才能は集積したがる
将来どこに住むかということが、同居人との間でテーマになっている。同居人は早く落ち着いて、腰を据えて住める場所を探していて、先日京都に行ったときは「やっぱり京都かな」と言っていた。その気持ちはわかる。田舎暮らしもいいけど、やっぱり文化のあるところに住みたいと自分も思うからだ。
最近読んだのは『クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める』という本で、原題が「Who’s Your City?」。つまり、「あなたの都市は誰?」という感じの意味で、住むべき都市を、結婚する相手やパートナーに例えている。誰と何をするかは重要だけど、どこでやるかはもっと重要だ、とトロント大学の教授である著者は言っている。
「ゲイの住人が増えている場所は発展する」というのが著者の持論で、つまり寛容で開放性のある街にはクリエイティブな人材が集まってきて、発展するということらしい。近年はインターネットを使ってどこでも仕事ができるようになってきており、その結果、人は分散して暮らすかと思いきや、逆に、特定の場所に集まってくる傾向がある。ハイテク産業が集まるシリコンバレーや、芸術や金融が有名なニューヨークなどが、その例だ。
そのような知識が集まりイノベーションが起こる「メガ地帯」と呼ばれる場所が、世界でいくつも出現している。
そのランキングのトップが、なんと日本の東京だという。「大阪ー名古屋圏」も世界で5位に入っている。
大阪と名古屋の間って、山があったり、湖があったり、田園地帯だったりで、少なくとも都市という感じじゃないけどなあと思いつつ、さらに読むと、「東京から九州にいたるまで広大なメガ地帯になりつつあり、もう日本全体が1つのメガ地帯だと言ってもいい」みたいなことを書いていて、それはちょっと大雑把すぎるだろう、と思ってしまった。こっちは関西の中でどこに住むかという問題を考えているのに、日本ならどこでも同じと言っているようなものだからだ。まあアメリカから見ると、そう見えるのかもしれない。
それはいいとして、才能は集積したがるというのは、わかる気がした。著者によると、企業がわざわざ地価の高いエリアに移ってくる理由は、そこで得られる才能や、資源の集中によるメリットが大きいと判断しているからだという。
ビジネス視点の見方はさておき、一人の住民として考えてみても、なんとなく感覚の合う場所があるというのはわかる。それは自然環境が体に合い、街の美的感覚も好ましく、住んでいる人との相性も良さそうで、そこにいると自分の人生が充実して能力も高まりそうな場所だ。
もちろん最終的には住んでみないとわからないけど、何かしら予感はあるはずで、そういう嗅覚に優れているのが、芸術家であったり、ゲイの人であったりするのだろう。ここは何かいいなあと思える場所に出会って、そこで暮らせるというのが、現代の理想的な暮らし方なのかもしれない。
『クリエイティブ都市論』
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