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【民主主義とは何か】曖昧な民主主義という言葉を考え直す

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆

〜民主主義ってどういう意味?〜

「民主主義」という言葉は非常に曖昧である。
いろんな場面で使われる民主主義という言葉だが、各々使う人によりその定義が違うように思える。
「自由を守るために民主主義は必要だ」
「世の中を良くするために民主主義は守らなければならない」
「民主主義の崩壊は社会の崩壊だ」
などなど、民主主義という言葉を使ってさまざまな議論が交わされるのだが、では、「民主主義」ってどういう意味なんだろう?それを明確に答えられる人は実は少ないんじゃないだろうか。

本書は、民主主義の歴史を辿りながらその本質に迫り、改めてその意味と意義を問い直すものである。


〜現在の民主主義は始まったばかり〜

さて、本書では「民主主義」を「参加と責任のシステム」と捉えて解説している。
本書によると、民主主義の始まりは古代ギリシアである。アテナイの民会では、普通の人々が発言権を持ち、その声が政治に反映され、公職は(選挙ではなく)抽選で行われた。人々は積極的に「自分たちが社会を作るのだ」と、自覚的に政治に参加していた。

民主主義の説明としてよく使われる「みんなのことはみんなで話し合って決めよう」というのを文字通り表しており、ある意味「民主主義」という言葉を正確に表している形態と思われる。
しかし、この形態も少人数の集団であれば成り立つが、生活単位が大きくなると、全ての人が発言する機会を作り出すのは物理的に難しくなっていく。また、「民主主義とは多数決だ」というのは今でも使われる説明のひとつであるが、この時代で既に「多人数の意見が正しいとは限らない」というプラトンなどの批判もあり、次第に初期の民主主義のシステムは維持出来ずに廃れていく。

その後、一部の「優れた人物」を代表として政治を取りまとめる共和政やそこから派生し、貴族制や王政、独裁制などさまざまな政治の統治(支配)体系が世界中で作り出されていくわけだが、民主主義が始まって2500年の歴史の中で、ほとんどの時代において民主主義は批判的な意見に晒されていた。

そして、民主主義が再び世界中で肯定的に扱われるようになったのは第二次世界大戦後となる。つまり、現在の「民主主義」の進展はまだ始まって200年と経っていない。対戦後の「民主主義」は「完成した」と言える事例は世界中においてどこにも無く、まだまだ発展途上であると言えるのだ。

すなわち、真の「民主主義」がまだ達成されていないのは、「民主主義」という言葉がまだ真の定義を持っていないからなのである。
「民主主義」は本当に良いものなのか?という問いは、「民主主義」とは何か?にまず答えを出さなければならない。そして、その議論は今も世界中で進行中なのである。


〜得体の知れない「民主主義」〜

僕は、何かにつけて「民主主義」という言葉を聞くが、どれも胡散臭く聞こえていた。
それはすなわち「民主主義」という言葉を明確に定義出来る人が誰もいないからなのである。
にも関わらず、各自が自分で定義した「民主主義」という言葉を使い、わかったようなことを言う。

それぞれが思う「民主主義」にすれ違いがあるから争いが起こる、というのは言い過ぎだろうか。今一度、人々は「民主主義とは何か」という問いを考え直す必要があるのではないだろうか。

得体の知れない「民主主義」という言葉を考え直すのに非常に有用な一冊であった。

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