【技術史】電気のプラスとマイナスの発見
■電気と磁気は長らく混同されていた
電気と磁気は光と影のように切っても切れない関係にあります。
紀元前4世紀のプラトンの「ティマイオス」には、装飾品として利用される琥珀を摩擦すると、軽いチリなどが吸い寄せられることが記されています。琥珀を意味するギリシャ語のエレクトロンにちなみ、摩擦電気の作用因に電気(エレクトルム)という言葉を与えたのは、プラトンから約2000年後のギルバートです。それまでは物を吸い寄せる不思議な性質を持つものは、何でも磁石の同類とみなされましたが、ギルバートは実験によって、電気と磁気とを初めて区別したのです。
しかし、ギルバートは磁気に両極があることを知っているにもかかわらず、電気にもプラスとナイナスの2種類があるとは考えなかったようです。
■17世紀の科学革命を経て大胆な実験ができるようになる
ギルバートの没後から半世紀、ドイツのマグデブルグの市長であった物理学者ゲーリケは、硫黄の球を回転させ、その摩擦によって静電気を発生させる摩擦機電機を発明しました。一昔前なら、そんな実験をしていたら魔術師呼ばわりされていたに違いありませんが、17世紀の科学革命(地動説やニュートン力学などの受容)を経て、科学的な思考に慣れ始めた学者や知識人たちは、かなり大胆な実験を行うようになりました。しかし、電流という概念が登場するのは、18世紀末になってからのことです。それまで電気というのは、もっぱら摩擦電気をさしていました。