「 絵画音楽 」世界が再起動する予感
20世紀の抽象絵画を手掛かりに、21世紀に瞑想体験と抽象絵画をブリッジしたメディテーションフィールドを開始、その可能性を追う画家の美術論考。
「抽象絵画再考」3
「 絵画音楽 」
「絵画音楽」は、7年前の2013年、作品を初めて発表した時から私の表現方法のひとつだった。
遡れば2010年頃、自作曲を聞きながら絵を描いていた時、強烈なトリップ感覚があり、これは何か特殊な体験だと意識した事が始りだった。
その後DTMで作った曲と絵画を重ねて鑑賞したり描いたりする事が自然と多くなっていく。
発表当時は具象の瞑想絵画を前に自作音源をヘッドホンで視聴する作品だった。
Rainbow Eye
(Painting, Music)
Plywood acrylic gesso watercolor H57 × W122
2013 白竜と獅子が飛行する瞑想体験を絵画と音楽を合わせて観賞する事で瞑想感覚の再現を試みた作品。2014タグボートアワード入選作品
その後オーソドックスな絵画や彫刻に移行して絵画音楽の実験は止まっていた。
当時も現在も、意識的に絵画と音楽を合成した作品は市場には殆ど観ない。
映像が溢れ、ほぼ携帯やテレビで視聴覚を奪われている現代人にとって、静止した絵画を鑑賞するのは退屈とも取れる。
更に絵画音楽と言っても、ジャケットのアートワークか絵のBGMぐらいにしか捉えれない、微妙な表現だからだろう。
表現を明確に出来ない事で絵画音楽は止まった。
それから7年たった今、「絵画音楽」を再開する機会が訪れる。
瞑想体験と抽象絵画をブリッジした個展「IDEA」。コロナが日本に上陸した矢先の2/1に始まった。
個展「IDEA」のオープニングにパーカッションライブが実現し、久々に音楽と絵画の親和性に気づく機会を得ることが出来た。
「IDEA 」パーカッションライブセッション
4月現在も感染拡大する中、個展を開催したみんなのギャラリーも、外出規制に合わせてオンライン展示を探る企画を急遽立ち上げた。
「アーティストの本棚」
オンラインとギャラリー展示を作家の本棚とした見せ方で、作品と他の何かを含めて作家の活動と人を知ってもらおうという、現代アートギャラリーとしては親しみ易い企画。
スタート作家10名に私も加わり、今このタイミングで何を発表するか、自由度の高いコンセプトに普段の制作では出来ない思考を刺激された。
重視したのは、
*オンラインでしか、実現出来ない何か
*コロナで外出規制がかかる今、必要な何か
*世界全体が大きく変化する今、必要な何か
これを踏まえ、いくつかのアイディアが浮かんだ。
ひとつは、
"抽象絵画でしか出来ない何か"
初期の抽象絵画を使った実験作品案に辿り着いた。
仮に名付けたプロジェクトは
絵画×音楽=「絵画音楽」
2017年、私が企画した実験的なキュレーション展示「デジタルアウトサイダー」がソウルのギャラリーINDI ART-HALL GONG
で行われた。
デジタルPaintingを主体に日韓4名のメディアアーティストのライブパフォーマンスを、同時にクロスさせる実験的メディアアートライブ展示 だった。
写真は韓国公演時のもの。日韓共同のキュレーションプログラムとして展示。
日本は/Nagano、竹内知、韓国はYi Donghoon、Goyona Jungが参加。
Digital outsiderFacebook公式リンク
Digital outsiderについては別の機会に寄稿するとして、偶然だが同展示の前に日韓の音楽家とメディアアーティストのコラボレーションライブが、ギャラリーで開催され観客として観る機会があった。
そこに参加していたのが音楽家のduennさん。
duenn
アンビエントやノイズミュージックを国内外で発表し、元スーパーカーの中村弘二とハードコアアンビエントでも活動中のミュージシャン。
https://twitter.com/duennjp?s=09
会場では少し会話する程度だったが彼のライブパフォーマンスは、ノイズの河を漂う様な印象深い体験だった。
会場で頂いたCDを自宅で聞いて「都会の水墨画」的な音響世界に心地良さを感じ、制作中もたまに聴くようになった。
彼から私の初期のモノトーンの抽象絵画が好みだと聞いて、いつかコラボレーション出来たらと頭の片隅にあった記憶が蘇った。
今なら新しい「絵画音楽」が創れる予感がある。
今、世界が急激に閉じて、何かをじっと待つような日々が過ぎている。
元に戻って欲しいという気持ち以上に、世界が急激に変わっていく感覚。
ONE light
W65×H91.5cm 2016 TARTAROS JAPAN
4年前にモノトーンの抽象絵画を描く時に感じていた予感と似ていると思った。
世界が終わり、再起動する予感。
今それが動き出している。
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