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本を地図に旅したい

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書評というより、本を読んで自分の生活や考えが具体的にどう変わったか、みたいなことを書こうと思っています。
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2014年4月の記事一覧

自分が食べているものについて知ることは、自分について知るようなもの

『知ろう 食べよう 世界の米』という本を読んだ。イネを研究する著者が、イネのルーツから、それがどのように世界に広がり、どのように栽培され、どのように食べられているかを、ジュニア向けにわかりやすくまとめた本だ。

食べもののなかで何が好きかと聞かれたら、米が好きだ。米がなければ始まらないし、実際たくさん食べている。今でも1食で1合くらいは食べたい感じだ。

それだけの量を毎日食べている米について、こ

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自然栽培は生物学的におもしろそうだ

『木村秋則と自然栽培の世界』という本を読んだ。

木村秋則さんの農法をひとことで言えば、土中の微生物の力を生かすということだろう。これは木村さんが提唱している「自然栽培」(何もしないのではなく、積極的に働きかける農法)でも、より自然に任せる「自然農法」でも同じ考え方だと思う。

そして、こういう農法がなんとなく怪しげに思われたりするのは、微生物の種類や働きがまだ完全には科学的に解明されていないから

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書くことは、考えること

『はじめて考えるときのように』という本を読んだ。考えるとはどういうことだろう? という問いが、この本のテーマだ。

哲学者である著者の野矢さんによると、まず、考えるためには問題がなければならないという。問題を抱えて、その答えやヒントがないか探すこと。能動的に探していなくても、その答えからの声に耳を澄ませていること。これが考えているという状態なのである。

なるほどなあと思う。ふとしたときに、なにか

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「受け手に情報を正確に伝え、目的となるアクションを促すこと」

仕事で印刷物やWebの制作に関わっているのだけど、最近、全体をディレクションする役割の必要性を感じてきた。そこでデザインについても、もっと知りたいと思って、『やさしいデザインの教科書』という本を読んでみた。

グラフィックデザインの基本的なセオリーが、読みやすいながらロジカルに書かれていて、ためになる本だった。デザイン技術の全体像がわかるという意味でも、この本を読んでよかったと思う。自分としては細

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今読んでもすごく面白い150年前の紀行文

『マレー諸島―オランウータンと極楽鳥の土地』という本を読んだ。ダーウィンと同じ時代に活躍した博物学者ウォーレスによる、マレー諸島の調査探検紀行だ。

マレー諸島とは、今でいう東南アジアあたりのマレーシア、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニアなどの島々のことで、この本を読むと、1850〜60年ごろのその地域の様子がよくわかる。今度ボルネオに旅行に行くにあたって読んでみたら、とても面白い本だっ

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ほんとの意味でクリエイティブな調査

まったく知らなかったけど、徳島県の海部町は全国でも有数の自殺率の低い町だそうだ。『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』という本を読んで、そのことを知った。

大学院で研究をしている著者の岡さんは、海部町に住み込み、住民から聞き取りを始める。そして、同じような環境なのに自殺率が高い近隣の町と比較したり、全国の土地データから自殺率の低い場所に共通する特徴があるかどうかも調査する。

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リスクとは「不確かさ」のこと

『15歳からのファイナンス理論入門』をいう本を読んだ。

この本の著者の慎さんは、社会貢献のためにまずお金の理論を学ぼうと思ったそうだ。この本を手に取ったのは、そのあたりにピンと来たからかもしれない。お金の仕組みには何か根源的なものがありそうだし、単なる交換のためのツール以上の何かなのだという気がしている。

現実に今の世の中にはお金があり、それで世の中のある部分(大部分?)が回っている。生きてい

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大量の木材がコンクリート建築に使われていたとは

ボルネオの木材の伐採に、日本が大きく関係していることが衝撃的だった。

いや、ボルネオといえば、熱帯雨林の減少が問題になっている、と何となく耳にしていた。でも、それがどれくらいの規模で、どのようなやり方で行われ、どんな影響を与えているのか、詳しくは知らなかった。自分と関係のない話というか、マレーシアが外貨を稼ぐためにやっているのだろう、くらいの漠然としたイメージしか持っていなかった。

でも、『先

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才能は集積したがる

将来どこに住むかということが、同居人との間でテーマになっている。同居人は早く落ち着いて、腰を据えて住める場所を探していて、先日京都に行ったときは「やっぱり京都かな」と言っていた。その気持ちはわかる。田舎暮らしもいいけど、やっぱり文化のあるところに住みたいと自分も思うからだ。

最近読んだのは『クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める』という本で、原題が「Who’s Your City

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時代の空気を作る人

『土屋耕一のことばの遊び場。』という2冊組の本のうちの1冊、『ことばの遊びと考え』という本を読んだ。2009年に亡くなったコピーライターの土屋耕一さんのこれまでの著作のなかから、糸井重里さんが文章を選んで再編集した本だ。

最近コピーライティングについて考えるようになったので、刺激になったというか、参考になった。

とくに、ひらめきはいきなり大きなものが得られるのではなく、情報を整理して小さなステ

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日本では最近まで禁欲的食事観があった

『世界の食べもの――食の文化地理』という本を読んだ。民俗学者の石毛直道さんが、世界の食文化について書いた本。最近は食べものについて興味が出てきていることもあって、おもしろく読んだ。

でも、10年前の自分が読んでおもしろかったかというと、よくわからない。外国を旅行して、食べものについての本も少し読んで、同居人がいろいろな料理を作るのを見ている今だからこそ、興味深く感じられるのだろうと思う。

読み

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日本と朝鮮半島をつなぐ旅

昨年から夏のお盆休みの数日間、長崎県の島(実際は福岡県に近いけど)壱岐に滞在している。

壱岐は海がきれいではあるけれど、沖縄など南の島に比べたら地味で、とくにユニークな文化があるわけではない。そんな印象を持っていた。実際、滞在している家の庭仕事をして、たまに釣りに行って釣れた魚を食べて過ごすだけで十分満足している。

でも、せっかくなので、この島について書かれたものを読んでみようと思って、『街道

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オリーブオイルの産地を旅したくなる

『エキストラバージンの嘘と真実』という本がおもしろかった。タイトルは不正を暴くというような感じだけど、中身は「オリーブをめぐる旅」といった趣きで、紀行文のように楽しめる。装丁もおしゃれで、イタリアやギリシャなど、オリーブの産地を訪ねて旅したような気分になった。

作者はイタリア在住のジャーナリスト。オリーブオイルのエクストラバージンといえば、最高品質を指す言葉だったけど、今ではマーケティング用語に

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