★我楽多だらけの製哲書(45)★~異端だけれども正統な位置づけとグレゴリウス7世~
以前の投稿で、「サンマルク公会議」と題して、サンマルクカフェにおけるチョコクロの正統と異端について偉そうに述べたわけだが、この議論そのものが異端であるとして叱責されてしまうだろうなと、ある出来事を思い出した。
現在のように新型コロナウイルスの世界的な蔓延など予想もされていなかった2019年7月、私はラオスに住んでいたが、勤務していた日本語補習授業校の長期休みを利用して、ネパールの国際ボランティアキャンプに参加していた。
そのとき同じボランティアプログラムではないのだが、ちょうどホームステイ先が同じになったフランス人の女の子がいた。私が参加していたプログラムは「Walk with Nepal~震災復興特別プロジェクト~」であり、2015年の大震災の復興のため、山村のふもとに公民館を建てるというものだった。一方、フランス人の女の子は、孤児院や小学校を回って教育に関するボランティアをするプログラムに参加していた。
そして、私がボランティアに参加した一週間はちょうど、活動拠点が重なっており、同じホームステイ先になったのである。おそらく大学生くらいだと思うが、モデルなどもしていて、今回は孤児院などでのボランティアに関心が高く参加していたようである。印象としては、テンションのアップダウンが激しく、テンションが高いときにはとにかく饒舌だったなあというものである。
私は一週間でネパールを去ることになったが、その女の子はそれからさらに一か月滞在する予定だった。ただその子は、ネパールの食べ物があまり得意ではなく、いつも故郷フランスの食べ物が恋しいと言っており、時折、SNSでメッセージが届いた。ネパール滞在の後、ちょうど日本を訪れていた私は、故郷フランスのクロワッサンを思い出してもらおうと思って、サンマルクカフェの「チョコクロ」の画像を送ってみた。
すると次のようなメッセージが返ってきた。
「Ahah what is that ? A croissant 🥐?」
そこで「Choco croissant!」と返信すると、次に返ってきたメッセージは強烈なものであった。
「Blasphemy!!!」
これは「冒涜」という意味である。
そして続けて「Croissant need to be just with butter 😛」というメッセージが届いた。
私はその場を取り繕うために「sorry, it is a japanese casual style.」とか「I also like butter croissants most.」といったメッセージを送ったが、その後の返信はしばらくなかった。おそらくクロワッサンの本場であるフランス人を怒らせてしまったのであろう。
「私は正義を愛し、罪を憎んだ。(I have loved justice and hated iniquity)」
これは11世紀初めに起こった聖職叙任権闘争で、神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世に対して、破門宣告を下した教皇グレゴリウス7世の言葉である(言葉全体としては「私は正義を愛し、罪を憎んだ。よって私は追放されて死ぬ。(I have loved justice and hated iniquity: therefore I die in exile.)」で、彼がこの世を去る際に発したとされている)。この破門宣告によってハインリヒ4世は、神聖ローマ帝国内の領邦からの信頼を失ってしまう。そして、彼は教皇グレゴリウス7世の許しを請うため、教皇の元に赴いて雪の中、三日間立ち尽くしたといわれている。その結果、ハインリヒ4世は許されることになるが、この出来事は「カノッサの屈辱」として知られている。
以前の投稿で、私は「正統チョコクロ」と「異端チョコクロ」という枠組みで論を展開したわけだが、本場フランスの人から言わせれば、チョコクロという物自体が異端であり、塩ハチミツにするとか、ホワイトチョコにするとかという次元の問題ではなかったのである。私もフランス人に対する怒りを買い、破門宣告のごときメッセージを受け取ったわけである。
その後、私もハインリヒ4世同様、許しを請うため、スターバックスの「正統クロワッサン」を連日送り、何とか許されたわけである。「クロワッサンの屈辱」というところだろうか。
(以下、考察は続く)
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