ママ(パパも)と子どもの読書時間 ~②世界を知るおはなし~
ヤングアダルト(YA)世代の読書
図書室で働いていると、小学校高学年まではよく図書室に来て読書を楽しんでいたお子さんも中学生になったとたんに姿を見せなくなる…という経験を度々します。
きっと勉強が忙しくなり、部活動や塾通いで時間がなくなって、図書室に来たり読書を楽しむ時間が取れなくなるのでしょう。
またその年頃の子どもたちは学校での人間関係に一生懸命なので、一人で図書室に来ること自体に抵抗を感じるのかもしれません。
でも大人になった今、自分の周りの小さな世界しか知らなかったその頃の私がほんの短い時間でも「一人で読書を楽しむ時間」を持つ習慣があれば、「世界はとても広い」ということを知り「大きな夢や希望」にめぐり会えたのではないかと思うことがあります。
いつもより時間ができる長期休みや連休には、読書を通じてそんな経験をしてほしいと思います。
『13歳からの地政学』
この本は、ヤングアダルト世代にはぜひ読んでいただきたいおすすめの本です。
(もちろん大人の方にもおすすめで、小学校の高学年のお子さんもそろそろ読めるかもしれません。)
地政学というと難しく思われるかもしれませんが、『13歳からの地政学』は物語として描かれています。
登場人物は、高校1年生の兄の大樹と中学1年生の妹の杏、そして近所の子どもたちから「カイゾク」と呼ばれているアンティークショップの店主です。
兄の大樹は勉強が得意で進学校に通っていますが、何のために勉強をしているのかわからないと感じています。かたや妹の杏は勉強が苦手でおしゃれやアイドルに興味があり、将来の夢も持っています。
そんな兄妹が、ひょんなことから「カイゾク」から世界について学ぶことになります。
夏休みの間の「カイゾク」による7回のレッスンで、兄妹はどう変わるのか…?
レッスンの最後に、「カイゾク」が二人に語りかける希望にあふれた言葉が印象的でした。
『ガザとは何か』
一方私たち大人には、悲惨な現実から目を背けないための知識が必要です。2023年10月7日、ハマスによる越境奇襲攻撃がありました。
この本はその直後の2023年10月20日に京都大学においておこなわれた「緊急学習会 ガザとは何か」と、同年10月23日に早稲田大学で行われた「ガザを知る緊急セミナー 人間の恥としての」の講演をもとに編集されたものです。
筆者は今ガザで起こっていることは「ジェノサイド」であり、それにも関わらずメディアの報道によって出来事を「他人事」にし、私たちが「無関心でいる側」にとどまっていると強く訴えています。
実際私は、最初にパレスチナの戦闘員たちが決死の覚悟でイスラエルとの壁を越えていく後姿をテレビ映像で見た時、追い詰められたパレスチナの人たちの姿だと受け取り涙が出ました。
しかし報道でこの奇襲攻撃が「テロ」だと表現されると、どちらの国が正しいのか…途端にわからなくなりました。
それでも…、やはり今起こっていることは間違っています。
筆者は、今私たちにできることは「知ること」だと言います。
この本を読んだからと言って、この問題についてすべてがわかるわけではありません。
それでも、これからもいろいろな本や情報に触れて、知ろうとすることが大切なのだと思えました。
テレビで悲惨な光景が映し出された時に、子どもたちに対して大人は無言になってはいけないのだと思います。
そうすることで、子どもたちに「自分たちとは関係がないことだ」という間違ったメッセージを送ってしまうのかもしれません。
グローバル化が進み、世界中で起こることはどれも「遠い国の出来事」ではなくなっているのですから…
「カイゾク」のような大人に
「世界を知るおはなし」で、子どもたちには「広い世界」と「大きな夢と希望」を感じてほしい。
そして私たち大人は、それを支える「カイゾク」のような知識ある存在でありたいと思います…