「何を学ぶのか?」の、その前に
column vol.1121
「生涯学習時代」と言われて久しいですが、社会人が「何を学ぶか」を考える上でヒントになるのが「学校教育」だと思っています。
学校の現場は、次の時代に活躍する人財を育む場だからです。
〜ということで、朝日新聞の「Think キャンパス」でちらほら情報収集しているのですが、最近学びがよりシームレスになっていると感じます。
〈朝日新聞 Think キャンパス / Webサイト〉
例えば、「医工学」という分野が生まれているそうです。
医療機器を進化させる「医工学」
「医工学」とは、生命科学と電子工学を融合させた学問。
明治大学理工学部電気電子生命学科の小野弓絵教授が、この道を切り開いています。
〈朝日新聞 / 2023年9月2日〉
普通、大学の学部を選ぶ時、体や病気の仕組みを勉強して医師になりたい人は医学部を目指し、機械について学びたい人は工学部か理工学部に入ります。
医工学はその2つの分野を兼ね備えているというわけです。
小野先生がこの分野を開拓する理由は
という課題認識があります。
つまり、2つの学問を掛け合わせることで、より患者が望む医療機器を生み出せるというわけです。
欧米には昔からメディカル・エンジニアリングという分野があり、医学と工学の専門家が協力して、よりよい医療機器や診断方法を開発してきているのですが、日本の大学では、専門的に学べる学科がまだ少ないのが現状とのこと。
小野先生の挑戦は、まだ未解決の健康課題をブレイクスルーするきっかけになるかもしれませんね😊
「心理学×理系力」という新たな融合
医工学以外にも、新たな学問のカタチが生まれてきています。
例えば、心理学×理系力が融合した京都橘大学の「総合心理学部」です。
〈朝日新聞 / 2023年8月15日〉
「メンタルヘルス」はビジネスの現場でも非常に重要なテーマになっており、2018年には心理専門職の国家資格「公認心理師」が誕生しました。
「心理学」と聞くと、文系のイメージを持っている方もいらっしゃるかと思いますが、京都橘大学では心理学を「文理融合」の学問と捉えているのです。
それは、心理学が脳科学や遺伝との関わりなど、理系的な要素を持ち合わせていることが理由。
同大学では特に今、注目さている分野である「データサイエンス」との融合を強化しているとのこと。
同学部のキャッチコピーが、また興味をそそります。
この言葉には、柴田利男学部長の
という想いが重ねられています。
確かに、よくよく考えてみると、喜びも、悲しみも、人間の心は、人との触れ合いの中で生まれることが大半です。
さまざまな学問を融合しながら、人間を理解し、上手く付き合っていく術を身につけていく。
心理学とは、学問の「総合格闘技」というようなイメージなのかもしれませんね。
そして「哲学の時代」へ
そんな新しい学問のカタチに触れていると、「哲学」という言葉が頭に浮かびます。
哲学は小難しいことを考える学問ではなく、日常の「なぜだろう?(疑問)」に対して真理を明らかにしていく学問です。
山口大学国際総合科学部教授で、哲学者の小川仁志先生は、哲学のプロセスを
というように解説されていますが、まずは「疑う」ことが起点になります。
そうすると、京都橘大学・総合心理学部の
という言葉が重なってきます。
最近、この哲学思考をもとに世界に名を轟かせた18歳の若者がいます。
群馬県高崎市の高校3年生、神谷航平さんです。
〈NHK NEWS WEB / 2023年9月26日〉
神谷さんは、全国の高校の校則を調べて自身のWebサイト「全国校則一覧」で公開。
〈全国校則一覧 / Webサイト〉
その数、1700校以上…(驚)
すごい数です……
このサイトを運営する理由は
という想いから。
その想いが世界に届き、何と!
『Forbes JAPAN』の「世界を変える30歳未満」の1人として選ばれたのです。
この活動も中学生の時、「登下校時の靴の色は白」という校則への疑問から始まったそうです。
つまり、疑問から学びが始まり、「より広い対話が行われる社会に変えていきたい」という志に向かっている。
「心」が学びの起点(モチベーション)になっていることが分かります。
何を学ぶかは「志」に聞く
冒頭でご紹介した「医工学」の小野先生も学びの原点が「心」にあります。
「あったら、いいな」と思ったものをカタチにする。
という、ドラえもんの歌詞に通ずるような言葉です。
実際、小野先生は電気電子工学に興味を持ったのは、ドラえもんを作りたかったからとのこと。
と話すように、最終目標は「ドラえもんを生み出す」ことに向かっている。
(…のかな…?)
いずれにせよ、医工学を通じて「あったら、いいな」をカタチにすることで、より豊かな社会を築いていく。
今の言葉で言えば、「パーパス」や「ミッション」ということなのでしょうが、要するに「何を学ぶのか」の前に「何を社会に果たしたいのか」があることに気づきます。
今、社会の中で「リスキリング(学び直し)が大切」という言葉を聞きますが、…もしかしたら少し「社会で生き残るためには?(稼ぎ続けるためには?)」という視点で語られることが多いような気もしています。
もちろん、それ自体は正しいのですが、…結局のところ…何を学べば人生安泰かなんて、…正直、よく分かりません…
〜ということで、私個人としては「学びの前の、志」をより意識して学び直しを進めていきたいと思います😊
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます!