(相手はただ、話を聴いてほしいだけだったりする)。
それと同じようにサーブも、入らない問題を解決しようとしなければ、「今だ!」の声なき声が聴こえるようになって、かえって問題解決する可能性が高まると言えます。
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