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「構想力」という「求心力」
column vol.1081
VUCA時代ならびにAI時代に活躍する人財について、よく議論されることが多いですが、その1つに挙げられるのはリーダーシップ力の高い人でしょう。
かつて、【AIと人間の “違い” と “共存”】でも語らせていただきましたが
自分をプレイヤーというよりも、ディレクターと認識している人は、部下に頼むかAIに頼むかの違いだからです。
では、理想のリーダー像とはどんな人なのでしょうか?
私の考えを言わせていただくと、いつも辿り着くのが「共鳴を引き起こすような構想力」を持った人です。
世の中的には「ビジネスプロデューサー」と呼ばれる人たちですかね。
多種多様なプロフェッショナル(プレイヤー)たちに最大限活躍してもらいながら、チームをリードしていく役割。
その重要性を語る方は多く、例えば『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」戦略』や『「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』の著者であり、ドリームインキュベータ社長の三宅孝之さんがまさにそうです。
〈PRESIDENT ONLINE / 2023年8月11日〉
上記の記事は「答えはお客様の中にある」というのはもう古いという説が語られているのですが、マーケットを考える上で非常に参考になります。
今日はリーダー(プロデューサー)が共鳴を引き起こす構想力が重要という話を展開したいと思っているのですが、まずは三宅さんの新規事業についての考察を、ご紹介させていただきます。
全てのニーズへの答えは既にある
よく新しいビジネスを考える上で、顧客のインサイトを読み取ろうとしますが、ニーズから着想を得ようとすると、結構ニッチなものまで商品・サービスが顕在化していることに気づきます。
つまり、お客さんが求めていることに対して提供するコンテンツは既に飽和しているということです。
よく「顧客が多様化している」「ニーズの変化が激しい」ということにフォーカスが当たりますが、「提供(コンテンツ)の飽和」も同じくらいビジネスを難しくしている。
例えば、家で何か困ったことがあり、ホームセンターに行くと、だいだい困り事を解決するものが揃っている、そういうことです。
極端に言えば、ニーズを満たすものについては「ないものが、ない」。
では、企業が新規事業を立ち上げる上で、どこに目を向けるのが良いのでしょうか?
三宅さんによると、その解は「社会課題」にあると仰っています。
日本は言わずもがな「課題先進国」です。
少子化、高齢化、経済格差、自然災害、環境汚染、エネルギー不足、労働力不足、医療・介護の問題、インフラの老朽化など、課題を挙げれば憂鬱になるほど…山積しております…(汗)
一方で、こうした社会課題をビジネスにしようとすると、自ずと事業規模も大きくなる…
解決の糸口も漠然としていますし、講じる策についても多様な価値感の中で最適解に導かなければなりません。
もっと言えば、すぐに収益化できないものもたくさんあります。
そういうこともあって、チャリティ、ボランティアという形で取り組むことが多いのですが、それはそれで継続が大変なわけです…
「共鳴」の正体
そこで、ビジネスプロデューサーの出番となります。
社会課題をビジネスにしていく上で数百億、数千億円規模の事業を創造しようと思えば、1社だけで実現することはまず不可能です。
複数の企業との連携が必要不可欠となります。
それは民間だけではなく、官学も含めたチームを構成していく必要もあるかもしれません。
スケールが大きくなればなるほど、多様な組織文化を持った人たちと付き合うことになりますし、さまざまな利害関係も生まれます。
先ほど「共鳴を引き起こす構想力」と言いましたが、それは単にキレイ事の絵を描くだけではなく、それぞれのステークホルダーたちの利益を考えていかないといけません。
金銭はもちろんのこと、面子など複合的な利益を内包した絵を想像する力。
コンセンサスを取ること1つでもそうです。
最近、「共鳴」についてよく考えることがあるのですが、共鳴を引き起こすには一方通行では、どんな美しい言葉、完璧なロジックを放ったとしても難しいと感じます…
人は高論だけでは動かない。
よく「アイツを言っていることは正しいんだけど…」という声を聞くことがあると思いますが、自分に寄り添ってくれない正論は鼻につくことが多い…
人は寄り添われて、もっと言えば自分の気持ちが伝わったと思えて、初めて動く。
つまり、本当の共鳴は双方向のコミュニケーションの中でしか生まれないというのが、私の実感です。
同じことを言ったとしても、言う人によって反応が変わるのが人間です。
それが難儀なところであり、面白いところでもあり、AI時代の希望でもある。
結局、人は「この人が言うんだから」ということで決めている。
こうした人間臭さは言葉だけでも生まれないような気がするのです。
スタートアップで重宝される「BizDev」
…非常に単純化すれば「人間力」という言葉に集約されます。
つまり、「共鳴力のある構想力」というのは「人間性溢れる構想力」とも言い換えられます。
さまざまなステークホルダーの心の結び目に絵を描く、そんなイメージです。
三宅さんは、資本力のある大企業こそ社会課題解決型ビジネスの中心を担うべきと仰っており、そうした企業から「ビジネスプロデューサー」が生まれることを願っておりますが
大企業に参画してもらうのは必要としながらも、中心になる人は別でも良いと思っています。
最近、こうした考え方に近い職種として「BizDev(ビズデブ)」に注目が集まっています。
「Business Development」の略であり、「事業開発」とも呼ばれる、昨今スタートアップ、ベンチャー企業で特にニーズが高まっている仕事です。
〈まいどなニュース / 2023年6月14日〉
当社の先代社長も、こうしたさまざまなステークホルダーとアライアンスを組んでビジネスプロデューサー的な役割を行うことが多かったですが、よく
ウチみたいな看板のない会社の人間がリーダーをやった方が上手くいくこともある
と言っておりました。
看板があることで面子の衝突が起きてしまうことがあるからです。
ですから、ビジネスプロデューサーは人間力と構想力を持った人であれば、どういう立場でも良いのだと思います。
こうした力は、AI時代において、いやAI時代だからこそ非常に必要とされる役割なのでしょう。
ただ!
この記事を読んでくださっている方々の中には、「私はあまりリーダータイプではないしなぁ…」と感じている方もいるでしょう。
ただ、そういう方もついついビジネスプロデューサー資質の高い人から注目されるようなキラリと光る構想力があれば、推進役として味方になってくれるはずです。
一方!
先ほど、共鳴には人に寄り添う姿勢や、人の想いを想像する力が必要だと語りましたが、やはり
人に向き合い、人を知る心
これは、必須なのかな?と感じています。
ということを考えると…、今の時代、DX人財を育ていることと同等、それ以上に人文学を学ぶ人財を育んでいくことが大事なのかな?と思える今日この頃です😊