海中果樹園②(ショートストーリー)
「大丈夫ですか!?」
いつものように海に潜ろうとしたときだった。岸の方から誰かの声が聞こえた。
波の揺れる音のせいでしっかり聞き取れたわけではないけれど、それは私を心配する声だった。
ざば、と顔を出す。ふり返ると、一人の男子高校生が、波の向こう側でこちらを見ていた。
時間帯からすると放課後、学校からの帰り道にここへ寄ったらしい。
その表情は困惑と、恐怖と焦りの入り混じったものになっていた。
「あの、大丈夫ですか」
もう一度、声を掛けられる。あ、はい。大丈夫です。