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企業内ジョブコーチによる支援 〜学習障がいを持つスタッフとの協働〜


初めに

障害のある方々の職場定着を支援する、それが私の仕事です。企業に在籍するジョブコーチとして、日々スタッフと向き合い、彼らの働く喜びと可能性を広げることに全力を注いでいます。

私の仕事の中心は、日々のスタッフとの対話です。彼らの仕事に関する悩み、課題、不安に真摯に向き合い、一人ひとりと深くコミュニケーションを取ることで、働く環境を少しずつ改善していく。
そんな日々の中で感じる、小さな変化と大きな感動を今回は記事にしたいと思います。

スタッフの笑顔、上司や同僚との信頼関係、そして彼らが自信を取り戻していく姿。決して平坦ではない道のりですが、私はそのプロセスに寄り添い、支え続けています。
この仕事は単なる業務ではなく、一人ひとりの人生に寄り添う、かけがえのない使命だと考えます。

背景

私が企業在籍型ジョブコーチとして働いている法人は住宅型有料老人ホームを運営しています。
高齢者施設における清掃業務は、細かな配慮と正確な作業が求められる重要な仕事です。
今回は実際の事例を基に、学習障がいを持つスタッフAさんと、私(ジョブコーチ)の支援ストーリーを通じて、職場定着支援の実際を紹介します。

仕事内容の詳細

清掃作業の具体的な業務

- 施設内の共用スペースの清掃
- トイレ、廊下、リビングエリアの清掃
- 備品の整理と衛生管理
- 感染症対策を踏まえた徹底的な消毒作業

課題と面談の実際

面談の背景
スタッフAさんは、作業手順の理解や他のスタッフとのコミュニケーションに困難を感じていました。具体的には以下のような課題がありました。

1. 複数の作業指示の同時理解が難しい
 (マルチタスクが苦手)
2. 他のスタッフとの会話や関係構築に不安がある
 (コミュニケーションエラーが起こりやすい)
3. 自分の作業に対する自信の欠如
 (ちゃんと作業内容があっているか不安が続く)

実際の面談時の様子

私は、面談室で静かに身構えていたスタッフAさんを優しく見つめながら、対話を始めました。
(※面談室は陽の光が差し込み、緊張感の中にも安心感を漂よわすテーブル配置にしています。)


「最近の仕事に関して、現状の気持ちを教えてください。うまくいっていること、困っていることがあれば聞かせてほしいです」

スタッフAさんは最初、視線を泳がせながらゆっくりと語り始めます。

スタッフAさん
正直、自分が仕事のどこをミスしているのか分からなくて不安なんです。清掃の手順で、『これで本当に大丈夫なのか?』って常に考えてしまいます」

私は、スタッフAさんの言葉に深くうなずき、さらに質問を重ねます。


「具体的にどんな部分で不安を感じているんですか?」


スタッフA
「そーですねー?、、、トイレ掃除の時、消毒液の濃度や拭き方があっているのかが分からないんです。他のスタッフは迷いなく作業しているのに、私はいつも『これであっているのか?』と悩んでしまいます」


ここで私は、スタッフAさんの不安の本質を理解しようと注力します。
それは、単なる技術的な問題ではなく、自信の欠如と完璧を求める心理が背景にあることを感じ取っとからです。


「その気持ちは、よく分かります。でもねAさん、経験豊富なスタッフも最初は同じように悩んでいたんですよ。Aさんの丁寧さは、むしろ素晴らしい強みになりますよ」

この言葉にAさんは、わずかに肩の力が抜けるのを感じました。

スタッフA
「本当ですか?私、何度も同じ作業を確認してしまうから、遅いと思われているんじゃないかと…」



「けっして遅いわけではないですよ。Aさんの作業は丁寧で正確なんです。その姿勢こそ、高齢者施設の清掃で最も大切にされる価値なんですよ」


対話では、スタッフAさんの不安を一つずつ紐解いていきます。
作業手順の可視化、チェックリストの作成、上司や同僚とのコミュニケーション方法など、具体的な解決策を一緒に考えていきました。

最後に、私は力強く付け加えます。


「Aさんの仕事は、高齢者の方々の衛生面での安心と尊厳を守る、とても大切な仕事なんですよ。自信と誇りを持って取り組んでくださいね。」


面談終了時、スタッフAさんの表情は面談開始時とは明らかに変わっていました。
不安げだった目つきに、わずかながら自信の光が宿っていたのを覚えています。



このような対話を通じて、私は Aさんの不安を一つずつ丁寧に紐解いていきました。
作業手順の可視化や、具体的なコミュニケーション方法を提案しました。

支援のポイント


作業の取り組み改善方法

1. 作業手順書に図や写真を入れ視覚的に理解し
 やすい手順書の作成

2. 簡潔で明確な指示出し

3. 定期的な振り返りの時間設定

人間関係構築支援

1.チームメンバーへの特性理解の促進

2.Aさんの長所の明確化と共有

3.安心できる職場環境づくり

面談後の変化

面談を実施することで、スタッフAさんに大きな変化が生まれました。

面談終了数日後のAさんの様子
- 自信を持って作業に取り組めるようになった
- 他のスタッフとの自然なコミュニケーションが増えた
- 自分の得意分野を理解し、積極的にアピールするようになった

おわりに

職場定着支援において、継続的な対話と、画一的方法ではない、各スタッフが必要とする個別的サポートが鍵となります。
一人ひとりの特性を理解し、寄り添うことで、真のインクルーシブな職場の実現を目指していきます。


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