シン映画日記『#マンホール』
TOHOシネマズ新宿にてHey!Say!JUMPの中島裕翔主演、熊切和嘉監督作品『#マンホール』を見てきた。
つい最近見た『FALL/フォール』とは真逆の地下の穴、マンホールの穴からの脱出劇というワンシチュエーションのソリッド・シチュエーション・スリラー!
中島裕翔ほとんど出ずっぱりの穴からの脱出劇というだけなのに、人間がしっかり描けていて爆発的に面白かった!
主人公の川村俊介は不動産会社CRレジデンスのやり手の営業マン。
社長令嬢のさゆりとの結婚式を翌日に控えた前日、同僚と渋谷のバーで婚前パーティーに出て、その帰り道に泥酔しながら歩いていた所で道にあった穴に落ちる。
気が付いた俊介は脚を負傷しながら脱出を試みるがハシゴが壊れていて脱出困難に。
携帯に登録してある友人に電話をかける中、5年前に別れた工藤舞と連絡が取れるが、
GPSで場所を特定しようにも誤作動で場所が分からなくなる。
そこで俊介はTwitter風のSNSで「マンホール女」というアカウントを立ち上げ、
「CRレジデンスの営業マンの妹」としながら犯人特定や場所の特定を試みる。
いやー、非常に良くできたソリッド・シチュエーション・スリラーだ。
『[リミット]』のような地下シチュエーションに、
『セルラー』や『THE GUILTY/ギルティ』のようなモバイルフォンスリラーに、
『電車男』や『何者』のようなSNS特化のシチュエーション・スリラーに、
『SAW/ソウ』のような意外性。
婚前パーティーを降り出しにしながら、
穴に落ちた焦燥感と
唯一の電話でのライフラインである元カノとの気まずいやりとり、
不動産会社内の狭いコミュニティ内での人間関係の疑心暗鬼に
Twitter風SNSの承認欲求ホームズと
揺れる倫理観など、
狭い空間と限られた登場人物をフル活用以上に活用している。
上記で挙げたようなソリッド・シチュエーション・スリラーの名作とだぶらせたくなりながら、
後半の某芸人が演じるキャラが出てくるくだりでブライアン・デ・パルマ調の演出を織り交ぜながらハラハラドキドキの頂点を見せ、
さらにその後も素晴らしい展開。
監督は熊切和嘉監督になるが、
原案・脚本は『信長協奏曲』や『マスカレード・ホテル』や『マスカレード・ナイト』の脚本を手掛けた岡田道尚。
いわば、商業作品の脚本を手掛けた方によるジャンル映画のオリジナル脚本作品だが、
まさかの『キューブ』や『SAW/ソウ』、『セルラー』など歴代のソリッド・シチュエーション・スリラーと並ぶ秀作。
ただ、途中の泡とガス絡みのある演出や
終盤での若干の疑問点など、多少のかすり傷レベルの粗さが見受けられるので、
音楽や動物まで良かった真逆のソリッド・シチュエーション・スリラー映画『FALL/フォール』と比べてしまうと個人的には『FALL/フォール』に軍配を上げたくなるかな。
それでも、邦画のソリッド・シチュエーション・スリラー映画としては『太平洋ひとりぼっち』や『八甲田山』と列べてもいいんじゃなかろうか。