本屋さんの冒険で、なかなか家に帰れない人
5月連休の後、京都旅行の最終日で京都丸善に寄った。『檸檬』の梶井基次郎で有名な京都丸善だ。
以前の記事でもちょっと触れたが、今日はもっと本屋さんのことを話してみたい。
▼図書館のような陳列棚に心が躍る
京都丸善は、まずこの陳列棚にそそられた。高い天井高を生かし、まるで図書館のような風情。広い空間、本棚を見るだけで楽しい楽しい。
お目当ての場所は最後だ。とりあえず全部見たい。予期しない出会い、フォーリンラブを祈りつつ。
書棚を探検中、離れがたき1冊の本と出会った。やっぱりあったね、フォーリンラブ。
次はいよいよ、お気に入りの出版社コーナーだ。目指すはハヤカワ、ちくま、創元推理。京都丸善の広い空間、端っこの方にあることは確認済み。
このドキドキ感はなんだろう。初めての本屋さん。ハヤカワが、創元推理が、どんなふうに私を迎えてくれるのか。早鐘の胸を押さえつつ、まずはちくまだ。
▼サブカルの宝庫、ちくま文庫
キター❗❗❗
『書痴まんが』の表紙、諸星大二郎の『栞と紙魚子』! その横に『ねじ式』とは。この陳列センスがいかにも京都っぽくて二重丸。
『ねじ式』は青竹堂版を持っている私。じゃあ書店アンソロジーの『書痴まんが』だけ買っとくか。
バイバイちくま、ありがとう。さてさてお次は創元推理。ハヤカワは最後のお楽しみに。
▼創元推理文庫でクールダウン
一番見たいところは、書店員さんのオススメコーナーだ。
創元推理の棚では、伊坂幸太郎『夜の国のクーパー』の横に『アヒルと鴨のコインロッカー』を寄り添わせている。普通かな。いやいや、良い選別。
でも書店員さんの行き過ぎた選別グセを楽しみたい私には、これではちょっと物足りない。
そろそろハヤカワへ赴くとするか。
▼さすがハヤカワ文庫。書店員さんの熱、期待以上
オススメ一覧の陳列棚には、話題作がズラリ並ぶ。『ポストコロナのSF』は時代感ならではの選出か? 個人的には『三体』で話題を呼んだ中国SFなどアジア系進出作の方が断然面白い。
オススメ一覧陳列の楽しみは、あーだこーだとツッコミながら見ることだ。『青い脂』は全然知りませんでしたスミマセン、なんて感じに。
そしてこの書棚、キタキタキター❗❗❗
書店員さんのSF愛炸裂! この選別、この趣味性!
ギブスンのサイバーパンク『ニューロマンサー』の横に、宇宙もの3冊!?
84年に発表された『ニューロマンサー』の近未来像と、現代の重なりは恐ろしい。ちょっと枝分かれはしたけれど。SFを読めば未来が見えるよと言いたい陳列?
で、惑星との繋がりに世界を拡げ、文芸的な感動も秘めてる悲喜劇『タイタンの妖女』、ガンダムの元ネタでもある『月は無慈悲な夜の女王』、壮大なファーストコンタクトものと括っていいのか『ソラリス』というラインナップ!
人類の運命を示唆する作品群、みたいな感じだろうか。
ワクワクする! 頭の中でキャーっ
すべて50〜80年代の作品なのに、今読んでも色褪せない。
表紙で主張している本を見ていると、書店員さんと会話しているようだ。
家帰ったら『ニューロマンサー』すぐ読み返しますよとか。
こちらは、大好きなロアルド・ダールやスタンリィ・エリンもちょこっと紛れているミステリ棚。
写真下段に、村上春樹翻訳の古典がずらり。ハルキストには申し訳ないけれど、村上翻訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』にはかなり不満だった。作品の雑味とキレは野崎孝翻訳に及ばずという感想で。
でも『ロング・グッドバイ』を40ページほど立ち読みした結果、これは村上翻訳版、めちゃめちゃアリだと。
個人的には清水俊二翻訳『長いお別れ』の言い回しやテンポ感は“絶対”だ。だが、より映像的な村上翻訳は、立ち読みが止まらなかった。
これは別物として2冊読みたくなる。好き嫌いはその後で。
▼6冊購入し、本屋さんの冒険終了
京都丸善での購入本は、旅行帰りで軽めに読める6冊厳選。でも東京で買える本ばかり。あれれ……
いいのいいの。京都の本屋さん冒険の戦利品だから。Amazonでポチるのとは全然違う楽しさだから。
*陳列写真はすべて2022年5月12日時点のもの
*サムネール写真 Image by Johnnys_pic from Pixabay