質問114.サーブはコンチネンタルじゃないと打てない?
回答
▶原理原則は「ノーグリップ・ノーフォーム」
グリップについての基本的な成り立ちについてはこちら。
サーブのグリップは必ずしも、コンチネンタルでないといけないわけではありません。
「テニスはノーグリップ・ノーフォーム」と言いながら、「サーブだけはコンチネンタルじゃないとダメ!」「最初に厚い握りを覚えると、あとから矯正が大変!」などと脅すコーチがいますが、そうではなくて、原理原則は「ノーグリップ・ノーフォーム」です。
▶むしろ「厚いグリップ」のほうが打ちやすいサーブもある
ただ、一般的によく使われるスピンやスライス系の回転をかけたりするにあたっては、コンチはバイオメカニクスの側面からいえば効率的というまでの話です。
少々極端な話ですが、リバースサーブを打つなら、厚いウエスタンもアリということです。
また大会史上最年少の「17歳7ヶ月」でウインブルドン男子シングルスを制したボリス・ベッカーの「ブンブンサーブ」と形容された豪快なサーブは、フォアハンドイースタン程度の厚みがあったそうです。
サーブは、コンチでないといけないわけではないし、打てないわけでもありません。
ご自身がイメージされるサーブの弾道やスイングを実現しようとするところに、グリップは自然とそれにふさわしい握り方が現れます。
また「最初に厚い握りを覚えると、あとから矯正が大変!」などという恐れもなくて、イメージが書き換わればグリップもごく自然と改まりますので、心配したり焦ったりしなくて大丈夫です。
▶「サーブはコンチ」は「決めつけ」
今の※※さんのイメージが、厚めのグリップで打ちやすいサーブイメージになっています。
そのイメージのままですから、グリップだけコンチに変えても、おっしゃるように、「どうも当たりが気持ち悪くてすぐに元に戻ってしまう」というふうになります。
私もテニスを始めたばかりのころはそうでした。
頭では、「サーブはコンチで打つものだ」と決めつけて、構えではコンチで握っているにも関わらず、そのまま振り出してボールを打ったあとにグリップを確認すると、イースタンくらいになぜか持ち変わっているのです。
そういうイメージが私の中にあったからでしょう。
イメージが違うのにグリップだけ合わせようとするから、「グミだと思って噛んだら飴玉だった」みたいなギャップに違和感を覚えるため、「気持ち悪い」のです。
これこそ、イメージに応じた動作やフォームが表れる証左。
その後、コンチに変わったのですけれども、変えようとしたわけではありません。
▶右上に振り抜かれるのは「ただの惰性」
振り抜く方向など、意識しないのが賢明です。
右利きのプレーヤーが薄めのグリップでボールを捕えるにあたって、前腕が右側へ振り抜かれる惰性の結果です。
右側へ振り抜かないと、ラケットフレームでボールを打ってしまいますからね。
専門用語では、この前腕が外側へひねり出されるアクションを「プロネーション」などと言いますけれども、そういった動作は意識して行うのではなくて、弾道やスイングのイメージと、関節可動域の制限などが影響して現れている「だけ」です。
動作を意識すると、動きがぎこちなくなる上、たとえボールスピードの遅いトスであっても、最も肝心な打球タイミングが合わずに打ち損じてしまいかねません。
▶鉛筆の持ち方を変えても「きれいな字」にはならない
いくら理想的な鉛筆の持ち方を指導されても、個性的な持ち方の人が持ち方を改めたら、突然きれいな字が書けるわけではありません。
個性的な持ち方であっても、きれいな字を書ける人はたくさんいます。
きれいな字を書ける人は、持ち方の「形」ではなくて、きれいな字の「イメージ」があるから、きれいに字が書けるのですね。
こういうとなかには、「イメージがあるんだったら、非利き手でもきれいに書けるのではないか?」などといぶかる向きもあるかもしれませんけれども、それは苦手だからなどではなくて、こちらで取り上げた「単なる不慣れ問題」です。
あくまでも「きれい」というのは、主観でしかありませんけれども。
私たちが生まれてこの方、たくさんの字を見てきたなかで、「きれいな字とはこういうものだ」とイメージされているのだと思います。
ですから、読みやすい活字がきれいな字とは感じられないかもしれないし、読みにくい書画に芸術性を見出したりする人もいるのだと思います。
▶軟式上がりのハードヒッター「菊地さん」
※※さんのグリップが厚めだとすると、軟式(ソフトテニス)系のフラットサーブのようなイメージなのかもしれませんが、それでサービスボックスに入るのであればまったく構いません。
私のテニス仲間には、軟式上がりの全ショット、オールウエスタンのプレーヤーがいますが、それはそれは威力のあるサーブを打つし、ボレーも鋭いです。
ストロークも恐らく、両サイドとも同じウエスタンのワングリップで、ラケット面をひっくり返しながらフォアとバックを打ち分けているのだと思います。
フォームは一般的に見れば個性的かもしれませんが、その菊地さんは打球タイミングを合わせる精度が非常に高く、ミスらしいミスはほとんどありません。
▶面の真ん中で捕えて「ホールド性」を高める
ただ、入れるエリアが狭くて、ネットの障害物の影響を強く受けるサーブだけに、入りにくいとすれば、少し回転系の要素を取り入れたほうが楽かもしれないとは思われます。
これからご説明することを実践していただければ、極端にグリップやスイングを変えたりする必要はあまりない(だけど自然と変わる可能性はある)のでご安心ください。
ひとつの納得を得る考え方として、「フラット系では飛びすぎるエネルギーを回転に逃がす」と捉えてみてください。
これなら、今までのフラット系のイメージをあまり損なうことなく、回転系をものにできます。
その上でスピンがかかるかどうかは、「スイングの角度」や「スイングスピード」ももちろん関与しますが、「ラケット面の真ん中で当てられたかどうか」がそれにも増して影響します。
真ん中で当てると、円の中心部に働く力は360度均一なので、反発力はもちろんですが、ストリング面がたわんでボールを包み込むと言ったら言いすぎかもしれないけれど、ホールド性が上がって回転もよくかかるのです。
特にサーブは下から上へ振り上げる系のスイングですから、ラケット面を極端に上へ向けて打たない限り、ナチュラルなスピン系の回転がかかります。
だけどラケット面の真ん中を外して打つと、それらの効果がかき消されます。
円の端では力のかかり方が均一ではないため、反発力は落ちるし、ストリング面はボールをホールドしないから回転もかかりにくくなるというわけです。
トランポリンの端っこで跳ねたら、大きく反発できないし、ヘンな方向に飛び出すのと同じです。
▶「空振り問題」発生
特にサーブは、日常生活ではあまり馴染みのない頭上で行う作業となり、先述した「不慣れ問題」が残っているうちは案外、ラケット面の真ん中を外して打ちやすいでしょう。
ショットが上手くいかなくなると、いろんなことが気になったり、さまざまなテクニックを試してみたりしたくなりがちですけれど、それよりもボールをラケット面の「真ん中で捕える」という、当たり前のことを見直すほうが改善される可能性が高く、これは万能的な特効薬といえるものです。
そしてラケット面の真ん中で捕らえられるかどうかは、打球タイミングしだい。
スイング中のラケットは高速で移動しますから、0.1秒タイミングがズレると、面の真ん中を外します。
1秒ズレたら「空振り」するかもしれません。
かつて、テニスクリニックにも参加するような、それなりにテニス歴も長い熱心な愛好家が、有名大学テニス部監督が書いたサーブについて解説している本を読んだら、大の大人なのに「空振りした」と明かしてくれました。
もちろんその分厚い本には、サーブの打ち方やフォームに関する説明が、ぎっしり書き込まれていたというわけです。
▶グリップは自然に改まるのを「待つ」
納得のいかない「右上に振り抜く」かどうかは、回転系のイメージが定着すると、自然とそうなるのでご安心ください。
「フラット系のエネルギーを回転に逃がす」のですから、スイングは自然と、ボールを飛ばすベクトルではなく、右上などに抜けるということです。
そうなったときに、体はより効率的な動きを求めて、グリップも自然と薄めに変わる可能性が高いといえます。
だけど、最初から右上へ振り抜くフォームについては、決して意識しません。
そういったことを意識するのが、ボールへの集中を損ねて、ラケット面の真ん中に当てられなくなる原因です。
▶あえて「手打ち」から始めてみる
最後に少し技術的な話になりますが、もっと回転をかけようと練習する場合は、まずは「手打ち」から入るのも手です。
もちろん、全身を使ったダイナミックなスイングが、悪いわけではありません。
とはいえ順調にレベルアップしていくには、ステップを踏まえる順序が、思っている以上に大事です(漸進性の原則)。
公文式では、できるところ付近まで一旦レベルを下げますが、そうすると沈み込んだバネは高く飛躍します。
ですからプライドの高い人(=自己肯定感が低い人)は「上へ上へ」ばかりを目指すから、下げる屈辱に耐えられず、結局伸び悩んだりします。
ややもすれば、プライドが高い人は豪快に振る舞ったりするから、自己肯定感も高い印象?
しかしまったくの逆で、プライドの高さと自己肯定感の高さは、完全に反比例の相関です。
▶「できない」ものは「できない」
できないところばかりを頑張っても、現状のレベルでは、できないものはできません。
いくら100キログラムのバーベルを持ち上げたくても、今はまだその筋力がなくて一度も繰り返せなければ、どんなに頑張っても叶わないものは叶わないのです。
であれば、現状で持ち上げられる30キログラムまでウェイトを下げて、筋肥大を目的とするなら、現状の筋力レベルでギリギリ10回繰り返せるたとえば「10レップス」で取り組むなどします。
筋持久力を高める目的の場合などは、また違うレップス数を設定。
できるところ付近まで一旦レベルを下げると、沈み込んだバネは高く飛躍すると、公文式にならいご説明しました。
つまり「急がば回れ」。
私は畑仕事の初心者ですが、少し芽が出たからといって収穫を急いでは、実りは得られないと実感します。
もちろんバランス次第ではあるけれど、「急がば回る」と大量の高品質な収穫物を得ることが叶います。
▶スイングの「円弧が一定に」なる
なぜ、最初は手打ちのほうをご提案するのかというと、ラケット面の「真ん中に来やすいから」です。
ヒザ、腰、背中を使うほど、特にこれから回転系をマスターしようとするステップにいるプレーヤーにおいては、真ん中を外しやすくなる傾向。
体をダイナミック(動的)に使わずスタティック(静的)で支えるようにすると、自分が動かないから目線が安定したり、スイングの円弧やトレースする軌道が一定になったりしやすいため、上手くいく可能性が高まるかもしれません。
▶「回転」を見れば「回転」がかかる
とはいえこれも「意識」しすぎるとトスの回転が見えなくなって、かえって打球タイミングが合わなくなるからご用心。
また自分の打ったボールの回転も見られなくなるとスピンをかける技術習得の妨げになりますから、こちらの記事もご参考まで。
最後の技術的な話は、蛇足です。
体を使ったほうがご自身にとってしっくり来る、打ちやすいというのであれば、そちらを採用なさってください。
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