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第8回:超限定的秘密クラブが流行る話

ネットで自分の名前を検索すると、SNSでの情報やら、それまでにWebの記事等々で取り上げられた情報やら、ちらほら表示される経験ってありますかね。ネット上には自身の情報が意図するものから意図しないものから転がっています。GoogleはWebの閲覧履歴を持ってるだろうし、どこに行き、どうやって移動したかを地図情報から判定できるでしょう。Amazonは購入履歴を、LINEは会話の履歴を。世の中にあるデータのすべてをどうにか辿れば、自身の生活の大半が把握されるといっても過言じゃないんでしょうね。第7回:ゲシュタルト崩壊の話に続く第8回は、そんなオンラインの便利さうらはら、ありそうでなさそうで、きっとある話。

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玉坂(以下、玉):ねえラマ王。
ラマ男(以下、ラ):はい王です。

玉:エゴサってしたことある?
ラ:しないよそんなの。
玉:せーへんねや。
ラ:玉ちゃんはするの?
玉:するよ。ほんで、結構するよ。さっきもやってた。

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ラ:やめやめやめ。エゴサって自分の名前でやるもんだから!
玉:そうなんかな。雑談力向上委員会の副委員長として、王の名がどれほど世に轟いてるかと、一応知っておこうと思いまして。
ラ:ありがとうございます(棒読み)
玉:拡張型自意識過剰。
ラ:ほんでラマ男、5位のダライ・ラマより上に来てる。
玉:検索ワードにラマ「男」って、高僧には不要な「男」が入っとるからな。
ラ:しれっと人の名前ディスってくるね。
玉:一位のこれは、ラマ王?
ラ:ボク、LINEスタンプ作ったことない。

玉:おお、ならばライバルやな。このLINEスタンプの人。あとダライ・ラマ。
ラ:いや、ダライ・ラマは戦わないよ。
玉:ご飯とか食べなくなったら困るからね。
ラ:ハンガーストライキ。
玉:当面の目標はLINEスタンプのラマ男超えやな。応援するわ。
ラ:よし!スタンプ作るか!!おちゃめなの。
玉:パクリやな。
ラ:言い草!!まぁよい。で、玉ちゃん自分のエゴサは?

玉:したよ。ラマ王もやってみるといい。ほんのちょっとだけ自意識を拡張して。
ラ:「玉坂」
玉:はい、検索。

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ラ:なに、この「玉坂みやこ」さん。父方の親戚かなんか?
玉:いややわ、午後の名作ドラマの人と血縁。
ラ:玉ちゃん、頑張らないとね。まだまだ世の中的には”副委員長の玉坂”はゼロじゃんか。
玉:せやな。コツコツ積み上げて、玉坂みやこにも、玉坂マコトにも勝てるように頑張る。

ラ:真面目だな。
玉:ほんとは不真面目を売りにしたいタイプやけどな。本質は真面目やなーって、自分でもたまに思う。
ラ:風体は不真面目そのものなのだけど。
玉:それはそれでうるさいよ。でさ、真面目やからこそ気付いたんかもやけどさ。
ラ:うん。
玉:ネットでいろいろ創作したりなんだったりしてたら、検索結果として情報が残るのは当然というか、その仕組みは分かり得て当然なんだけども。
ラ:そうね。むしろ意図的に残しているというか。
玉:スマホ持って行動してたら、意図せん情報とか例えば位置情報なんかもとかもバンバンGoogleに送って、それが履歴として残るやんね。
ラ:と、言うと?
玉:いや、シンプルにさ、高円寺行って「ランチ 寿司」とかで検索したら、別に場所とか入れなくても、高円寺のいい感じの寿司屋出てくるし、Googleに位置情報送ってるからこそ、そういうことできるんやろうなって話。
ラ:ああ、はいはい。そういうことね。設定によるけどな、Googleにはバレてるね、場所。完全に。
玉:そう。ほんで、LINEやったらさ、送ったメッセージ寄せ集めて自分の趣味趣向やら、思考やらをAIで解析したら、一発で自分の属性ってわかると思うんだよね。データとして溜まってる訳やから。
ラ:プライバシー的なものが凄いことに。まー、やってるのか。
玉:ほら。
https://line.me/ja/terms/policy/
4.パーソナルデータの利用目的
「研究・開発に役立てたり、広告も含めよりお客様に関連性の強いサービスを提供するためにパーソナルデータを利用します」
って書いてるやろ。
ラ:また真面目っ!!
玉:もうごりごりに利用しますって、いうてるからね。
ラ:パーソナル許した覚えはない!
玉:書いてるし。
ラ:とほほ。いざ目の当たりに調べると怖くなってくるね…。

玉:知らぬが仏よね、ほんと。でさ、LINEはさておいて、もっと言うとさ、商店街とか歩いてたらわかると思うんだけど、そこかしこにカメラ付いてるって知ってた?これは犯罪の抑止であったり、有事の際のエビデンスのためになんやろうけど。要は、オフラインであっても自分の情報っておおむね残ってるんだよね。
ラ:また推してくるやん、高円寺純情商店街。
玉:いや、一言も高円寺限定って言うてないからな。
ラ:純情の延長を踏みにじられた感じっ!でもまあ、監視カメラなー、よく見るね。街中のそこかしこ。
玉:でしょ。今の例だけでも、
・Google
・LINE
・商店街のカメラ
これだけの情報があれば、その人の”人となり”ってほっとんどわかるやんね。
ラ:怖しみずイワオだよ、ほんと。

玉:誰やねん。でさ、もっと言うと、Amazonなんかのネットショップの購入履歴を全部かき集めたらその人の購入遍歴を辿り放題よ。
ラ:女子にiphone見せてたら下手に履歴の連携されてて「あなたへのオススメ」にラブグッズ出るとかどんな罰よアマゾネス。顔面蒼白に賛成票多数、ウェイヨー!
玉:パーソナルコンピューターってそういうこと!?ってなるよね。
ラ:パーソナルの解釈な。
玉:もっともっと言うと。Facebookやっていいね押せばいいね押すほどその人の趣味趣向は分かるやろうし。
ラ:あー。Facebookは某大統領選でも集票にめっちゃ利用されたって聞いた。
玉:そうそう。それこそ「トランプ Facebook いいね AI」とかで検索したらごりごりにうなるほど出てくるわ。あることないこと、都市伝説から事実やろうことからなにやら。
ラ:ロシアの介入とかね。
玉:そうね。ロシアが介入したかどうかってのは知ったとて、あんまどうにもならんけども、Facebookのいいね情報からその人となりがわかってものすごく有用なマーケティングデータになりうるって知識は今後を生き抜く知識として活かせるよね。
ラ:話がとてつもなくデカい気がするけど、よく考えると身近だね、それ。
玉:身近やんね。高円寺で寿司食べたらGoogleにばれるし。さっきのLINEも、Amazonも。ほんでFacebookも。
ラ:ん。
玉:高円寺で寿司食べる人は選挙に行く傾向があるって属性を判定できたら、立候補者は選挙期間中その属性に集中してアプローチするやろってこと。
ラ:芸人かぶれって高円寺推しがちだよね。
玉:唐突!あと下北な。悲しい、笑いの一つもとれない芸人かぶれ。
ラ:まーでもさ、高円寺も寿司も、それを検索するって行為も、その辺全部含めてインフラだもんね、もはや。水と一緒。「汚染水流れてたらどうしよ?」みたのは怯えすぎってのと同じで「位置情報バレるの怖いし」って言っても意味ないレベルというか。

玉:そうね。もう人としての属性情報がどこかに流れることありきで世の中が成立してる。で、そういう諸情報を集めて、その人の属性をランク付けするような文化がずんずんと育ってきている。
ラ:出た。SF好きの横顔。
玉:SFちゃうし。ごりごりのノンフィクションやし。
ラ:ほう。
玉:ちょっと毛色ちゃうかもやけど、Uberの配達員かって、購入者の評価次第でたぶん給料も変わるとかちゃうかったっけ。
ラ:あー、確かに。なんかありそう。星の低い配達の人来られてもちょっと嫌よね。評価をインセンティブにしてるかも。
玉:やろ。noteだって「スキ」が多い記事やったり、閲覧者さんの興味関心に引っかかる記事が上にあがるようにできてるんちゃうか。たぶんやけど。
ラ:めっちゃ身近。そうね、その通りだわ。スキください!!
玉:もはやノンフィクションやろ。評価が付けられて、その結果で生活の諸々が決まってくる。それの応用よね。日々の行動がデータ化されて、それによって評価されて、お金借りやすくなったり、就活やら不動産購入にも有利やったりするっていう。
ラ:そこまでいく?
玉:行くやろ、普通に。

ラ:そんなん、だんだんみんな怖くなってネットから離れて行きそう。
玉:いや、たぶんさ、突き詰めるとその逆でさ、自分の行動が正当に評価されて、何か恩恵を受けられるなら、評価が上がるような行動ばっかりとるような人も増えてくると思うんよね。
ラ:うわ。媚びへつらい。”お代官様に袖の下”的な感じ。
玉:そうそう。内申点あがるようにボランティア活動する大学生時代のラマ王みたいなもんで。
ラ:お主も悪よのう。じゃなくて!誰が下心で!聞き逃すまい!
玉:レイティング下がるで、そんなん言うたら。
ラ:わー。もう従ってるじゃん。こわー。
玉:いずれにせよ、ネットありきの世界からは不可逆やで。それが人生レベルでの行動指針になる。
ラ:勘弁してよ。中世なら「王に従う」「国家に従う」でいいけどさ、レイティングって何に従うのよ?
玉:民主主義は民主主義やし、従うとかはないやろうけども。強いて言うならAIの判定やろ。レイティング至上主義やね。
ラ:何したらプラス、何言ったらマイナス…をAIが判定するとかめっちゃ怖いじゃん。てゆーか、一揆だそんなの!冗談じゃない。反乱反乱!!
玉:「冗談じゃない」って気持ちには半分同意やな。
ラ:なにバファリンみたいなこと言って!!
玉:落ち着いてよ。冷静に考えたらさ、いいと思うことをやって、悪いと思うことをやらんということには変わりはないんちゃうかってなるから。
ラ:いちいち「これしたらレイティング下がるかしら」とか考えて行動するんでしょ?それがやだなんだよ!そんなの、ほらそんなの関係ねぇ、そんなの関係ねぇ、はい、オッパッピー!って生きたいの!
玉:だから、わからんでもないって。落ち着いてって。はじめは違和感あるかもなって思うよ。でもさ、それがだんだん普通になるんちゃうか。ちょっと前やったらネットに自分の写真やら名前やらが載ることに躊躇してた層も今じゃ全然オッパッピーだし。
ラ:やめて!よしおちゃんのそういう使い方!!
玉:よしおは自分が先に言い出したんやろが。

ラ:なんかすべてが変わってしまいそうだよね。
玉:ルールは変わらないし、おんなじよ。でも判断するのが人からAIになるって感じ。そこは変わる。
ラ:ルールが変わらん?
玉:そうよ。今は、憲法があって、それに基づいて法律やら条例があって。それはそのまま。
ラ:うん。
玉:それに違反した人を裁くんでしょ、恣意的な検事やら、裁判官やら、賄賂貰って嘘つくような政治家やら、忖度しまくる官僚が。そういうあやふやな人為がテクノロジーの発展に伴ってAIになるんちゃいまっかって言うてるの。
ラ:余計しまくるよ忖度。しかもいるかいないかわからないレイティングの神への。
玉:裁かれる者が忖度するんは今も昔も、これからも変わらんやろ。裁く人が忖度して、人によってOKな場合があったりNGな場合があったりっていうのが今はあるけれど、AIやらレイティングの精度が高くなれば、そういう、えこひいきみたいのがなくなるよねって話ね。
ラ:なんかAIそのものが嫌なんかもな。アレルギーみたいなもんで全部反発したくなるわ。

玉:AIやらなんやらは、法に則って運用される。
ラ:うん。なんと言われても猛烈に嫌だけどね。
玉:うん。なんせね、基本的には今とは変わらん。
ラ:たしかに今も、AIの時代も、ルールには反しないように動く。それはいいよ。わかったよ。でもさ、今だったら「あー、旦那がいるけど、恋したいよー」なんて2chに書いても誰からも文句言われないし、そんなnoteがあるから愉快な文化が成り立っているけれど、レイティング忖度して言わなくなるんだったら、なんというか「表現の自由」がないっていうか。
玉:うむ。
ラ:そういうこと以前に、自分が自分として思ってることっていうのがなくなる気がするんだよ。キッチリしたAIのせいで、自分の意志をレイティングの高評価に寄せる生き様になるから嫌だってこと。
玉:そうね。怖い世の中やと思うわ。戦前の検閲を人じゃなくてがちがちのAIがやる訳やからな。いつでも、どこでも。オンラインのおくびがあるところではすべて。そういう世界は、玉ちゃんもあんまり好かん。
ラ:周りの人が本当は何考えてるか疑心暗鬼〜。それにさ、誰も聖人君子なわけじゃないし、むしろそうじゃないから面白いみたいなところあるし。
玉:ちょっとくらい、おいたしたいわな。
ラ:真面目だけの世界なんて、本音を押し隠した世界なんて、ボク嫌だ。
玉:たしかにな。

ラ:そしたら結婚とかどうなるんでしょうか博士。レイティングいくつ以上の人限定の婚活パーティーです、みたいな?★低い人はダメですーってなるのかしら。
玉:なるんちゃうかなって思うてるよ。その反面さ、思いっきりレイティングの埒外の文化も育つんやろうなって思うている。
ラ:アウト・オブ・ラチ。
玉:レイティングとまったく関係のないコミュニティ。行っても履歴に残らない。入場記録も取られない。どこで開催されるかも一般人にはわからない。
ラ:え?玉ちゃんさっき「世界が全部レイティングされます」「監視カメラもFacebookもあるんでどこ行ってもレイティングからは逃れられません!」みたいなことって言ってなかった?
玉:言ってたよ。
ラ:どこにそんな秘密のコミュニティなんかできるよ?矛盾してるじゃん。
玉:人はそんなに馬鹿じゃないし、人の欲は底が知れないからね。どうにか生み出すんじゃないでしょうか。

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ラ:ほう。監視の網の目をかい潜ったコミュニティ。超、限定的…。
玉:右下のやつね。
ラ:レイティング後の世界の”見取り図”だね、これ。あれ、53万って真ん中のちょい右うえにフリーザおる?

玉:はいはい!じかんじかん!!こちとら時間給でやらせてもろてますから!
ラ:まて。フリーザの余韻をこんなとこに残したらだめ!全人類が消されちゃうじゃんか!!あと右下の説明まだ2ミリ!もっとして!
玉:戦闘力とレイティングって似てるなーって思うたわ。スカウターできるんちゃうかマジで。
ラ:お。いいアナロジー。じゃなくて、もうちょっとどんな秘密クラブが流行りそうかとか聞きたかったのにー。
玉:このドスケベが!!!
ラ:怒り方がっ!
玉:はい。では、ラマ王の力で今日のまとめやってみて。

【今日のまとめ】

■議題
超限定的秘密クラブが流行ることについて

■採決
どんな時代も人間の欲望は限りがないぜ。例えレイティングのイカツイ奴が現れようとも、埒外で楽しむクラバーの方が魅力的じゃない?そういうこと。別にドスケベでもいいじゃんね。はい、オッパッピー!

90点

ラ:レイティング爆上げ。
玉:ありがとうございました。
ラ:よっしゃ。これで★4.3以上の婚活パーティー出られるわ。行きたかったんだよなぁあれ…。

#解説
レイティング社会が刻々と近づいている。中国のそれは、レイティングが高ければ金利の優遇を受けられたり、良い不動産を手に入れられたり、結婚相手が見つかりやすかったりするだとか。テクノロジーの進化によって、レイティング至上主義ともいえる世の中が形成されるのかもしれない。反面、履歴も評価も、なんやったら記憶でさえも残らない、そういうコミュニティが生まれるのかなって。自由気ままにAIとは離れ切った人としての根源を表現できる場。超限定的秘密クラブ。そういう妄想にわたしは一票。

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玉坂
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