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「起業」を「起動」させる社会へ
column vol.1127
国内スタートアップの資金調達金額が、3年ぶりに1兆円を割り込む可能性が出てきました。
〈STARTUPS JOURNAL / 2024年2月1日〉
これは新株を発行するエクイティファイナンスだけでなく、融資などのデットファイナンス、そしてクラウドファンディングによる調達などの総額とのこと。
2021年末頃、アメリカの中央銀行の利上げなどを受け、資金調達環境が調整局面に突入し、その後ロシアがウクライナ侵攻を開始。
世界情勢は一層不安定になりました。
他にも様々なマイナス要因によって、スタートアップへの出資熱がトーンダウンしつつあるというわけです。
一方、これまで何度も日本の窮地を救ってきた男が、起業熱を再び加熱させるような新たな挑戦を発表しています。
日本人向け企業向けの新ファンドを創設
その方とは、これまで数々の試合でピンチを救ってきた元サッカー日本代表の本田圭佑さん。
日本のスタートアップ企業へ投資する新ファンド「X&KSK Fund」を設立し、「2024年内に150億円の資金調達を目指す」と先日発表がありました。
〈Forbes JAPAN / 2024年1月21日〉
投資は今月から開始。
対象となるのは、主に、海外進出や海外ベンチャーキャピタルからの出資を目指す創業まもないシード期からシリーズAのスタートアップで、1社1億円から3億円で30社に投資を行うそうです。
ちなみに本田さんといえば、個人のエンジェルファンド「KSK Angel Fund」で、すでに200社以上のスタートアップに投資。
さらに、2018年にウィル・スミスさんと設立した「Dreamers Fund」でアメリカでのスタートアップ投資にも注力してきました。
実績も投資先の
9社→時価総額10億ドルを超えるユニコーン企業
2社→100億ドル超のデカコーン企業
に成長するなど、サッカーだけではなく投資の世界でも結果を残しております。
そして何より…、今回の「X&KSK Fund」のメンバーがまた凄いのです。
●マネージングパートナー / 山本航平さん
…楽天のアメリカ本社で新規事業やスタートアップ投資を担当。
●パートナー / ジャスティン・ウォルドロンさん
…アメリカでユニコーン企業となったソーシャルゲーム会社「ジンガ」の創業者。
●アドバイザー / 佐々木陽介さん
…ソフトバンク・ビジョン・ファンドで参謀長としてCEOを補佐。
など
本田さんは
「日本人として、日本のスタートアップエコシステムに危機感を抱いています。上場がゴールになっている現実があり、大きな挑戦をしている起業家がいないというのが問題。ファウンダーの意識改革にもコミットして、起業家と“共闘”しながら世界に通用するスタートアップを生み出していけるかどうかが、この新ファンドでのチャレンジ」
と熱く抱負を語っております。
確かに、これまでの常識に囚われない挑戦心を持ち、世界に顔の効く本田さんが日本のスタートアップを盛り上げていけば、「出る杭」を生み出す土壌が育まれるかもしれません。
実際、この国には「出る杭マインド」がとても重要になると思うのです。
「出る杭」とは何なのか?
出る杭が、なぜ打たれるのか?
辞書的な意味から言えば、「才覚をあらわす者は妬まれ、妨げられる」ということなのですが、ビジネスの現場では、それだけではない気がします。
実は「リスクヘッジ」の方が強い感じるのです。
「Andreessen Horowitz」のマーク・アンドリーセンさんはこの「出る杭人材」のことを
「martyrs to civilizational progress(文明進歩の殉教者)」
と呼び、その自己犠牲的な性質を強調しています。
〈Forbes JAPAN / 2023年11月16日〉
マズローの6段階欲求説で知られている通り、人間の第一の欲求は「生存欲求」です。
まずは己の身を守るために、変に冒険せず「安定」を求める。
文学者のジョージ・バーナード・ショーさんが
「合理的な人間は自分を世界に合わせる。非合理的な人間は世界を自分に合わせようと粘る。それゆえに、あらゆる進歩はこの非合理的な人間にかかっている」
と仰っていますが、大抵の人は前例主義など安全策を取り、組織に同調するわけです。
(…それは、本能的には正しいのですが…)
一方で非合理な人間は、単に自分勝手に世界を自分に合わせたいわけでなく、「目指したい世界」があるわけです。
…当然、安定を求める人たちからすると「出る杭を叩きたく」なる。
だからこそ、理想実現のためにリスクテイクしなければならず、マーク・アンドリーセンさんの言うところの「殉教者」になってしまうのでしょう…
一方で、「なぜアメリカのシリコンバレーが多くのスタートアップを生むのか?」という問いに、グーグル親会社「アルファベット」会長のジョン・ヘネシーさんは、1つのファクターとして
失敗に対して寛容で、リスクを取る気概がある。愚かなリスクではなく、考え抜かれた野心的なアイデアに裏打ちされたリスクです。才能あふれる多様な人々の挑戦が融合して特異な環境を作り出しているのです。
と、失敗を許容する(むしろ活かす)社会を挙げていらっしゃいます。
「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるようなビックテックだって、「誰も答えなんて分からない」。
だからこそ、時代の寵児になっても皆、挑戦し続けているわけです。
そうしたベースが前提にあることがチャレンジシップをつくっていくのでしょう。
都が「大学発スタートアップ」を創出
ちなみに、シリコンバレーといえば、カリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学など、優秀な起業家を育む大学の存在が大きいと言えるでしょう。
そんな中、東京都の興味深い取り組みがあります。
大学などに眠る技術シーズやアイデアの事業化に向けた「大学発スタートアップ創出支援事業」にトライしているのです。
〈東京都 / Webサイト〉
こちらは、都とコーディネーターが連携し、大学発スタートアップ創出に対して、経費支援及び伴走支援を行うというもの。
2つのタイプを設定し、各校の実情に応じ、必要な支援を提供しています。
(1)事業化促進型
…大学などに眠るシーズなどを活用した新事業の創出に向けた支援
(2)環境構築型
…大学などのシーズや事業アイデアを活用した起業・新事業創出を促進する学内の仕組みづくり・体制整備などに対する支援
そして、支援を受ける10校が選定されているので、ご紹介させていただきます。
【事業化促進型】
●慶應義塾大学
●芝浦工業大学
●順天堂大学
●帝京大学
●電気通信大学
●東京工業大学
●東京大学
●東京理科大学
●武蔵野大学
【環境構築型】
●武蔵野美術大学
個人的に注目しているのが「武蔵野大学」です。
同校にはアントレプレナーシップ学部がありますが、単に起業家を育成するのではなく、「自分の人生を歩いていける人(事を成せる人)」を育てていこうという哲学がカッコいい。
さらには、今年の春からは世界初の「ウェルビーイング学部」が開設。
起業はしないとしても、企業に依存できる時代ではなくなっています。
そうした中で自分の人生に対してオーナーシップを持つ「人生経営」への意識が重要になります。
どうせ、人生の経営者になるなら、「世界を変える!」…までいなかくても…、「目指したい世界」は明らかにしておいた方が良い。
その1つの選択肢として、起業がスタンダードな社会、そして失敗を宝とできる社会がやってくれば良いですね😊
今後もスタートアップについての良き事例がありましたら、ご報告させていただきます。
本日んも最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!