“売上” を考える上で大切なこと
column vol.944
最近logmiで、AIチャットボットと会話しながら商品の購入や予約ができる「チャットコマース®️」を展開する「株式会社ZEALS」の渡邊大介さんと
『売上の地図』の著者である「株式会社トライバルメディアハウス」の池田紀行さんの「売上」についての対談が面白かったので、共有させていただきます。
〈logmi Biz / 2022年12月6日〉
池田さんは
つまり今、多くの企業で大事にされているLTV(Life Time Value / 顧客生涯価値)につながる考え方です。
「売ること」ではなく、「買い続けてもらうこと」に着目する。
本日は、そこを掘り下げていきたいと思います。
「お得」に潜む魔物
LTVとは簡単に言えば、顧客が生涯にわたってどれだけ自社に利益をもたらすかを算出したもの。
例えば、車だったら一人の顧客が7回ぐらい買い換えるとして、その内どれだけ自社商品を購入してもらうかがポイントになります。
もちろん、全部自社商品を買ってもらえることがベストなのですが、消費者とは移り気なもの。
さまざまな企業の商品を試したくなるものです。
特に今の時代、情報がすぐに流通する社会なので、良い商品を開発してもすぐに他社が模倣し、コモディティ化(同質化)してしまう…
他社との差が見当たらない場合、短期的視点(売ること)で考えたら、簡単なのはインセンティブを付与することです。
お安くする、プレゼントを提供するなど、お得を加えることです。
当たり前ですが、同じレベルのものなら、他社と比べてお得な方が消費者として買いたくなります。
ただ…、やはりお得を付加してしまうと、その分、価値が下がってしまう可能性もあります…
定期的にお得を付与すると、それがないと「損した」気分になる消費者もいらっしゃるでしょう。
そこで、短期的な視点ではなく、長期的な視点で他社との差をつけるにはどうしたら良いのでしょうか?
1つは品質(商品へのこだわり)を高めていくことなのでしょうが、それとともに「価値を余すことなく伝えられているのか?」という視点も重要になるでしょう。
価値を “余すことなく” 伝えられているのか?
どれだけこだわりの商品をつくって見ても、説明しないとその良さはなかなか伝わりません。
しかし、商品は何の説明もなく店頭に並べられる確率が高い…
昨日の「文房具の自販機」のように、デジタルサイネージと大型のタッチパネル液晶で商品の価値を伝えるなど、価値を伝える工夫が必要です。
もちろん、店員さんが説明してくれる部分もありますが、ではでは、ちゃんと店員さんたちに価値を余すことなく伝えきれているかという確認は大事でしょう。
そこで最近は、顧客との接点を設け、価値をしっかり伝える機会を設ける企業が増えてきています。
例えば、“あぶらとり紙” でお馴染みの京都の「よーじや」もそうです。
同社は長年、観光客頼みの売上構造に頭を悩ましていました。
〈WWD JAPAN / 2023年2月27日〉
コロナ前のインバウンド比率は約4割。
国内のお客さまを合わせると9割近くが観光客という状況でした。
しかしコロナもあり、観光客に依存しない取り組みをスタート。
22年3月と同年7月~12月の2回にわたって、ジェイアール京都伊勢丹でポップアップイベントを開催し、商品そのものの良さで選んでもらえるよう、商品の選定や季節感のあるディスプレイなどを工夫したそうです。
客層も40~50代が多かったこれまでと異なり、20~30代の獲得を狙い、その結果、3月には予算比195%、7~12月には同150%の売り上げを達成。
価値をきちんと伝えたことで、脱観光客依存の光明を得ました。
企業、商品には「人格」が必要
このように「こだわりを余すことなく伝える」ための工夫があると、やはりファンは増えていく。
こういった活動と連動して大切になるが、企業、商品にいかに「人格」をもたらすかということです。
小売の現場では最近「誰から買うか」がポイントになってきています。
例えば、立川のお店から横浜のお店にアパレルスタッフが異動した場合、お客さま(ファン)も一緒に付いていかれる傾向が強まっています。
それは、SNSやオンライン決済が発達したことによって、同じ商品なら「この人から買いたい」という要望が叶えられるようになったからです。
メーカーも同じで、顧客接点を増やし親密に触れ合うことで、お客さまはその企業や商品に愛着が生まれる。
また、メディア戦略も重要です。
例えば、トヨタのトヨタイムズはトヨタで働く方々の熱き想いを発信することで、消費者はトヨタの車を見かけるたびに、「車に熱き会社」としての人格を思い浮かべるでしょう。
〈トヨタイムズ〉
東芝のテレビ「REGZA」が裏話をYouTubeで話すことでファンを獲得しているという話も有名です。
〈ITmedia NEWS / 2023年1月31日〉
そのストーリーが企業に人格を与え、ファンを育てるのだと思います。
「誰がつくっているか」が付加価値になる
商品に人格を持たせるということでいえば、高額商品や嗜好品だけではなく、身近な商品も同じです。
それはスナック菓子でも同じでしょう。
湖池屋の「プライドポテト」という商品はご存知でしょうか?
2017年に生まれ、2020年2月にリニューアルをしたのですが、4ヵ月で20億円を売り上げる大ヒットとなりました。
〈知って得する リンリンの暮らしの情報〉
商品のキーワードの1つに「食塩不使用」が挙げられます。
これは「芋味」を好まれる方々がハマる味であると共に、健康を意識する方々にも最適。
こういう話だと、商品の特徴を語っているに過ぎません。
しかし、次のような話だとどうでしょう?
実はこの商品を手掛けたのは、マーケティング部の野間和可奈さん。
一児の母です。
商品づくりで大切にしているのは、ご自身のお子さんにも安心して食べてもらえるお菓子をつくること。
食塩不使用で小さな子どもでも食べられるプライドポテトには、そんな想いが込められています。
そう聞くと、どうでしょうか?
商品を手にした際に、優しいお母さんの笑顔が思い浮かぶのではないでしょうか?
同じ「食塩不使用」でも受け手の印象がグッと変わるはずです。
つまり「お母さんが子どものためにつくったお菓子」という人格が商品に生まれ、付加価値となります。
こういうことの積み重ねが、企業の、そして商品の差を生み出していくはずです。
先日書いた【消費者は「真実」を求めている】という記事でも触れたのですが、ブランディングとは「志を明確にすること」。
つまり「良い経営そのもの」なのです。
「どうしたら長期的に買い続けてもらえるか」の答えが、そこにある。
パーパスが大事だと言われるようになって久しいですが、こういった話を読み解いていくと、より解像度高く理解ができますね。
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