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観光の光「アドベンチャー・トラベル」
column vol.1188
本日は冬休みの最終日。
今年も休みを十二分に満喫することができました😊
年末年始は自宅が横浜、実家が鎌倉ということもあり、何と言っても多くの外国人観光客を見かけました。
街を歩いていても多言語が飛び交い、世界から愛されている日本を改めて実感。
そんな中、注目を集めている新しい旅のカタチがあります。
それが「アドベンチャー・トラベル(AT)」です。
こちらは
●アクティビティ(バンジージャンプやカヤックなど)
●自然
●文化体験
のうち、2つ以上で構成される旅行形態として定義。
特に欧米では、この体験型観光が人気となっています。
日本でも徐々に裾野が広がっているのですが、ここに観光業の新しい光があるのです。
「旅の分散化」として期待
昨年の行動制限の撤廃以来、多くの外国人観光客が訪れており、一部地域ではオーバーツーリズムの課題も生まれています…
〈ビジネス+IT / 2024年1月5日〉※無料会員登録記事
この「一部地域」ということがポイントで、東京、大阪、京都、富士山などいわゆるゴールデンルートといった有名観光地は賑わいを見せているものの、地方ではコロナ前から回復できていない地域もあります。
例えば、外国人延べ宿泊数で最下位の島根県の宿泊数は東京都の0.1%。
島根県の人口が東京都の5%であることを踏まえても少ないと言えるでしょう。
ちなみに同県の宿泊者数は19年比で−7.6%でした。
…もちろん、交通、宿泊施設、人手など、受け入れ体制を整えないといけないですし、一足飛びというわけにはいきませんが、アドベンチャー・トラベルは「旅の分散化」を促すとして期待されているのです。
この旅の良いところは、平均約2週間と滞在日数が長いこと。
さらに、教育水準の高い富裕層が多いので、宿泊施設や食事にも出費を惜しまない人が多く、国土交通省観光庁「地域の自然体験型観光コンテンツ充実に向けたナレッジ集」によると、インバウンド平均消費額の2倍以上なのです。
経済効果ということでいえば、アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)の試算でも見て取ることができます。
2024年の日本へのAT旅行者数を3030人と推計。
2025年には5191人、2026年には1万2481人に急増すると予想しています。
〈トラベルボイス / 2023年12月8日〉
また、経済効果については、1人あたりの平均消費額は3728ドル(約55.2万円)と試算。
総消費額は
2024年…1130万ドル(約16.7億円)
2025年…1940万ドル(約28.7億円)
2026年…4660万ドル(約70億円)
に増加すると見込んでいます。
※ドル円換算は1ドル148円でトラベルボイス編集部が算出
この予測の裏付けとなっているのが、昨年9月にアジアで初めて開催された「アドベンチャー・トラベル・ワールドサミット2023(ATWS2023)北海道」での成功。
同サミットで日本は改めて各国からの期待が高いことが伺えたのです。
大反響だった「ATWS2023」
「ATWS2023」では3日間の本大会に加えて、開幕前には全国22ヵ所(北海道内15ヵ所)でプレ・サミット・アドベンチャー(PSA)、大会初日には道内31ヵ所でデイ・オブ・アドベンチャー(DOA)を開催。
ウェルカムレセプションは「さっぽろテレビ塔」、オープニングセレモニーは「大倉山ジャンプ競技場」で実施するなど、「オール北海道」でイベントを行いました。
ATWSの主催者は、先ほど試算の時にご紹介した「ATTA」。
同団体によると参加者は計773人で、前回(スイス・ルガーノで開催)の718人を超えました。
内訳を見ても、旅行会社などのバイヤーの割合が前回の13.5%から15.5%に増加するなど、北海道開催への関心の高さが伺える結果となったのです。
(他にも、サプライヤー、パートナー企業・団体、メディアなどが参加)
さらに評価の高さも伺えます。
ATTAの調査によると、全体の満足度は5段階評価で4.5。
「ATデスティネーションとして日本の認識」は4.7となり、63%が大会後に「日本の印象が好転した」と回答しています。
「北海道大会への参加は価値があった」と評価する参加者は実に97%にも及んだそうです。
さらに、調査対象80人のバイヤーのうち83%が「今後北海道の新しいツアーを企画する」と答え、新企画の数は1社平均3.1ツアーという結果になりました。
〜という喜ばしい結果を受けて、先ほどのATTAの「AT旅行者数」と「経済効果」の試算につながっているのです。
もちろん、アドベンチャー・トラベルは総じて宿泊施設、二次交通、ガイドの不足、コンテンツの造成・周知・価格設定などに課題があります。
今回のATWS2023でも、特に「質の高い英語ガイドの量」について厳しい評価があったそうです…
ただ、そうした課題も逆に言えば「未開の鉱脈」。
新しい商機の種になるでしょう😊
ちなみに今年は11月に日本政府観光局(JNTO)とATTAが連携した沖縄県の「Adventure Week」が開催予定となっています。
〈JNTO / Webサイト〉
こちらにも世界から熱視線が注がれそうですね。
世界の魅力的なプログラム
ちなみに、世界のATにはどんなプログラムがあるのでしょうか?
再びビジネス+ITに戻りますと、分かりやすい例として挙げられているのが、トルコのカッパドキアで行われている「熱気球フライト」。
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ニュージーランドのクイーンズタウンでは、バンジージャンプからウオーキングまで豊富なアクティビティが有名。
ヘリ搭乗やパラセーリングなど空中アクティビティだけで100種類以上。
ボートなど水上アクティビティが約100種類もあるそうです。
他にもゴルフ、バンジージャンプ、乗馬、バーなどナイトライフも多彩に用意されているとのこと。
宿泊施設は比較的安価な宿から5つ星1泊約100万円まで多様な選択肢があり、レストランも世界の旅慣れた旅行者のお眼鏡にかなう高レベルのようです。
また、単に自然を楽しむだけということではなく、いかに物語性を生み出すかが重要とのこと。
南米には「アマゾン川でピラニアを釣って焼いて食べる」というアクティビティがあるそうなのですが
●そこでしかできない体験
●口コミしたくなるような話のネタがある
といったような付加価値が大切になるのです。
日本の魅力溢れるATプログラム
日本でも
●知床半島のトレッキング
●飛騨高山白川郷の散策
●山形羽黒山の山伏修行体験
●永平寺の座禅体験
などが既に人気。
お寺ということでいえば、以前【高めたい「旅の作法」】という記事でご紹介した高野山の「宿坊体験」にも物語性を感じます。
他にも、静岡市の野生の竹林を開拓・整備し、上質なアウトドア基地として再生させる「Bamboo Camping」プロジェクトについて気になっています。
〈Bamboo Camping / Webサイト〉
「放置竹林」は日本の大きな社会課題になっていますが、その課題を宝に変えようとするのが同プロジェクトの目的。
日本有数の上質な日本茶・和紅茶を味わうことや、登山やトレッキング、MTB、キャンプなどのアクティビティを楽しむことができるのです。
今月13日からプレオープンし、インバウンド向けのキャンプ場としての正式開業は9月予定とのこと。
社会課題を解決しつつ、新しい旅のカタチを提供できる
こうしたプログラムは、他の地域でもますます取り組まれていくでしょう😊
ということで、本日は観光業の希望の光となるであろうアドベンチャー・トラベルについてお話しさせていただきました。
今後は国内でもATを楽しみながらワーケーションを行うビジネスパーソンも増えていきそうです。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。