11/20 【日本GDP4期ぶりマイナス成長、物価指標は低下傾向もFRB高官は牽制継続】
●日本 7~9月期GDP 4期ぶりマイナス成長
内閣府が11月15日に発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、季節調整値で前期比▲0.3%(予想:0.4%、前回:0.9%)、年率換算▲1.2%(予想:1.2%、前回3.5%)だった。
GDPとはGross Domestic Productの略で、国内総生産のことを指す。一定期間内に国内で産出された付加価値の総額で、国の経済活動状況を示しているもの。付加価値とはサービスや商品などを販売したときの価値から、原材料や流通費用などを差し引いた価値。
GDPによって国内でどれだけの儲けが産み出されたか、国の経済状況の良し悪しを端的に知ることが出来る。
またGDPは名目GDPと実質GDPに分かれるが、名目GDPは、対象の期間の付加価値を単純に合計して求めるもので、実質GDPは、貨幣価値の変動を考慮に入れて計算を行う。
今回マイナス成長となった主因は外需で、前期比への寄与度は▲0.7%。広告費の海外への支払いが増加したこと等からサービスの輸出は17.1%増加しており、輸出全体は5.2%増加だった。
また新型コロナウイルス第7波の影響があり、内需は前期の1.0%から0.4%へ鈍化し低調。個人消費は交通や宿泊関連などのサービス消費が伸び悩んだ。一方で設備投資は1.5%増と2四半期連続で伸長。企業が進めるデジタル化の影響がある。
今回の結果からは、最大の下押し要因は実質輸入の増加であり、コロナ第7波が到来していいた時期ということを踏まえると国内需要は想定ほど悪くないと言えるだろう。一方で、輸入依存度の高さが改めて強調される結果だった。
●日本 10月消費者物価指数
総務省が11月18日に発表した10月の消費者物価指数(CPI)は総合指数の前年同月比で3.7%の上昇、変動の激しい生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数で2.5%の上昇となった。
品目別に上昇率を見ると、生鮮を除く食料は5.9%、食料全体では6.2%だった。メーカーが相次ぎ値上げしている食用油が35.6%、スパゲティが19.5%、チョコレートが10.0%と目立つ。酒類はマイナス0.2%だった9月から5.0%のプラスへ。
エネルギー関連は15.2%だった。9月(16.9%)から縮小したものの、13カ月連続で2ケタの伸びとなった。都市ガス代が26.8%、電気代が20.9%上がった。ガソリンは価格抑制の補助金効果もあって2.9%と、9月の7.0%から下がった。
下図は企業物価指数だが、足元では前年比で9%を超える上昇となっている。消費者物価指数の伸び率とはまだかなりの開きがあり、企業の収益が圧迫されている状況。
●米 10月生産者物価指数
11月15日に発表された米10月生産者物価指数は前年比8.0%(予想:8.3%、前回:8.0%)、エネルギーと食品を除くコアは前年比6.7%(予想:7.1%、前回:7.2%)と共に事前予想を下回った。
生産者物価指数(Producer Price Index)とは、米国の労働省が、米国内の製造業者の販売価格を約1万品目について調査し発表するもの。製造段階別(最終財・中間財・原材料)、品目別、産業別の数値が毎月発表される。
消費者物価指数(CPI)に比べると注目度がやや低いが、CPIよりも早く出ることが多いため、先行指標とて活用されることがある。
PPIもCPI同様にヘッドラインは明確な下落トレンドとなっている。
●FRB高官発言はタカ派・ハト波入り混じる
FOMCメンバーの中で金融引締めに積極的なタカ派として知られる米セントルイス連銀のブラード総裁は、11月17日に行われた講演で米国の政策金利について「まだ十分に景気に制限的な水準に達していない」との見解を示した。
また経済指標をもとに適切な政策金利の水準を見積もるテイラー・ルールに基づくと、「十分に引き締め的」といえる水準は5~7%程度になるとの見解を示した。
FRBの金融引き締めが長期化するとの見方が再び広がり、同日の米債券市場では米長期金利が上昇。ターミナルレートはCPI後に一旦5%を若干下回る水準まで下がっていたが、このブラード総裁の発言を受け、再び5%をやや上回る水準へと市場の見方は変化している。
また米ボストン連銀のコリンズ総裁は11月18日、米経済専門局CNBCのインタビューで「期待の持てる兆しがいくらか見られ始めている」としながらも、12月のFOMCでの利上げ幅については、まだ判断を下していないと説明。
コリンズ総裁はブラード総裁と同様に今年(2022年)のFOMCで投票権を持つ。
一方で、ハト派で知られるアトランタ連銀のボスティック総裁は、11月19日、12月のFOMCで0.75%の利上げから「脱却」する用意があると表明し、インフレへの対応で今後1.00%以上の利上げは必要ないとの認識を示した。※現在の米政策金利は3.75%~4.00%
ボスティック総裁の発言に基づけばターミナルレートは5%未満となる。
●中国 小売売上高はマイナスへ
中国国家統計局が11月15日に発表した10月の小売売上高は前年同月比0.5%減となった。マイナスは5月以来で、全体の1割を占める飲食店収入が8%減ったほか、家電、衣類などが軒並み落ち込んだ。
中国の消費は11月に入っても鈍い。象徴的なのは、11日に最終日を迎えた年間最大のインターネット通販セール独身の日で、11月1~11日の全国宅配便取扱量は前年同期比11%減少。最大手のアリババ集団などは期間中の売上高を公表しない異例の対応をとっている。
その影響は生活用品にも及んでおり、中国の10月の化粧品輸入量は24%減と9年8カ月ぶりの減少率となった。資生堂は1~9月期の中国売上高が前年同期比11%の大幅減。
●来週(11/21(月)~11/25(金))のポイント
①米 11月購買担当者景気指数 11/23(水)
PMIとは、Purchasing Managers' Indexの略で購買担当者景気指数のことで、企業の購買担当者へ新規受注、生産、雇用状況などのアンケートを行い、その結果を指数化したうえで発表されるもの。
PMIは50を上回る状況が続くときは景気が上向きで、50を下回ることが続くときは景気が下向きであることを示します。
前回の製造業PMIは50.4と50を辛うじて上回るレベルであるが、今回11月も50以上が維持できるか注目したい。
②米 11月FOMC議事録公開 11/24(木)
FOMC議事録は、米FOMC(連邦公開市場委員会)での金融政策の決定を受けて、その3週間後に公表される議事録の要旨を指す。
その内容は、FOMCで話し合われた政策金利を決定する際の背景(インフレ・雇用等の動向)や米国経済の見通し、議決に対する委員の賛否などが記されており、市場の注目度は高い。
米10月CPI及びその後のブレイナード副議長のハト派発言を受けて、低下してきた10年金利であるが、今後の方向性を占う上で市場の反応には要注目。