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ASD、受験当日も登校して教師をびっくりさせた話。
2月25日。
わかる方にはわかると思います。
受験の日です。
志望する、国公立大学の前期日程、というやつです。
志望する国公立大学に直接赴くので、人によっては前日は移動日、前泊なんて普通にありえる話です。
例えば、地方にいる私が東京大学に出願していた場合、東京までの移動とホテルの確保、会場までの道の確認など、することがたくさんあります。
今回は、リアルな私の受験当日のお話をさせていただきます。
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先にバックグラウンドから。
県内で一番の進学校で高校時代を過ごした私。
高校入学の時点で勉強に集中できない悩みを持っていましたので、
「高3をどんなふうに迎えようと知ったこっちゃないっ!」がスタート地点です。
正直に申し上げますと、高3になって、【願書出願】なるイベントがやってきて、つまり11月・12月ごろようやく、
勉強できないなりにも勉強なるものをしなくてはいけない!
と自覚しました…
○○大学に絶対行きたいっ!
とか、もちろんなく、ただ大学生になるために、私立は幅広く、とりあえず受けて…をこなしました。(けっこうしんどかった。)
でもうちは超進学校、なぜか「アンチ私立」の風潮があって、
よっぽど「名門私立に入りたいんです!!!」の熱量を伝えない限り、
「はい、国公立をうけましょうね」。(流れが自然すぎる。)
ってなわけで、この私でも国公立大学を、2月25日に、受験しました!
地元です。
得意科目はないけど、数学は壊滅状態だったので、
数学のない、文系の学科に出願しました。
出願して、ひとつ、困ったことが判明しました。
→前泊とか? いいえ。地元なので日帰り可能です。
→道順? いいえ。なんなら1次試験会場と同じでした。
正解は…
試験時間が午後だったこと!
1次試験は朝早くからだったので、(この時はまだ知る由もない)ASDの特性上、超早起きスタイルになっていました。
試験会場に早く着きすぎても、入れるわけがありません。
自宅を、10時ごろの出発で、昼食をとって…が理想です。
当時の私のASDルーティンは、「6時起床、8:30に登校する」でした。
自習室で9時から1教科目に着手して…で日々を過ごす練習をしていました。
練習と違うじゃん…!!
午前中、時間が余って仕方ない…
自然と、答えはおりてきました。
そうだ、8:30に、自習室に行こう。
いつもの時間に起きて。
いつもの大荷物をセットごと持って。
いつもの時間に家を出て。
いつもの電車に、いつものドアから乗って。
いつもの最寄り駅まで単語帳を持って。(毎週テストだったから)
1,2年生は登校しているので、特に緊張することもなく。
だけど、びっくりはしました。
3年の、昇降口の、扉が、あかない。
どうしよう?
それは一瞬のこと。
1か所だけ、鍵が外されていたからです。
そりゃあ、普段は開いている扉を自分で押す必要があったけど。
扉は、つめたかった。
そして、3年の下駄箱の空気は、しーんと、でもなぜか心地よかった。
ひとり、ローファーからクロックスに履き替えます。
そんなことしてるの、私だけ。
そんなつめたい扉あけるの、学年で私だけ。
25日に、そんなこと実行するの、私だけ。
この校舎、すきだな。いつもせわしないのに、今日は静かだけど見守ってくれてる感、なんだろう。
でも次にはさすがにひるみました。
廊下、電気ひとつ、ついていない。
あいにく、空は曇天だった。よく覚えています。
自習室までの廊下が長く感じます。
もちろん、だれもいない。
いつもの席、前から2列目の、一番窓側に座り、
それから迷って、窓側だけ、電気をつけることにします。
ここまでが8:30ごろまでの出来事。
9時から、一応、覚えていない古語をぺらぺらとめくってみたり。
受験当日にできることってそんなこと。
ガッツリ今から取り組んでは、本番ガス切れです。
9:30。超早い昼食をとりましょう。
いつもの弁当箱。量は同じ。
そしたら、タッタッタ、タッタッタ。の足音が盛大に響き渡って…
やばい、だれかと、あう…
もちろん、生徒ではありません。
世界史の先生でした。語尾がいつも「~のう」が特徴の、おじさん先生。
身構えました。あえて、ちゃんと目を合わします。(普段はそんなことしない。)
なに、いわれるんだろう…?
「…、びっくりしたああ!! …さむくないんか?」
「え?」箸を持ちながら、うまく返せません。
そのまま去って行ったと思ったら、5分もたたずして、自習室が「ごぉ~」と言い出しました。
おっちゃん先生、職員室から暖房のボタンを「ON」にしてくれたのです!
なんてやさしい…
普段は「まだまだやのう!」とか言っているから余計に。
そんな私は、早い昼食を終え、10時前。
これはせねばいかんだろう。
「失礼します。」
誰にともなく、職員室全体に言います。
蛍光灯が全開で、まぶしかったです。
それと同時に視線も感じます。
「あの、暖房、ありがとうございました!」
「行ってきます!」
扉を閉める。
退出時の「失礼しました」ではなく、「行ってきます!」
担任も、保体の先生も、数学も国語の先生も、みんな、
「行ってらっしゃいっ!」
そう送り出してくれました。
改めて、いつも思いますが、こんな幸せな受験生、他にいないと思います。
もちろん同じ学科を受けた子がいて、
現地で会い、「午前中寝てた~」と言われたけど「そうなんや~」と返しておきました。
学校の歴代エピソードに名を遺した気がするけど、いろんな人の支援があって乗り越えてこられたこと、それを感謝する気持ちは忘れたくありません。
みんながいるから私でいられる。
そういう解釈に今ではなりつつある、のでありました。