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あの頃、映画のことばかり考えていた 【僕の映画青春日誌 東映篇】1.入社研修と子育ての日々
人は決して忘れたくない思い出を
どれだけ記憶に留めることができるのだろうか。
そして
どれだけ思い出すことができるのだろうか。
以前、私は20年前のことを書いたことがある。
この3つの記事は、私の日本映画学校に入学した頃の話だ。
それから3年後の話を
私は今、どうにか思い出そうとしている。
今後のクリエイティブに繋げるために必死に
記憶を掘り起こし、そして繋ぎとめようとしている。
2006年
3月1日
銀座に向かう電車がラッシュで混んでいる。
東映入社式。
高岩会長と岡田社長の前で自己紹介する。
人事部長の「芸術職の皆さんに期待すること」を聞く。
人事部課長の「研修日程と東映の組織」を聞く。
社内報の写真撮影。
菊地プロデューサーの「製作現場について」の話を聞く。
映画「四日間の奇蹟」の製作スケジュールや予定表を見ながら話を聞く。
芸術職はプロデューサーが私ひとり。
助監督が男性・女性1名ずつ。
脚本家が女性3名の合計6名だ。
同期と少し話す。皆いい人そうでよかった。
3月2日
坂本常務が映画「男たちの大和」のできるまでを話す。
映画に対する熱い想いが伝わる。
この人とは気が合いそうだと直感する。
宣伝プロデューサーから映画「明日の記憶」の宣伝の話を聞く。
興行部長から「デジタルシネマ」の話を聞く。
映画企画製作部・遠藤部長と挨拶する。
「政策委員会方式」「著作権について」「デジタル事業について」を聞く。
3月3日
映画営業部次長の「配給と興行界について」の話を聞く。
映画「佐賀のがばいばあちゃん」の試写を見る。
テレビ部のプロデューサー達から
「テレビプロデューサーとは」「特撮ヒーロー作品について」
「京都テレビ作品について」話を聞く。
重松清の「その日のまえに」を読んで泣いた。
こういう作品を企画したいと思う。
映画「県庁の星」を劇場で見る。共感するテーマだった。
同期に話し方が落語家っぽいと言われる。
話が明確で声がいいとも褒められる。
3月4日
朝風呂に入り、整理整頓した後、家を出る。
新橋FSホールで日本映画学校卒業制作発表に参加する。
脚本家で恩師の渡辺千明さんと日本映画学校佐藤校長に挨拶する。
夜、日本アカデミー賞授賞式を見る。「Always三丁目の夕日」が圧勝。
3月5日
映画「佐賀のがばいばあちゃん」の感想文を作成する。
社内報「とうえい」掲載用自己紹介文を作成する。
映画「極道の妻たち 情炎」とメイキングを見る。
映画「アラバマ物語」を見る。
3月6日
岡田社長の話を聞く。
「組織人間になるな」
「才能を見極めろ」
「自分が何に感動するか分析せよ」
「感動を細胞一つ一つに染み込ませよ」
「人の倍努力して初めてわかる」
「勉強勉強勉強の果てに発想が出る」
「君が選べ」
東映東京撮影所を見学する。
撮影所長の話を聞く。
撮影所の美術・照明・仕上げの話を聞く。
川崎市役所に妻の非課税証明書を取りに行く。
夜、渋谷のザリガニカフェで東宝の親友と語り合う。
3月7日
重松清の「流星ワゴン」を電車の中で集中して読む。
「法人著作権」について話を聞く。
東映アニメーションの部長の話を聞く。
なぜかキャバクラの話を聞く。
東映アニメーションのスタジオを見学する。
東映直営映画館のTジョイ大泉を見学する。
デジタルシネマのシステムを見る。
劇場前のカフェで同期と恋愛の話で盛り上がる。
「新 仁義なき戦い 謀殺」を見る。
3月8日
東映ビデオの次長の話を聞く。
「ビデオ・DVD」市場について話を聞く。
東映ラボテック(現像所)を見学する。
デジタルシネマの可能性を聞く。
同期と新宿で飲む。同席した脚本家の港岳彦さんと話す。
3月9日
テレビ朝日の人に「テレビ業界のメディア戦略」を聞く。
国際営業部課長に「海外マーケットについて」を聞く。
東映音楽出版次長の話を聞く。
東映衛星放送取締役の話を聞く。
映像産業振興機構の話を聞く。
教育映画についてプロデューサーから話を聞く。
同和問題に切り込んだドキュメンタリーの話を聞く。
映画「アラバマ物語」の感想プレゼン資料を作成する。
3月10日
芸術職一期生との座談会に出る。
橋本一監督の話を聞く。
演出しながら涙をぽろぽろ流した話にグッとくる。
映画「アラバマ物語」の感想プレゼンをする。
主観的過ぎて話が長くなる。
映画「シリアナ」を映画館で見て、パンフレットを熟読する。
3月11日
洗濯をし、掃除機をかけ、部屋の整理整頓をする。
デニーズで「プロデューサー・カリキュラム」を集中して読む。
漫画喫茶で3時間過ごす。
映画「メゾン・ド・ヒミコ」を見る。
3月12日
図書館で「プロデューサー・カリキュラム」を集中して読む。
キネマ旬報をざっと閲覧する。新刊本もチェックする。
近くの弁当屋で2日続けて唐揚げを食べる。
TVで「トップランナー」「SHOWBIZ COUNTDOWN」を見る。
風呂掃除をする。
3月13日
丸の内東映(劇場)で劇場研修1日目
「ワンピース」「シリアナ」を上映しているが、
客の来ない劇場は寂しい。そんな日だったのか。
同期の助監督2人とケンタッキーでランチする。
妻と長男が妻の実家から生まれたばかり(生後1か月)
の次男を連れて、自宅に帰ってくる。
久しぶりに次男のオムツを替えて、だっこする。温かい。
妻の父親と映画の仕事について少し話す。
3月14日
丸の内東映劇場研修2日目
今日も映画館は空いていた。
同期の助監督2人とサブウェイでランチする。
久しぶりの立ち仕事のせいか、膝が痛くなる。情けない。
妻の父親が本棚を作ってくれ、台所も整理してくれて感謝。
3月15日
丸の内東映劇場研修3日目。
レディースデイでそこそこお客さんが入った。
脚本「トリアングル」を一部読む。
同期の助監督かとちゃんとロッテリアでランチする。
長男は3歳。次男は0歳。しっかりと見守りたい。
確固たる父親像を持つことは息子たちにとって大きな安心感になると思う。ただ可愛がり、ベタベタするのではなく、大きな愛で包むように。
TVで「HERO’S」(所英男・須藤元気・宇野出演)を見る。
TVで「オーラの泉」木村多江を妻と見る。
3月16日
午前中、長男と遊んだ後に
日本映画学校 卒業式に出席して
優秀賞として表彰を受ける。
担任で脚本家の渡辺千明さんの手紙の一言一言が心に沁みる。数人の監督から有難い言葉をもらう。
「お前はバランス人間として評価されたのかもしれない。
それでは大プロデューサーにはなれない。お前の色を持て。
これが俺の色だというものを持て。
お前は妻子持ちで学校に入ってきた。それは勇気だ。
お前の色を出せ」
「お前のブレーンを作れ。俺の持っている企画をお前に全て話す」
「お前は喋り過ぎる。言葉は伝えるためにある。したたかに生きろ」
「名刺が出来たら俺に渡せ。1人の監督候補として捉えればいい」
「お前はきっと苦労するぞ。東映のプロデューサーには死ぬ気で
やっている奴はいない。世界が違うんだ。そこで突き抜けろ」
その後、飲み会で佐藤校長と話す。
国際政治的世界観を広げてほしいと言われる。
同じクラスの同級生が新人シナリオ入選する。
3月17日
次男のベビーベッドを移動して、部屋を整理する。
長男と映画「猫の恩返し」を見る。
教育ビデオの企画書を作成し始める。
妻と長男と次男と琴平神社に行く。
写真館で家族写真を撮って、ランチする。
食料品とケーキを買って家に帰る。
3月18日
丸の内東映劇場研修4日目
土曜日にしては混み具合が弱い。
乙一の小説「暗いところで待ちあわせ」を一部読む。
新人シナリオに入選した同級生の脚本を読む。
米国アカデミー賞授賞式を見る。全ての道はここに通じる。
教育ビデオの企画書を資料を読み込みながら作成する。
長男に絵本を読んで寝かせる。
3月19日
丸の内東映劇場研修5日目
日曜日なのに暇である。
同級生の卒業脚本を2作読む。面白い。
家族で肉じゃがを食べる。
子ども達に絵本を読んで寝かせる。
卒業脚本の「Japanese Beauty」を同期で助監督のかおりんに
読んでもらい、面白かったと言われる。
3月20日
長男と映画「のびたと恐竜2006」を劇場で見る。
「プロデューサー・カリキュラム」の執筆者にメールをする。
「メイキングオブドッグヴィル 告白」を見る。
「人権に向き合うための6つの素材」を見る。6つの素材とは
「DV」「高齢者」「知的障がい者」「報道被害」「HIV」「同和」
妻と長男と新百合ヶ丘VIVREで携帯を買ってランチ。
長男と次男とお風呂に入り、サファリパークのビデオを見る。
3月21日
丸の内劇場研修6日目
初日ワンピースデイ。でもなぜか暇。
乙一の小説「暗いところで待ち合わせ」を完読。
恩田陸の小説「ドミノ」を一部読む。
映画「ドッグヴィル」を見る。
夕食は湯豆腐で美味しい。
WBC野球・王ジャパンがキューバを破って世界一。
いつも冷静なイチローの剥き出しの感情にグッとくる。
やはり男には勝負せねばならない時がある。
3月22日
丸の内東映劇場研修7日目
恩田陸「ドミノ」完読。
浅田次郎の小説「地下鉄(メトロ)に乗って」を一部読む。
映画「フライ・ダディ・フライ」を見る。
坂上常務と遠藤部長代理の企画リストを見ながら、
自分の企画方向性を確認。
スクワット100回。腕立て伏せ60回。腹筋50回。
強く優しく生きていく。
自身にはストイックでも、人には優しく包みたい。
3月23日
丸の内東映劇場研修8日目(最終日)
池袋で脚本家の入江さんと同期の皆で飲む。
帰りは同期の脚本家の女性と好きな小説の話をする。
絲山秋子の小説「袋小路の男」が面白いと聞く。
3月24日
T-JOY大泉劇場研修1日目
辻仁成の小説「海峡の光」を一部読む。
帰りに同期のかおりんとBOOK OFFに寄る。
村上春樹の話で盛り上がる。
トム・ピーターズのビジネス書「ブランド人になれ」を読む。
プロジェクトに全てを懸ける。そんな生き方が今から始まる。
疲れて22時半に就寝。
3月25日
T-JOY大泉劇場研修2日目
辻仁成「海峡の光」完読。
俵万智「トリアングル」完読。
大泉BOOKOFFに立ち寄る。
TV「ブロードキャスター」を見る。
3月26日
野田秀樹の舞台「贋作 罪と罰」を録画で一部見る。
野田秀樹の演出・松たか子の存在感に脱帽。
一から演劇を勉強し直さないと。
とにかく僕は何も知らない。勉強不足だ。
しかし、やるしかない。
0から立ち上げていくのみだ。
部屋に掃除機かけて、整理整頓して
長男と次男とお風呂に入る。
両親が自宅に来てくれる。本当に嬉しい。
長男と父親と香林寺に散歩して桜が見れた。
夕食は家族でゆったりと歓談。
一つ一つの作品に向き合うこと。
3月27日
企画製作部に挨拶する。よし、やるぞ!
大好きな小説「流星ワゴン」が企画に上がっていて興奮する。
T-JOY大泉劇場研修3日目
同期の助監督かとちゃんとかおりんと大泉の寮でビデオ観賞会。
大いに刺激を受けた。ポルノグラフティを聴きながら帰る。
3月28日
長男と公園に行き、近所のママと話す。
接骨院で膝を電気マッサージ。
マクドナルドで家族でランチした後、図書館に寄る。
長男と追いかけっこする。
TVで「世にも奇妙な物語」を見る。原点は星新一にあり。
俳優分析一覧表を作成する。
3月29日
T-JOY大泉劇場研修4日目
行きと帰りは教育ビデオの資料読み込みと構成立て。
3月30日
「プロデューサー・カリキュラム」の著者の1人
亀田氏とランチをする。フリー意識を高く持て。
非常に刺激を受け、定期的にお会いしたい。
T-JOY大泉劇場研修5日目
企画製作部の部長兼プロデューサーの
中曽根さんから声をかけられる。
優しい人柄が滲み出ている。
3月31日
教育ビデオレポート第1稿作成
長男の七五三の写真撮影をしてお宮参り。
いい写真が撮れて、お宮参りも心が引き締まり良かった。
子どもたちが健康ですくすく育ちますように。
4月1日
T-JOY大泉劇場研修6日目
映画の日の割に少なかった。
同期のかとちゃんと語り合う。
行き帰りはポルノグラフティとDEFTECHを聴く。
帰りにTSUTAYAに寄る。
4月2日
午前中、新宿で1時間ひとりカラオケする。
T-JOY大泉劇場研修7日目
同期のかおりんと語り合う。
4月3日
教育ビデオレポート最終稿完成。
家族で桜舞い散るこどもの国に行く。
素晴らしい景色。でも風が強い!
帰りにソフトクリームを皆で食べる。
次男をお風呂に入れたら気持ちよさそうに眠る。
可愛い。幸せだ。
TVで「HEYHEYHEY SP」を見る。
4月4日
T-JOY大泉劇場研修8日目(最終日)
2つの劇場での16日間の研修を終える。
池袋で同期会を行う。
4月5日
午前中に東映大泉撮影所の製作部・事業部・管理部に挨拶する。
その後、ロケハンのリサーチの仕方を学ぶ。
同期の脚本家のシナリオを読む。
4月6日
午前は撮影所の仕上げセンタ―に挨拶・見学する。
午後に美術部 部長の熱い語りを聞く。
「雪に願うこと」脚本を読む。
「らんぼう」丸山章一の脚本を読む。
4月7日
午前中、事業部で製作倉庫を掃除し、コピー用紙補充する。
午後、連絡会議と駐車場会議に出席する。
演技センターと東京衣装に挨拶・見学する。
「トリアングル」脚本を読み、キャスティング候補を想定する。
プロデューサーの菊池さんと芸術職1期プロデューサー川田さんと飲む。
プロデューサーの仕事の大変さと裏表を聞く。
4月8日
長男の入園式。これから新たな門出。
美容院で髪を切り、英会話NOVAに行き、心機一転。
妻の母親が次男を世話してくれる。
パソコンのセーフモード解除に苦心するがうまくいかず。
4月9日
妻の兄家族が来て、皆で中華料理を食べに行く。
ソニーのカスタマーセンターに相談してパソコンを復旧。
4月10日
映画「ザ・プロデューサーズ」を劇場で見る。
漫画「デスノート」1巻読む。
小説「嫌われ松子の一生」上巻を一部読む。
4月11日
「嫌われ松子の一生」上巻を完読。
初のメイン打ち合わせで珈琲をスタッフに出す。
撮影監督の仙元さんと女優で初監督の阿木曜子監督の会話が面白い。
プロデューサー部門である企画製作部配属の前に、
制作部としての日々が始まる。
思い出せ、思い出せ、思い出せ。
思い出したら、追記します。
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