クローン病、潰瘍性大腸炎のマスコミ報道で困っていること【難病患者への偏見を生まないために】
クローン病、潰瘍性大腸炎のマスコミの報道のされ方に思っていることがあります。
マイクロアグレッションがなされているのではないかということです。
「マイクロアグレッション」とは、無意識の偏見や思い込みが言葉や態度に現れ、否定的なメッセージとなって伝わり意図せず誰かを傷つけてしまうことを言います。
「誰かを叩く」ために、クローン病、潰瘍性大腸炎の病気の特性を利用しているのではないか。
クローン病、潰瘍性大腸炎の誤解を招く報道をしていないでしょうか?
典型的なものが安倍元首相の政治姿勢や皇室のインフリキシマブ購入の報道などです。
クローン病・潰瘍性大腸炎の病気の特性を「下痢ピー」だの「サボり」だの、と。
大手新聞社のみならず、一部の政治家でもこのように病気を蔑む表現が見受けられます。
クローン病、潰瘍性大腸炎の特性を利用したマスコミの「言われなき批判」に難病患者は心を痛めています。
僕自身、病気の特性を歪めて伝えられていることにうんざりし、炎症性腸疾患に関するマスコミの報道は信用が置けず見なくなりました。
難病患者を都合のいいときだけ利用し、「誰か」を叩くために、「病気」をねじ曲げる。正確に情報を伝えない。
人の不幸を見世物のように同情したフリをするくせに、気に入らない人物が現れるとその不幸を笑いものにする。
難病患者は好奇のパンダではありません。
マスコミの報道がクローン病や潰瘍性大腸炎に対して偏見を生んでいる一因となっています。
後述しますが、僕もマスコミの報道のせいで過去に嫌な思いをしたことがありました。
もしメディア関係者がこのブログを読んでくれているなら、この問題を心の片隅に留め置いてもらえるとありがたいと思います。
「水俣病」と「海」
僕の祖父母の家は熊本県にありました。
母方の親族はみんな水俣病です。
僕がこの事実を知ったのは祖父が亡くなった後の30歳くらいの時。
子供の頃はいじめられっ子で学校へ行くのが嫌いでした。
だから、夏休みの間ずっと熊本にいることが辛い現実を忘れられる瞬間でした。
祖父母の家の縁側からは、遮るものがなく地平線まで海が見えました。
友達がいなかった僕はひとり縁側に足を投げ出して座って、陽の光に反射したキラキラと輝く海をずっと眺めているのが好きでした。
その時間が癒やしでした。
子供の頃は八代海で悲劇があったなんて、あまり深く考えなかった。
よく考えればわかったことなのに、どこか絵空事で社会科の教科書の中だけの出来事だと思っていました。
祖父母も水俣病の話なんて一切しなかった。
今、思えば、伝えないでいてくれたのは、祖父母の優しさだったんだと思います。
昔から鈍くさくて何も取り柄のない子だったから、東京の学校で「いじめられっ子」だということも言葉にしなくても気付いていたんでしょうね。
ただでさえ心を閉じがちな孫に重荷を背負わせたくなかった。
自分たちの悲しい記憶より孫が楽しく前を向いて生きて欲しいということを願ったんだと思います。
そのために、僕の好きな海の記憶も綺麗なままで守ってくれたんでしょう。
僕は祖父が亡くなった後に、水俣病を知らなかったことを恥じて「苦海浄土」を読んだり、ユージンスミスさんの写真など見て、最低限のことは調べてみました。
水俣病のことを知ると、子供の頃の想い出に悲しみの色が帯びていきました。
祖母が洗濯物を干してる最中に田んぼに落ちて泥んこになったり。
海に岩牡蠣をとりにいって、海に落ちてびしょ濡れになって帰ってきたり。
「ばーちゃん、ドジだなー」「ドジだねー」なんて笑っていましたが、今になって振り返ると目が見えづらいだけでなく、水俣病の症状で運動障害や感覚障害があったのだとわかります。
僕も弱視だったり、運動が苦手なんですが、これはメチル水銀によってかけられた血筋の呪いのようなものなんでしょう。
それでも。
祖父母は水俣病の泣き言や恨み言を一切口にしませんでした。
「優しさ」の裏には「強さ」が必要ということは、祖父母に教えてもらった気がします。
ですから。
「怒り、悲しみ」を訴えるより、僕は「喜び、楽しさ」を伝えられる社会保険労務士になりたい。
ボクが経験した2つの偏見
僕も他人からのクローン病に対する思い込みで嫌な思いをしたことが2回ありました。
就職したときの上司と創業ステーションのコンサルタントです。
(※この偏見に対し、創業ステーションには適切に対処していただきました。)
1つめの偏見は、前職の就職時の上司です。
ハラスメントで同僚のパート女性と揉めに揉めた挙げ句、嫌気がさして仕事を辞めたことは以前、何回かブログに書きました。
その中で、僕の「行政書士試験合格」の経歴が虚偽であるとその女性に言われたことがありました。
普段から「障害者はバカだ」とおっしゃる方だったので、日常茶飯事と言えば、そうなのですが。
「障害者にとれる資格ではない」と言ってました。
入社時に大学の卒業証明書と行政書士試験合格証の写しは提出していたので、会社側からの疑いは一切ありませんでした。
合格が本物だと確認できた後も、「カンニングしてとった」だの、「まぐれでとった」だの、と。
カンニングとまぐれじゃ、不正のあるなしで雲泥の差なんだけど、その論理矛盾にさえ自分で気付かないような人でしたね。
(まあ、「まぐれ」は、そうなのかもしれません。)
ですから、僕も。
「障害者のバカでもできるようなことなんだから、なんで健康なアナタはできないの?」と言い返したことがありました。
そうしたら、上司から大叱責。
「あなたは恵まれてる人だ。恵まれていない人の気持ちがわかっていない。
アントワネットのようだ。」
「クローン病や潰瘍性大腸炎は、安倍首相のような金持ちの人がなる病気だ。」
「彼女は孤独でお金もない人なんだ。
あなたは恵まれた人なんだから、何を言われても耐えなきゃいけない。」
「障害者らしくしないのがいけない。
あなたは障害者に見えない。支援はいらない。」
まったく納得できませんでした。今でも理解ができません。
普段から安倍首相の政治姿勢を批判している上司でした。
だから、彼の本音がこぼれただけだったのかもしれません。
僕自身、お金がある家庭で育ったわけでなく、社労士試験の勉強さえも独学で行わなければならないほどの生活保護ギリギリの経済状態ですし、水俣病2世であることを含めて生い立ちや環境が恵まれてるとは思えません。
ましてや政治なんてどうだっていい。
なぜ、好きで罹患したわけでもないクローン病で、このような無関係のことを言われなければならないのでしょうか?
2つめの偏見です。
僕は社会保険労務士試験に合格してから、経営のことはまったくわかりませんでした。
そこで、TOKYO創業ステーションに通いました。
その時の、コンサルタントの言葉です。
実は、創業ステーションさんのはからいでコンサルタントを1回変更してもらいました。
変更前のコンサルタントは「努力」と「成功」という言葉が嫌いな人でした。
事業計画書や経営理念に「努力」や「成功」という言葉を書いてくるたびに不機嫌になっていました。
外国人のなにまさんがあーだの、ホームレスがこーだの、自民党政権がどーだの。
政治主張のお説教が多かった。
「難病の支援に特化させた事業をやりたい」というのは、最初から強い希望を持っていたので、難病と関係のない話題でのコンサルタントのダメ出しには、かなり困惑しました。
そして、難病のハンデ克服のために健康な人の何倍も努力しなければ、社会保険労務士にはなることはできなかったので、努力を嫌うコンサルタントの主張はスルーしていました。
自分が出資して起こす事業なのに、自分のものでなくなっていくような感覚もしていました。
恵まれていないのは難病患者だけじゃない。
外国人や無実の犯罪加害者の視点が抜けている。
本当の弱者をとりこぼしている。
世の中は努力できない人が弱者だ。努力は必要ない。
やはり理解できませんでした。
その中で言われた言葉です。
「安倍首相のようにぜいたく病、わがまま病で潰瘍性大腸炎になる人たちとあなたは違う特別な人なんだから、もっと高い意識を持たなきゃ。」
医療に詳しい社会的地位のある人だと聞いていたので、正直この言葉を聞いたときにはちょっとゾッとしました。
差別意識で凝り固まってるのは、どちらでしょう。
社会保障に携わる人がその程度の認識なんだ、と。
炎症性腸疾患の中で、クローン病も、潰瘍性大腸炎も、「特別な人」なんていません。
みんな難病に苦しんでいる患者です。
優劣なんかありません。
弱者は一丸とならなければならないとよく言われたのですが、弱者であっても考え方はそれぞれです。
クローン病だからといって、なぜ難病と関係のない政治主張までしなくてはいけないのでしょうか?
2つの偏見に共通するものは
僕の体験した2つの偏見の共通項をまとめてみました。
1.政治主張がリベラルの人に叩かれる
リベラル系メディアが政策でなく人格で安倍首相を叩いてきた影響だと思います。
共通してリベラルの人から叩かれます。
「下痢」で総理大臣が務まるのか、とか。
「仮病」じゃないのか、とか。
難病の症状は人それぞれなのに、大きな偏見を植え付けるような記事が散見されます。
生い立ちも、能力も、属性も、みんな違って当然のはずなのに。
リベラル系メディアによく接する人ほど、無意識に潰瘍性大腸炎のイメージが安倍さんと同じとすり込まれているように思います。
クローン病や潰瘍性大腸炎の人たちの政治主張は人それぞれです。
2.正義感が強すぎる人に叩かれる
「~すべき」という考えが強い人に多い。
何か問題があったときに必ず正解があると信じている心理が原因となっていると思います。
障害者はバカであるべき、とか。
弱者は一丸にならなきゃいけない、とか。
常に自分が考える正解と照らし合わせて、物事を判断してしまう。
でも、世の中って1つの答えがあるほど。そんなに単純じゃない。
100人いれば、100人の問があり、100人の解がある。
社会は複雑なものです。
真面目すぎたり、完璧主義な傾向のある人に多く見られる気がします。
多様性を声高に叫ぶ人ほど、自分の認める多様性以外を認められない。
自称平和主義者から攻撃的な言葉ばかり聞くのなぜでしょうね?
問疑答難を経験せず、自分の中の正解ばかり押し通すことを優先するため、周囲との軋轢を生むんじゃないでしょうか。
3.勝手な思い込みで叩かれる
僕は政治について自分から語ることはほとんどありませんでした。
選挙に行かないときだってあるくらいだから。
安倍首相の話も自分からしたことは1度もありません。
一般的に思い込みの激しい人の特徴は、固定観念が強かったり、視野が狭かったりするものです。
相手の勝手な思い込みで僕は恵まれていると言われますが、まったく恵まれているような生まれではないのは前述の通りで。
的外れの批判もいいところです。
挙げ句の果てに、お金もないのに、ぜいたく病とか。わがまま病とか。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで、安倍元首相の病気まで憎いのだろうけど、関係のない難病患者まで巻き込んでヘイトの対象にされるのは、本当に迷惑です。
これこそ「差別」だと思っています。
以上のことから、僕はリベラルと呼ばれる人たちをあまり信用しなくなりました。
平和だの多様性だの口にしながら、彼らは難病になんか理解がなく、実に滑稽だと思います。
「進歩的知識人」なんて言われたのは「昭和」のはなし。もう「令和」ですよ?
僕は政治なんて興味ないし、ただ難病患者の支援だけをやりたい。
隣に困っている人がいたら、手を差し伸べることができる存在になりたい。
水俣病の歴史を顧みると、行政はなかなか手を貸してくれない。
だから、クローン病で難病患者の気持ちがわかる自分だからこそできることがあるんじゃないかと開業することを決意しました。
それこそリベラルの人たちみたいに、政治主張で支援する人を選びたくない。
難病支援を行うに当たって、宗教に関わらないことや政治的中立を維持することは必須であると考えています。
意外と怖いアンカー効果
心理学で「アンカー効果」とは、知らないことは、最初に知った第一印象がその後も続くという現象です。
例えば、どこかの通販番組みたいに最初に商品価格を30000円と提示する。
でも、今だけ特別に10000円ですと言われたら、「安い」と思うじゃないですか。それです。
本当の売りたい価格が10000円であっても、最初に元の商品価格を30000円と意識させることによって、後の価格を安いと認識させ、お得だと錯覚させることで商品を購入させるときに使われる手法です。
10000円が本来の価格のはずなのに、30000円が判断基準の価格となってしまう。
僕はこのアンカー効果がマスコミによって行われてしまったのではないかと思っています。
潰瘍性大腸炎、クローン病は難病であり、患者数は少ないです。
この病気を知っている人も稀でした。
ところが。
潰瘍性大腸炎という病気は安倍元首相をきっかけに初めて知った人も少なくないでしょう。
そこに、政策でなく「人格攻撃」が結びつけて行われる。
「下痢ピー」「わがまま」「ぜいたく病」「仮病」「いい大人がお腹いたいいたい」など。
一般の人たちの印象はどうなるでしょうか?
潰瘍性大腸炎、クローン病のことをきちんと調べてくれる人なんてごくごく稀です。
多くの人たちの潰瘍性大腸炎の印象が人格攻撃のイメージに結びついたまま。
マスコミの方々には、情報を訂正しろとまでは言いません。
ただ、これからの情報発信には正確性を心がけて欲しいのです。
皇室のインフリキシマブ使用のニュースの報道のされ方を見ていると、さらに大きな偏見を抱かれそうで恐怖感があります。
「病気」を「批判の道具」にしないでください。
他にも、ある女性タレントが「クローン病が民間医療で治った」などとメディアで言っていますが、クローン病が完治する根拠はありません。
そもそも難病の定義は発病の機構が明らかでなく、治療法が確立していない希少な疾病です。
治るなら難病でない。
難病のエビデンスがない言動の発信に対して、すこし慎重になってほしいです。
ただでさえ、「お腹が痛いくらいで仕事休むの?」「治る病気じゃないの?」と言われることで傷ついてる人たちがいます。
苦しい病気なのに、「ただのサボり」のように思われていることが多い。
僕の経験した偏見をもった2人は口に出して言ってくれただけよかった。
相手が口にせず、難病患者が知らずに不利益を被っていることも多いのかもしれない。
僕はクローン病、潰瘍性大腸炎の社会の偏見もなくしていきたい。
メディアの皆様にも正確な情報発信の協力がいただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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