たきのはら

D&D関連書籍の翻訳をしたり、動画配信セッションのプレイレポを書いたりしていた…

たきのはら

D&D関連書籍の翻訳をしたり、動画配信セッションのプレイレポを書いたりしていた。しばらく本業で国外長期出張が続いたために中断していたが、コロナ禍の影響(?)で、仕事したり遊んだりのオンライン環境が整ってきていることに気づき、ひとまずセッションに復帰した系。

最近の記事

【プレイレポート】鬼の研究_第2話《猿の怪・2》_後編

1. 討伐隊  「あの、お坊様」  おずおずとした声に、迦楼羅は我に返った。  幻影の武士(もののふ)の影を目の奥から振り払って見れば、いったん散った村人たちがいつの間にか集まっているのだった。 「あの猿どもは、村までの街道で、すっかり退治られたのでございましょうか」  いや、と、迦楼羅は眉を顰める。忍慶殿と、あの白い犬の仇は残らず取った。しかし、まだ油断はできぬ。村を荒らす猿どもがあれですべてかどうかは分からぬ。おそらくは違う。  ――それではどうか、その猿ども

    • 【プレイレポート】鬼の研究_第2話《猿の怪・2》_前編

      ――信州信濃の光前寺 しっぺい太郎に知らせるな             静岡県見付天神に伝わる説話 1.火花の名前  奇妙な一行が黄昏の山道を急ぐ。  長身、白皙の僧形の男は、同じく墨染の衣に身を包んだ骸を背負っている。これを先頭に、顔や手足のあちこちに煤とも泥ともつかない汚れをこびりつかせた少年。その足元を、真っ白な毛並みのふくふくと丸い仔犬がまつわりつくようについてゆく。その脇を、ちぎれた鎧と蓑を綴りあわせて傀儡に仕立てたようにも見える風体の――しかし、操るものの姿

      • 《死者たちの宴》3-2. スカルヘイム城の探索

        ‼️注意‼️  以下の文章はD&Dシナリオ、CM2 ーDeath's Ride(邦題『死者たちの宴』)を遊んだ時のレポートです。完全にネタバレしていると思われますので、これから遊ぶ方はご注意ください。 “死せざる者”  命に別状はないとはいえ、未だ酷く傷を負った状態のアルマンドを、比較的に安全と思われる兵舎に連れて行って休ませる。また、アルマンドの状況から、この城にはまだ“命あるもの”が残っていないとも限らないと判断できたので、我々もひと息入れたあと、さらに城の探索を

        • 《死者たちの宴》3‐1. 不浄の呪い

          ‼️注意‼️  以下の文章はD&Dシナリオ、CM2 ーDeath's Ride(邦題『死者たちの宴』)を遊んだ時のレポートです。完全にネタバレしていると思われますので、これから遊ぶ方はご注意ください。 悪霊  飛び出してきた幽鬼の群を目の当たりにした瞬間、ドーンの身体が強張った。  「おぬしらは……。そうか、さぞかし……さぞかし無念だったろう……」  まだ生々しい血に濡れた皮鎧を纏い、汚れてはいても錆びてはいない剣を手にしたその姿は――生気はすっかり失われ、瞳は眼

        【プレイレポート】鬼の研究_第2話《猿の怪・2》_後編

          《死者たちの宴》3‐3. 穢れ為す者

          ‼️注意‼️  以下の文章はD&Dシナリオ、CM2 ーDeath's Ride(邦題『死者たちの宴』)を遊んだ時のレポートです。完全にネタバレしていると思われますので、これから遊ぶ方はご注意ください。 オルクスの眼  というわけで、天守塔に戻り、探索を続けた。  が、扉を開けても開けても、無人の部屋か、戦闘で焼けた部屋か、物取りに荒らされた部屋があるばかり。生存者も、魔剣の欠片も残っている様子はない。  ドーンがあまりに無造作に扉を開けるので、つい心配になり、「聖騎

          《死者たちの宴》3‐3. 穢れ為す者

          《死者たちの宴》 2. 孤城の怪物

          ‼️注意‼️ 以下の文章はD&Dシナリオ、CM2 ーDeath's Ride(邦題『死者たちの宴』)を遊んだ時のレポートです。完全にネタバレしていると思われますので、これから遊ぶ方はご注意ください。 無人の城  城門や城壁に我が物顔に陣取る巨人や蠍人間どもの様子を窺う限り、どうやらスカルヘイム城の戦いは愉快ならざる結果となってしまっているーーいや、まだ決着がついたとは限らぬのだが。助太刀すべき戦闘がまだ行なわれてはいないかと、目を凝らしたが、城外から見えるところは既に

          《死者たちの宴》 2. 孤城の怪物

          《死者たちの宴》1‐3. ”償いなす者”たちと暗雲の地

          ‼️注意‼️ 以下の文章はD&Dシナリオ、CM2 ーDeath's Ride(邦題『死者たちの宴』)を遊んだ時のレポートです。完全にネタバレしていると思われますので、これから遊ぶ方はご注意ください。 不浄なる代理人  ――誰だ、俺に願いを言ったのは  しばらく喚いたあと、ようやく言葉でやりとりすることを思い出したかのように、影なき“三つ目”はこう言った。  「お前か」  そしてドーンに詰め寄る。  「私ではない、あそこにおわすグローマン王が願いの主だ」  と

          《死者たちの宴》1‐3. ”償いなす者”たちと暗雲の地

          《死者たちの宴》1-2. 名代たち

          ‼️注意‼️ 以下の文章はD&Dシナリオ、CM2 ーDeath's Ride(邦題『死者たちの宴』)を遊んだ時のレポートです。完全にネタバレしていると思われますので、これから遊ぶ方はご注意ください。 戦神の聖騎士  イリアナに伴われ、謁見の間に通される。  城詰めの戦士たち、そしてこの城と神との仲立ちをする戦神テンパスの神官――いや、もう少し有り体に言葉を使うなら”武僧”と称した方が正しいような、そんな出で立ちと面構えの聖職者たちの間に、王太子トーマリク殿下が何か苛

          《死者たちの宴》1-2. 名代たち

          《死者たちの宴》1‐1. 凶兆の守護天使

          ‼️注意‼️ 以下の文章はD&Dシナリオ、CM2 ーDeath's Ride(邦題『死者たちの宴』)を遊んだ時のレポートです。完全にネタバレしていると思われますので、これから遊ぶ方はご注意ください。 予兆  その日、死の神――《死者の王》にして《罪人を裁くもの》ケレンヴォーの神殿を、王城からの使者が訪なった。神殿の片隅にひっそりと設えた私の書斎に使者が届けてよこしたのは、この地・ハーツヴェイルの王太子妃でもある私の古い知人、《シルヴァリームーンの魔女》イリアナからの

          《死者たちの宴》1‐1. 凶兆の守護天使

          【プレイレポート】鬼の研究_第1話《猿の怪》_後編

          3. 燃える洞窟猿、炎、悲鳴、哄笑、黒煙、混沌。 洞窟に入り込んだ野ネズミの目に映ったのは、毛皮に火が着き狂ったように跳ね回る猿ども、そしてその中央に突っ立ち、時折りその胸をがばりと開いて焔を噴き出しながら嬉しげに呵々大笑するーーなんと言えばいいのだろう。つぎはぎだらけの鎧の上にさらに蓑笠をまとい、火を吹く杖を打ち振る……つぎはぎ鎧の傀儡といえば一番近いのだろうか。 どちらもお山に居ていいものじゃない、相討ちになればいいのに、と、野ネズミが踵を返しかけたとき、助けを求める

          【プレイレポート】鬼の研究_第1話《猿の怪》_後編

          【プレイレポート】鬼の研究_第1話《猿の怪》_前編

          1. 猿と火の神声がする。 ささやく声がする。 繰り返し、繰り返し、寄せては返す波のように。 ――起きなよ ――もう、いい頃合いだよ そして“それ”はゆるりと目を開けた。 そこが洞穴の中で、そして周囲でキィキィと声をあげたり自分を崇めるようにひれ伏したりしているのは猿どもの群であると“それ”はなぜか瞬時に理解した。 確かに猿の群ではあるが、いかにも奇妙な一団であった。群の首魁ーーというよりは大将といったほうが相応しい大猿は、小札を連ねた鎧のぼろぼろになったものを身体に

          【プレイレポート】鬼の研究_第1話《猿の怪》_前編

          【プレイレポート】鬼の研究_序

          序-あるいはキャラクター紹介-――国内の山村にして遠野よりさらに物深き所にはまた無数の山神山人の伝説あるべし。願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。       柳田國男 『遠野物語』序文より  はぜ火 どこか遠くで、それともひどく近くで、かすれた音がする。 繰り返し、繰り返し、執拗に―― 音、いや、声。 言葉にならない声が呼びかけてくる。 応えるように、身体の奥で何かが動いた。 温かい――いや、熱い。  熱い?  身体?  これが、おれの、身体――なのか。  ゆ

          【プレイレポート】鬼の研究_序