縁側
見慣れた街並み
かつてあった街並み
交差する記憶
変わりゆく景色
そこに
住んでいた
忘れていくもの
声なき声
玄関から入って
仏壇の向こうに
小さな庭がある
縁側に足を下ろし
灯籠を眺める
緑の小さな空間
紅葉が色付く季節に
紅く染まる
時の流れが
止まったかのように
ものごころつく前に
亡くなった
おじいちゃんのぬくもり
遠いところから
聴こえるような
包み込まれる
憧憬にも似た
安らぎ
孫であることに
誇りさえ
覚えていた──
時の流れの中で
そんな記憶も
退去と
解体と
新築に埋もれ
漂う間もなく
蒸散していくのか
いや
生きている限り
かつてそこにあった
生活景は
この胸の中
息づいて
寿命を共にする
いなくなったら──?
また
向こうで
再会するだけさ──