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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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#説教

『これからの日本の説教 説教者加藤常昭をめぐって』(説教塾ブックレット・キリスト新聞社)

『これからの日本の説教 説教者加藤常昭をめぐって』(説教塾ブックレット・キリスト新聞社)

説教塾のブックレットの中では、厚いものである。240頁ほどある。「説教塾ブックレット」としては第9巻である。主宰の加藤常昭先生が齢80を数え、「Xデー」なるものも話題になってきた中、「加藤常昭とは何か」ということを問う機会が、このように設けられたのではないか、とも思われる。実際が違ったらお叱りを戴きたい。
 
キリスト教会において、礼拝説教というものに、これほど光を当てて、重視した人は、これまでい

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見抜かれていると感じるとき

見抜かれていると感じるとき

――どうしてこの牧師、自分のことを知っているんだろう?
 
今週の説教を聞いて、妻が言った。もちろん、知っているわけではない。だが、語る説教が、自分の心情や信仰をずばりと突いていることを感じたのである。
 
実はこのような言葉は、あちこちで聞く。多くは、信仰の証しである。証しというのは、自分の体験が神に関わるということを説明することである。神に出会った経験において、礼拝説教が自分のことを言っている

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聖書の言葉があなたを助ける

聖書の言葉があなたを助ける

私も自信をなくすことがある。いまの仕事の中でも、ミスが多くなったのは、年齢のせいかな、とは思うが、だからと言って許されるものでもない。当然、落ちこむわけである。
 
そのような意味で自信をなくしたとき、大丈夫だよ、と力をくれる存在。それが人格神などと説明される、キリスト教の神である。イエス・キリストとして神はこの世に来て、私に「神を見る」という経験を与えてくれた。
 
これは実にうますぎる話だ。た

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『加藤常昭説教全集2 ローマ人への手紙1』(加藤常昭・ヨルダン社)

『加藤常昭説教全集2 ローマ人への手紙1』(加藤常昭・ヨルダン社)

タイトルか出版社を見て、「おや」とお思いになった方がいたかもしれない。「ローマ人への手紙1」は、教文館発行の全集では第17巻である。2005年に発行されたこちらは、改めてヨルダン社版の作品と、さらに多くを重ねて完成したものであり、ヨルダン社は2003年に破産宣告を受け、翌年手続きを完了している。良い本を多く出版していた。惜しいことをした。
 
私が入手したのは、そのヨルダン社版である。手頃な価格で

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『福音主義教会形成の課題』(加藤常昭・新教出版社)

『福音主義教会形成の課題』(加藤常昭・新教出版社)

シリーズ名が「今日のキリスト教双書」であり、その第15弾となっている。私が手に取った時点で、発行から半世紀。それで「今日」と言われても、複雑な心境である。発行から50年して、加藤先生も天へ旅立った。しかしすでにこの時点で、牧師としても神学者としても活躍しており、力ある説を告げている。その意味では、「今日」という言葉に偽りがあるようには思えない。私たちは、もっとよくない情況にある、とも言えるからだ。

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『まことの説教を求めて 加藤常昭の説教論』(藤原導夫・キリスト新聞社)

『まことの説教を求めて 加藤常昭の説教論』(藤原導夫・キリスト新聞社)

これは「説教塾ブックレット」の一冊である。「説教塾紀要」の中から、一般にも提供すべきである部分を取りだして単行本として発行するものである。今回はその「紀要」からというよりも、加藤常昭先生の多くの著作の中から、四冊を以て、その説教論のエッセンスとして説教について学ぶ機会をもっていた著者が、まとまったものをこうしてひとつの形にしたものであるようだ。
 
その説教論を批判検討しようという意図はない。専ら

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小林和夫先生を偲んで

小林和夫先生を偲んで

小林和夫先生の訃報が飛び込んできた。
 
恩人の一人である。
 
細かなプロセスを説明し尽くすことはしないが、私は成人した後、京都で哲学を営んでいた中で、聖書に触れ、強烈な体験を経て信仰が与えられた。どこか教会に行きたいと願い、下宿の近くに通える教会を見つけた。ただ、そこは異端と呼ばれても仕方がないような教団に属するところだった。
 
私はすでに、FEBCの無料聖書講座を受けていた。自分で聖書を読

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説教・出会い・我が事・従え

説教・出会い・我が事・従え

こうした宣教において起こることは、キリストと聴衆との出会いである。そこでは説教は、既に起こった出来事、イエス・キリストの歴史の証言である。そしてこの証言において、イエス・キリストの歴史 die Historia Jesu Christi が、われわれと同時のものとなる。いっさいの距離は消え、見物していたような態度は捨てられ、このキリストの歴史は自分のために起こったのだと受け取るようになる。具体的な

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『加藤常昭説教全集25 ヨハネの黙示録』(加藤常昭・教文館)

『加藤常昭説教全集25 ヨハネの黙示録』(加藤常昭・教文館)

加藤常昭先生の説教集は、生前にひとつのまとまったものとして世に出たことが、小さな慰めであった。17年間を務めた鎌倉雪ノ下教会を退くこととなったが、最後の一年間を、ヨハネの黙示録を語るように、と長老会が決めたそうである。牧師に与えられた箇所ではなく、教会が決めるというのは、加藤先生にとっては当たり前なのかもしれないが、私にとっては新鮮であった。
 
しかしともかく、最後の連続講解説教が黙示録だという

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その事柄にかかわらせられている者だけが

その事柄にかかわらせられている者だけが

ここのところ、立派な装丁の本を読み返している。要するにハードカバーというものだ。一日に触れる本は十冊以内くらいにしているが、そのうちの一冊を、この再読本にしているのだ。せっかく、かつてそれなりの金額を払って購入したものだ。一度読んでおしまい、ではもったいない気がしたのだ。もちろん、それだけ読む価値がある、と思うからである。
 
加藤常昭先生が訳した、ドイツの先生のハードカバーをずっと読み直していた

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『加藤常昭説教全集24 ペテロの第一の手紙・ヨハネの手紙一』(加藤常昭・教文館)

『加藤常昭説教全集24 ペテロの第一の手紙・ヨハネの手紙一』(加藤常昭・教文館)

加藤常昭先生の本は、振り返ってみると、ずいぶん読んでいる。代表作はもちろんのこと、聖書講話シリーズや、道シリーズなどもある。翻訳ものを含めると、個人別にして一番多く持っているだろう。だが、「説教全集」は、一冊も持っていなかった。なにしろ高いのだ。そして、きりがないからだ。
 
しかし、D教会で一年間説教を続けた2003年度のものが入った巻があるという。D教会のH牧師から聞いたので、「これは」と思っ

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語る者のことば

語る者のことば

説教塾ブックレット。21世紀になってから、「説教塾紀要」の一部を一般に広く知ってもらうために、というような形で発行されたシリーズがある。その第11弾として、2012年に『まことの説教を求めて』が発行された。副題に「加藤常昭の説教論」と付いており、著者は藤原導夫牧師である。説教塾の一員であり、要でもある。
 
今回は、その書評のようなことをするつもりはない。ただ、そのごく一部から励まされた点を証しし

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『説教25 説教塾紀要』(教文館)

『説教25 説教塾紀要』(教文館)

自分の手の届く世界ではなかった。説教のプロたちの営みは、遠い雲の上の世界だった。「説教塾紀要」の存在は知っていたが、自分が読むようなものではない、と思っていた。
 
だが、主宰の加藤常昭先生の最後の説教が掲載されていると聞き、迷わず購入の手続きをとった。2024年3月発行の最新版である。
 
2023年10月8日のその礼拝の末席を私は汚していた。加藤先生と時を共有してその説教を聴くのは、初めてだっ

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『説教ワークブック:豊かな説教のための15講』

『説教ワークブック:豊かな説教のための15講』

(トマス・H・トロウガー;レオノラ・タブス・ティスデール・吉村和雄訳・日本キリスト教団出版局)
 
私にとって3000円+税とは高価な本だ。だが、気になっていた。キリスト教の礼拝説教というものに執着のある私だから、テーマが気になる、というのも事実だ。だが、この共著の一人が、トロウガーであるという点が、どうしても見逃せなかった。『豊かな説教へ 想像力の働き』を読んだからだ。日本の説教塾でも、説教と想

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