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材料学

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木材・金属・プラスチックなど様々な材料について紹介します。
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2022年11月の記事一覧

【材料学】製鉄と製鋼

【材料学】製鉄と製鋼

鉄鉱石から鋼はどのように作られるのだろう?
 
その工程は、大きく2段階に分かれます。
 
①鉄鉱石を溶かして酸素を取り除く還元工程
 鉄鉱石の還元反応を連続的に行うのが高炉です。高炉の上から鉄鉱石、コークス(現在は強力な還元材が利用されることもある。)を交互に継ぎ足しながら燃焼させると、炉の中の鉄鉱石の酸化鉄が「ヘマタイト⇨マグネタイト⇨ウスタイト」と順次還元されて鉄となります。しかし、この鉄は

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【技術史】電気のプラスとマイナスの発見

【技術史】電気のプラスとマイナスの発見

■電気と磁気は長らく混同されていた
 電気と磁気は光と影のように切っても切れない関係にあります。
紀元前4世紀のプラトンの「ティマイオス」には、装飾品として利用される琥珀を摩擦すると、軽いチリなどが吸い寄せられることが記されています。琥珀を意味するギリシャ語のエレクトロンにちなみ、摩擦電気の作用因に電気(エレクトルム)という言葉を与えたのは、プラトンから約2000年後のギルバートです。それまでは物

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【材料】18世紀、鉱物学の進歩

【材料】18世紀、鉱物学の進歩

18世紀の社会思想の中心となったのはフランス唯物論です。霊魂とか奇跡といったものを認めず、現象を物質のしくみから説明しようという考え方は、鉱物学にも影響を与えました。フランスの鉱物学者アユイ(1743~1822)は、結晶を小さく分割していけば、その最小単位に行き着くはずであると考えました。彼は多くの鉱物には、それぞれ特有の割れ方を示す劈開性(へきかいせい)があることに着目し、結晶とは微小な劈開片が

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【材料】17世紀、鉱物学の進歩

【材料】17世紀、鉱物学の進歩

 
■科学的な鉱物学は17世紀に始まる
16世紀の鉱物学は、まだ鉱物を外見の特徴で分類するだけのものであり、客観的な科学としては未成熟でした。結晶を意味するクリスタルはギリシャ語の水晶(クリスタロス)が語源です。昔は水晶は「山中の氷が石になったもの」と信じられていました。多くの鉱物マニアが最初に魅せられるのも石英の結晶である美しい六角柱状の水晶です。
 
17世紀半ばのある日、さまざまな鉱物標本を

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【材料学】伝説の磁石島

【材料学】伝説の磁石島

磁石(磁鉄鋼)は、昔から不思議な力があることから、人々を魅了してきた。
 
1200年代ローマの博物学者アル・カズウィーニーは、自身の研究をまとめた「万有学(天文学・宇宙論・地理・動植物・鉱物など、イスラム世界の叡智を集大成した百科事典)」の中で、「インド洋に磁石でできた島があり、船がその付近に近づくと、その船に鉄でできた部分があれば、その船は鳥のように飛んで、磁石の島に付着してしまう。」と記して

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【1分でわかる材料】日本の鉄資源のほとんどが砂鉄

【1分でわかる材料】日本の鉄資源のほとんどが砂鉄

日本の鉄鉱石の製錬は古代に一時期行われたのを最後に、もっぱら砂鉄を原料とするタタラ製鉄が主流となりました。砂鉄を原料とするこの日本独特のタタラ製鉄は、江戸時代末期まで約1000年間にわたって続けられたのです。
 
日本の砂鉄は火成岩の中に含まれる磁鉄鉱が、岩石の風化や河川による運搬によって、ある場所に集積したものです。山で採れるものは山砂鉄、川や海岸で採れるものは川砂鉄、海岸砂鉄と呼ばれます。
 

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