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磨け、洞察力

column vol.1286

組織開発・人材育成を支援する「ALL DIFFERENT」「ラーニングイノベーション総合研究所」が行った「管理職意識調査」によると、管理職の最大の悩み「部下の育成」(55.2%)ということが分かりました。

〈日本の人事部 / 2024年9月10日〉

…確かに今、育て方に対してもセンシティブな時代なので…、上司は育成に対して非常に気遣っているでしょう…

「育てないといけない」プレッシャー、「ハラスメントしてはいけない」プレッシャー。

そうした難しさはあるものの…、それでも育成は会社の未来にとって最重要と言っても過言ではないでしょう。

そこで、本日キーワードに挙げたいのが「洞察力」です。

これは、あのサイバーエージェント社長、藤田晋さんが示してくださった言葉なのです。


経営の肝は「人への洞察力」

藤田さんは、このように仰っています。

「人に対する洞察力が大事だ」

〈日本経済新聞 / 2023年6月30日〉

有望な事業成長が見込まれる分野を見抜く洞察力とともに、成長の種を見つけて育てていく「人」への洞察力も同じくらい大切だということです。

人に対する洞察力を磨くため、藤田さんは

「年間100本の映画を見て、雑誌も読み、舞台にも足を運んだ」

と仰っています。

こうした経験が組織づくり人事に生かされているとのこと。

これは先日、良い経営「人間を知ること」から生まれると話した【判断とはセンス】という記事に通ずるかと思います。

そして、この「人への洞察力」の大切さにつながる話として、もう1つご紹介したいのが、『Z世代化する社会』の著者で、東京大学大学院経済学研究科講師の舟津昌平さんと、組織開発コンサルタントの勅使川原真衣さんの、東洋経済オンラインで語った、こちらのやり取りです。

舟津氏:組織の中で「なぜあの人が評価されているのか」って疑問に思うとき、その理由の1つは貢献度かもしれません。よくしてくれたから、みたいなことが案外評価の大部分を占めていたのではないか。それって能力でもないし、成果でもないし、気に入った人をひいきしているわけでもない。組織への貢献があったんだと。
勅使川原氏:うわー、本当にそうかも。それこそ、「営業の人が金持ってくるから偉い」みたいなことが大企業の中でよく言われたりするんですけど、でもコールセンターで誰かが客の苦情を1時間延々と聞いてくれないと成り立たなかったりもするわけで。そういう貢献を利益をもたらす人=成果主義で評価すると、見過ごされてしまいますよね。

〈東洋経済オンライン / 2024年8月29日〉

能力や成果で測る「成果主義」ではなく、組織にどんなプラスをもたらしているかという「貢献主義」が大事であるという話なのですが、

私は車の両輪のように、2つが一緒に回って進んでいく方が組織は真っ直ぐ安定して進んでいくのではないかと感じています。

貢献を余すことなく拾う

企業はもちろん成果を出さないといけませんし、職種・職位の職務を全うできる職能を磨かないといけないというのは前提なのですが、それだけだと社員の努力や想いがこぼれてしまう

例えば、朝、散らかっているゴミを片付けたり落ち込んでいる社員をそっと励ましたり

どこまで網羅しているかは各社によって違うとは思いますが、要は評価制度の評価基準からこぼれてしまっている会社への貢献にも目を向けることが理想だと思っています。

部下がどんな貢献をしてくれているかに意識を向け、その人なりの貢献を肯定する。

人は期待されるとその期待に応えるように成長するという「ピグマリオン効果」が示すように、そうした小さな貢献から大きな貢献、つまり成果に結びつくことも大いにあるわけです。

他の社員の貢献に目を向ける職場の文化が築けると、人は社員の良い部分に目がいくようになる。

人間には「返報性の原理」が働くからです。

人から貢献を認められれば「自分も!」と返したくなります

また、人の良い所に目が向けられるようになれば、「もうちょっと頑張らないと…!」自分への反省にもつながることもある。

学ぶ「まねぶ」という言葉が由来していると言われていますが、やはり、自ら気づき、学ぶ(真似る)姿勢をつくっていくことが人財育成の本質でもあるでしょう。

今の時代だから、というだけではないのです。

社員みんなが「洞察」に優れる会社になっていく。

そんな会社になれたら、素晴らしいですね。

洞察といえば、J.D. パワー “ホテル宿泊客満足度<エコノミーホテル部門>” で顧客満足度9年連続1位に輝いているスーパーホテルが頭に浮かびます。

〈東洋経済オンライン / 2024年8月26日〉

緻密なマニュアルはなく、スタッフの8割がアルバイトというホテル。

それでも、9年連続1位になっているワケは、顧客に対して細部まで見る観察力と、考える力を磨いていることにあると言われています。

訪れた方がエントランスに入ってきた瞬間に、表情・しぐさ・服装、そして荷物までを確認し、その方にふさわしい対応を行っていく。

例えば、荷物の大きさ一泊なのか連泊なのかを予測し、事前に把握している予約情報と照らし合わせ、そのお客さんへの接客ポイント自分なりに組み立てていくそうです。

洞察力を育てる

もちろん、こうした力を誰もが持っているわけではありません

しかし、スーパーホテルでは、モノの見方捉え方、そして考え方研修(ワークショップ)を通して、じっくりと時間をかけて育んでいます

お客さん役が入店されてから、フロントでチェックイン手続きをすませるまでの動きを、寸劇のような動画にして、数名の参加者がそれを見て、どこに注目し、何を考えたのかをディスカッションする。

実際、同じ動画を一緒に見ているにもかかわらず、人によって注目したポイントも違えば、同じポイントに注目しながらも、違う感想を持つなど、まさにスタッフによって千差万別なのだそうです。

しかし、そうした多様な視点や考えを通して、自分の洞察力が磨かれていく

つまり、洞察力を育んでいることがスーパーホテルの強さの秘訣なのです。

先ほど、部下を洞察する力、部下が洞察する力を育むということが大事だと話しましたが、こうした環境を築いていくということが経営者の大きな役割だと感じています。

以前、【令和の「新人育成」とは?】という記事の中で、新人同士がお互いを高め合う「串カツ田中の研修センター店」や、パナソニック「若手だらけの運動会」で触れた「ヨコの教育」も、

社員が自分で気づき、考えて、自らを成長させるという仕組みづくりの1つでしょう。

そして、上司と部下という「タテの教育」についても、自らが向上心を持って学び、成長していけるようなファシリテーター的な存在として上司は育成にあたった方が良いかもしれません。

最近は、学校現場でも生徒が自律的に学び、先生がファシリテーターとして導く「アクティブラーニング」への意識が高まっています。

そうしたことをヒントに、令和の社員教育を磨いていけると良いかもしれませんね😊

…とはいえ、そんなに簡単ではない話なのですが…、試行錯誤しながら、じっくりとより最適な育成のあり方を築いていきたいですね。

私も、様々なヒントを参考にしがら、考えていきたいと思います🫡

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!

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