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質問151:ダブルスとシングルスとでプレーの「落差」に悩んでいる

最近、今まで滅多にする事のなかったシングルスをする機会が増えました。
ご相談したいのはダブルスとシングルスとで自身のプレーの落差に悩んでいます。要はシングルスが大の苦手なのです。

ダブルスは軟式での経験があるせいか自分の実力程度のプレーがストレスなくできるのですが、シングルスでは焦ってしまってすぐにミスしてしまいます。ストローク/ボレー共に。

試合に限らずポイント形式の練習でも駄目で常に相手よりも先にエラーがでてしまいます。
サーブには問題ありません。相手の打ったボールに対してうまくタイミングが合わなくなってしまうのです、シングルスの時だけ。

毎回ストレスが溜まってシングルスを楽しめないので何とかしたい一心です。
アドバイスをお待ちしております。

回答


▶イメージに基づきプレーしている

 
人はそれぞれ、意識する、しないにせよ、ダブルスに対するイメージ、シングルスに対するイメージを保有していて、それに基づき、プレーを行っています。
 
これはたとえれば、短距離走のイメージと中長距離走のイメージがそれぞれあって、それに従い走り方を無意識的に変えているようなもの
 
ただし、ときどき短距離走者が中長距離走をやると、ペース配分を誤ってしまうミスが起こり得ます。
 
要するに、時間のイメージに関するズレが生じます。
 
そのようなことが、ダブルスとシングルスとの間でも生じていそうです。

▶ダブルスは短距離走、シングルスは中長距離走


もうお気づきかもしれませんが、ダブルスが短距離走で、シングルスが中長距離走
 
たとえ同じ800メートルを走るとしても、前者はチームで分割しますが、後者は一人で走り切る違いがあります。
 
なのに、800メートルを一人で走るのに、4人で分割して走るのと同じペースで走るとどうなるかというと、当然上手くはいきません。
 
体力的なペース配分の話だけではなく、リズムやタイミングなどの時間に関するさまざまな違い、ポジショニングやコートなどの空間に関するさまざまな違い、戦術や反応速度などプレーの性質上のさまざまな違いが、ボールを打つ上でギャップを生み出していると言えます。
 

▶得手不得手が生まれる理由


実感されていますように、ダブルスとシングルスとではそれくらい、違います。
 
ですから、世の中には逆に、シングルスは得意だけれど、ダブルスは苦手というプレーヤーもいますよね
 
どちらかというとボールに集中しやすいのは、シングルスです。
 
ダブルスでは自分が打たない時間に、ボールから注意が逸れがちです(関連記事「増やしたいのはつねに『ボール情報』」)。

▶スイングを決めている「要因」

 
慣れてしまえばいいと言えばそれまでですが、上手くプレーできない主たる要因をひとつ挙げるとすると、空間認知に歪みがあると疑われます。
 
つまり、ダブルスコートとシングルスコートの広さについて、イメージの中で混乱をきたしているのではないでしょうか。
 
下記(過去記事)では卓球コートやサッカー場の端的な例を示していますが、同じことです。

ご自身のスイングが何によって決まり、形成されているか、ご存知でしょうか?

それは、ご自身が保持しているコートの広さやネットの位置関係といった3次元的な空間イメージをもとに、無意識のうちに形成されています。

ですから、スイングをいくらいじってみたところで、コートの広さやネットの位置関係の3次元的な空間イメージが、現実とは違っていると、ショットは狂います。

逆にコートの広さやネットの位置関係の3次元的な空間イメージが現実どおりだと、ショットはスイングをいじるまでもなく、正確になるのです。

例えば今と同じテニスの道具を使ったまま、「卓球のコート」でプレーを行うとしたら、絶対に今と同じスイングにはなりません。

あるいは「サッカー場」でプレーするとしたら、やはりスイングは必然的に変わるはずです。

つまりスイングの形や大きさ、速さやタッチの強弱を決めているのは、本人は意識していないとしても、コートの大きさやネットの位置関係といった3次元的な空間イメージによるということなのです。

テニスコートの大きさやネットの位置関係について、感覚的に「このくらい」というイメージは誰もが持っていますが、その感覚は結構、人によってさまざまです。

いつも現実に近いコートの広さやネットの位置関係をイメージできる人は、プレーの精度が高く、イメージできない人は、プレーの精度はその分低くなります。

あるいは、コートの広さやネットの位置関係といった3次元的な空間イメージは、状況により、あるいは日により揺らぐことがあります。

例えば同じクロスリターンなのに、相手前衛の立ち位置によって、相手コートが広く感じられたり狭く感じられたりすることがあります。

または日によって、今日は飛びすぎるからコートを狭いと感じたり今日は相手のボールに追いつけないからコートを広いと感じたりする。

この感覚をつねに同じにし、コートの広さやネットの位置関係といった3次元的な空間イメージを現実的通りに脳の中に装備すると、スイングやフォームはそれに応じて自然と決まり、ショットも安定します。

コートの大きさを感覚的に正確に記憶するには、大きさが10.97×23.77メートルであると頭で理解しても、あまり意味がありません。

それよりも、例えばベースライン上を何歩で走れるか体験したり、自分のベースラインから相手のベースラインまでの歩数を数えてみたりするとよいのです。

別に、数字で何歩と覚える必要はないのですが、このような経験を積むことで、脳には新しい刺激が加わり、コートの広さに関するイメージが深まります。

あるいはジュニアのレッスンではコート内で鬼ごっこをしたりすることがありますが、あれは自然とコートの広さを「体感」できるトレーニングになっています。

またはベースラインから自分で球出しをして、相手のベースラインやサービスラインにジャストで落としたり、アングルやアレーを狙って打ったりする練習もいい。

ネットの高さをイメージするなら、打点の高さから、つまりローボレーなら地面スレスレから、サーブなら審判台に乗ったところから、実際に眺めてみたりするといいのですね。

とにかく、新しい感覚的な経験値を増やすことです。

だけど、フォームを意識していたら、そういう広さや角度や高さといった3次元的な感覚は、残念ながら養われません。

これが、コントロールがいつまでたっても定まらない、ショットが安定しない根本原因になっています。

一流プレーヤーほど、コートの大きさやネットの位置関係を、正確にイメージ記憶として保持しています

ですから、狙う先を見なくても、自分の居場所が変わっても、ラインぎりぎりをとらえるボールコントロールが可能(関連記事「『ノールック』で狙う」)。

逆に言えば、コートの広さやネットの位置関係のイメージが曖昧だと、どんなに打ち方やフォームを意識して頑張っても、絶対にコントロールはよくならず、「アウトしたからもう少し小さく」とか、「ネットしたからもう少し大きく」とかの意図的な調整が入るため、どうしてもショットは安定しなくなります。

できないものは、どうあがいたってできません。

知らない町で目的地まで行くのにいくら頑張って歩いても、歩き方のフォームをきれいに整えても、「道順のイメージ」がなければ正確にたどり着かないのと同じです。

ボールコントロールがよくなる方法

▶コートの広さが違うのだから


ご質問内容になぞらえますと、ダブルスコートにあるアレーを含めた広さのイメージがあると、シングルスでは当然上手くいきません。
 
これは、サイドが狭くなるという単純な話だけではなくて、空間認知の歪みは、タイミング的なズレも引き起こすから厄介なのです。
 
ちなみに「サーブには問題ない」とおっしゃる理由は、ダブルスとシングルスとではサイド寄りorセンター寄りから打つ違いはあるにせよ、サービスボックスの広さは、ダブルスもシングルスも同じだからです。
 

▶空間認知の「ズレ」が打球タイミングの「ズレ」を生む

 
たとえばボールを、1メートル先の近くに投げるのと、30メートル先の遠くに投げるのとでは、リリースするタイミングは異なると思いますが、この距離感のイメージが正確でないと、リリースするタイミングももちろんズレるということなのです。
 
テニスで言えば、クロスに打つ場合と逆クロスに打つ場合とでは打球タイミングが異なりますが、クロスと逆クロスに関する空間認知がズレていると、やはり打球タイミングは合わなくなります
 
ダブルスでは角度をつけたショットも使いやすいですが、シングルスではアレーがないぶん、決まりにくい。
 
そのようなミスのイメージ等が積み重なって、空間の認知に歪みをきたしていると考えられます。
 

▶保険をかけて打つから、タイミングのズレが改まらない


同じような話として、バックアウトを極度に怖れるプレーヤーは、保険をかけて短めに打とうとしがちですよね。
 
すると、ベースラインまでの正確な距離(空間認知)が体感としていつまでたっても身につかないから、どうしてもピシャッと打球タイミングが合いません
 
そういう場合はベースラインちょうどに到達する(場合によってはべースラインを割る)ボールを、思い切って打ってみるとよいのです。
 
話を戻すとシングルスコートの広さを、上記(過去記事)に紹介しているような方法で体感されるとよいと思います。
 
目をつぶっても、その広さがアリアリと感覚として分かるようになると、打球タイミングのズレも収まってきますから。
 

▶パートナーに頼れないから「気負う」


とはいえ当然、シングルスはすべてを一人で請け負わなければならないなど、単純に労力&精神力の負担が増す側面があり(反面、至近距離で打ち合う場合のダブルスほど反応速度は求められず、パートナーに気を使う必要もないから気楽にできるという向きもあるのですが……)、そのあたりが気負いにつながっているということもあるのかもしれません。
 
今回お話する分だけではすべては語り切れませんが、上手くいかなければまたいつでもご連絡ください。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero