シン映画日記『コンパートメントNo.6』
新宿のシネマカリテでフィンランド映画『コンパートメントNo.6』を見てきた。
フィンランド人留学生のラウラがムルマンスクにあるペトログリフ(岩面彫刻)を見に、モスクワから世界最北端の駅ムルマンスクまで寝台列車で旅をするが、寝台列車の2号車両の6番コンパートメント(車室/仕切り区画)でロシア人の炭鉱夫リョーハと乗り合わせる。ラウラははじめやや荒くれ者気質のリョーハと気が合わず、食堂車に逃げたり、サンクトペテルブルクで下車して違う列車に乗ることを試みるが、
結局、コンパートメントに戻って旅を続けることに。
コンパートメントは要するに仕切り区画で、
マンガ喫茶の個室を思い浮かべればいいかな。
列車に乗って、相席になった奴がドキュンな男、というコントのような設定だが、
ストーリーが進むに連れ、二人の人間を描いている。
小中高の学校のクラスの席や班分けや会社の所属する課とかって必ずしも仲がいい同士ではなく、中には気が合わない奴もいたりする。
でも、いざ話してみれば、意外な面白さや
難儀なシチュエーションで思わぬ力を発揮してくれることがある。
フィンランド人のラウラとロシア人のリョーハはまさにそんな関係である。
この映画を見て真っ先に思い出したのは2006年に日本でも公開したロシア映画『ククーシュカ ラップランドの妖精』で、同じくロシア人とフィンランド人の言葉や価値観の食い違いを見せるドラマだったから非常に近かった。
また、二人が徐々に話すようになる関係性はノルウェー映画『キッチン・ストーリー』の二人のおじさん達の仲にも似ているし、じんわりしたストーリーも『コンパートメントNo.6』は『キッチン・ストーリー』に近いものがあった。
寝台列車は意外と狭く、ややごちゃごちゃした様子。
何日にもまたがって旅をし、
時には停車時間が何時間もあって外に泊まりに行ったり遊びに行ったりする感覚は
テレビアニメ「銀河鉄道999」のような感じでもある。
色彩感覚や朴訥、無骨な人々のやり取りに
フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督らしさというか影響が伺え、
アキ・カウリスマキの後継者というのもわからなくはないが、
正確には『キッチン・ストーリー』のベント・ハーメル監督辺りがもう少し近いとも、
人間を描いた部分はジム・ジャームッシュっぽくもある。
もう少しコメディセンスがあればアキ・カウリスマキと勝るとも劣らないと言えたが、まだそこまでとは言い難い。
しかしながら、巨匠アキ・カウリスマキがセミリタイア状態となった現在、フィンランド映画界を背負うのは『コンパートメントNo.6』のユホ・クオスマンネ監督の可能性が高い。