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2024年7月の記事一覧

映画「岸辺の旅」 自殺したゴーストはかく語りき

映画「岸辺の旅」 自殺したゴーストはかく語りき

「ドレミファ娘の血は騒ぐ」以来の黒沢清監督の作品鑑賞。

失踪した夫が、普通の人間のようなゴーストになって戻ってきた。そして、失踪していた3年間の軌跡を夫婦一緒にたどる。待ち受けていたものは…。

拠り所を失って虚ろに生きている妻(ミズキ)を演じる深津絵里がとても良い。この妻の目線から映画は展開していく。この世から逃げ出した夫(ユウスケ)を演じる浅野忠信も良い。ふたりともずっとエネルギーが薄い。裸

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映画『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』 特に予定のない日曜の午後におすすめ

映画『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』 特に予定のない日曜の午後におすすめ

「10年ひと昔」というのだから、40年という歳月は随分と社会のルールや世相を変えてしまう。しかしながら、表面的な変化があっても、その深いところではあまり変わってないのではないか?とも思う。

『最悪のことを思いながら、最善のことを祈る』というのが、主人公アレックスのモットー。共感できる生き方。

その彼が家を売る決意をしてから数日間で忘れていたものに気づくという物語。

モーガン・フリーマンとダイ

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映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える

映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える

近所のGEOを時々覗いては、DVDのセル品を5枚1000円で購入している。昔見てもう一度見たいと思うものと見逃していたものを漁るのが楽しみ。

今回の掘り出し物は、ティム・バートン監督の『ビッグフィッシュ』

映画好きには、今さらな20年前の作品だけれど。私にとっては、初見。見逃さずに良かった。

生きれば生きるほど、現実の過酷さや全ての人に平等に優しいわけではない世界の現実に晒され、誰しもが少し

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映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

『さざなみ』塩辛い映画だった。

人生の晩秋を迎えて、45年も寄り添ってくれた妻に全てをさらけ出さずとも良いのになあ。きっと話さないほうが良いこともあるのだろう。

ジェフよ、いくら愛する妻とはいえ、相手の全てを知ることは不可能だし、自分のすべてを同じように理解してもらうことは不可能に決まってるじゃあないか。

人は何らかの秘密を抱えて生きていくもの。そんな話は墓場まで持っていってくれ。

長年連

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映画『オペラ座の怪人』 彷徨える愛の行方

映画『オペラ座の怪人』 彷徨える愛の行方

『オペラ座の怪人』 4Kデジタルリマスター

目黒シネマで見て以来の鑑賞。確か、レ・ミゼラブルとの二本立て興行だった。それは贅沢なラインナップでしたわ。今回は109プレミアム新宿体験も兼ねてなので、またまた贅沢。

この物語に没入するために、精霊物語を補助線として置いておこ。

眠り猫さんのnoteで、いつも勉強させてもらっていたので、エロースとアガペーの違いというところに着眼しながら二度目の鑑賞

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映画『別れる決心』 ヘジュン、青と緑は似て非なるものだろ

映画『別れる決心』 ヘジュン、青と緑は似て非なるものだろ

恋は美しき誤解に始まり、悲しき理解に終わる。惨憺な状況に置かれても理解できないままに取り残されるヘジュン。

目を覚ませ! 緑は緑、青は青だろ。

直観で始まった恋は、言葉に輪郭を与えられると、砂でつくった山のように儚く、波にさらわれて跡形もなくなってしまう。

言葉には、いつも複数の意味が隠れていることを知っていたはずなのに…。

真実はひとつしかない、目を凝らせば、自分はその真実を掴める人間な

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映画『ジョーカー』 痛切なルサンチマン

映画『ジョーカー』 痛切なルサンチマン

meronagiさんの記事を読んだら、思いだした『ジョーカー』の続編が10月公開らしい。

meronagiさんは、eponaさんの記事から刺激を受けて書いてる。インスパイアの連鎖でマトリョーシカのようにしてしまったけれど、駄目なら言ってね。

『ジョーカー』2019年公開

映画ジョーカーの舞台は1981年のゴッサムシティ。つまり過去の出来事。『バットマン』製作者の意図としては、ゴッサムシティは

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