長篇【僕らの唄が何処かで】⑨ -last-西野七瀬
【冬の日から春の手前へ、哀惜はこの胸に】
「………好きです、付き合ってください」
冬も意外と好きみたいだ。厚着を重ねて格好を楽しめる。二人でいる時には自然と手も絡み合っていく。
一実のマフラーで埋めた頬を僕は赤子を大事にするように撫でていく。寒さに展開された人生の一瞬に有難いと思う日が来るとは、引っ越し前の僕は想像も出来なかったであろう。
典型的な告白の妙など、友達から借りた映画で見たやり方しか知らない。僕はそれを見習って、一実を呼び出して告白をする。
少しロマンチ