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世界一の本の街・神保町、ぶらり再び

またフラフラと行ってしまった、神保町
前回の記事同様、こんなに忙しいというのに何をしているのか、この私。

いや忙しいからこその現実逃避、もとい気晴らしである。
気晴らし、気分転換、いい言葉だなあ。


▼前回記事


▼東京都千代田区観光協会・神保町古書店街案内のHP





▼古書店MAPは強い味方

今さらながら、神保町は世界一の本の街らしい。
ネットで神保町古書店街の情報はすぐに見つかるし、紹介記事もたくさんあって初めての人でも行きやすいだろう。

行き当たりばったりで古書店に入っても、高確率で無料の「神保町古書店MAP」が置いてある。これがあれば千人力だ。


無料の神保町古書店MAP
(八つ折)
古書店と飲食喫茶の場所が一発明解
書店は150店以上。見ているだけでワクワク


前回の神保町古書店めぐりの目的は、近代文学の初版複刻本探しだった。

今回は私が最も愛するミステリー、SF、幻想文学を狙っていく。最初のお目当ては羊頭書房だ。



羊頭書房はSF、ミステリーを始めカルチャー本が揃う古書専門店。
ミステリマガジンやSFマガジン、ハヤカワ青背の欠番を埋めたい趣味人たちの救世主でもある。



羊頭書房の場所は、前回の記事でもご紹介した行列が名物のキッチン南海のお向かいである。
写真の行列は女子率0%だが、今日は土曜日。神保町そのものがオジサンたちで溢れかえる土曜日だから仕方ない。



▼ダンジョンのような店内を物色


羊頭書房
の客も女性は私ひとりだった。まあ、そんなことを意に介する私ではない。むしろ同じSFファン、ミステリーファンのオジサンたちに親しみさえ湧く。

陳列本の有様は、ちょっとしたダンジョンさながら。

見えない棚の奥にもびっしり本が並んでいる。床にも本が無造作に積み上げられ、早い話、棚に収まらない本がひしひしめいて、ひしめいている。

さてさて苦労を厭わず手前の本を押しのけて、奥の奥まで物色しよう。苦労はそれなりに報われるのだ。

「あ! 壜づめ女房!」

狭い店内で声が出て、バツ悪く口に手をあてがう。
ああ、ロアルド・ダールの短篇含む『壜づめの女房』ではないか! ハヤカワの異色作家短篇集、しかも最初の貴重シリーズだ。

値段は3,800円。

欲しい本が見つかっても、いちいち飛びつくわけではない。自分の中の相場観と相談である。それすなわち、古書状態のレベルと値付け、市場への出回り具合

本に関して超マニアで猛者なnoterさんが、我がコメント欄にこんな書き込みをされたことがある。
『壜づめの女房』を含むこの異色短篇集全18巻をまとめてたった9,000円で購入されたと。

もちろんこれは特例だし、お宝発掘の武勇伝に他ならない。
私もせめて、1冊あたり2,000円台で入手できればと狙ってはいるのだが。
ネットで1万円近い値付けもあるがそれは無視。

さて手放すか……。

お宝には、巡り巡って巡り会えるものなのだ。それが古書の面白いところ。縁が無ければ引き寄せられない。

サラバ

声を殺して本を戻す。奥から引っ張り出した本を戻す行為は虚しいばかり。

でも満足だ。ジャック・フィニイの初版ヴォネガット、コニー・ウィリス、P.K.ディックのマイ欠番本も超安で見つけた。
他にも松岡正剛本、澁澤龍彦監修の幻想文学短篇集、別冊幻想文学の中井英夫スペシャルなるレア本も入手。

まずまず。ヨシヨシだ。


羊頭書房での戦利品




▼本の神様が味方についた日


次は書泉グランデに寄ろうと靖国通りを歩き、三茶書房を通り過ぎた。
が、なぜか気になる三茶書房。後ろ髪を引かれるように立ち戻って入店した。

古書店街ではよくあることだ。
カンというか、あるいは何かに導かれるような不思議な感覚



予感的中、三茶書房は運命の寄り道だった。

あきらめていた『たけくらべ』と『みだれ髪』の初版複刻本に出会ったのだ!
前回、八木書店で見たのは「並品」レベルのためスルーした。ここにあるのは「極美品」、しかも安いではないか!

私には神保町の神がついているのか。
もちろん秒で即買いである。


▼与謝野晶子の『みだれ髪』と樋口一葉『たけくらべ』(外匣)



▼『たけくらべ』装丁

▲ミントグリーンの地色に金箔、
深紅のタイトルが映えてキレイ。
裏表紙に深い刻印あり。
極美品、いや超極美品だ。
▲口絵は美人画で有名な鏑木清方
清方の弟子筋には伊東深水もいる
なんじゃこりゃレベルの贅沢口絵
本文ページは原稿用紙の
手書き文字のまま


『たけくらべ』巻頭には幸田露伴、島崎藤村の序文、巻末に泉鏡花らの樋口一葉追憶記あり。序文や追記はすべて写植文字で読みやすい。

私が初版複刻本に求めているのは、珍しく豪華な装丁、美しい装丁である。


▼与謝野晶子『みだれ髪』の本文と挿絵の版画

世界観たっぷりに楽しめる
こちらも極美品!




▼ふらり立ち寄りこそ、本屋の醍醐味


神保町の神が私の頭上におわすような昂揚感
のまま三茶書房を出て、必ず立ち寄る書泉グランデに到着。

ここは古書店ではないが、趣味本のフロアが充実している貴重な書店なのである。



書泉グランデ、1階以外のマニアなフロア案内版。


私はコミックフロアを見ることが多いが、5階の鉄道本も好き。
鉄道本は旅行好きにもたまらないラインナップで圧倒される。

ディープなカルチャー本が溢れる各フロアだが、自分に関係ないとそっぽを向かずに立ち寄りたい。
これが本屋の良さなのだ。知らない世界がそこにある。
まるで知と遊のワンダーランドではないか。


ほらほらこんなことだってある。
4階の占い専門書なんて、私、普段は興味の範疇外。でもここで国書刊行会・50周年フェアのコーナー発見!

国書刊行会の本といえば、ミステリや幻想文学、オカルト関連等々の美しい装丁本に目を引かれる。このフェアでは有料級の50周年記念冊子が無料で置かれていた。


いかにも国書刊行会らしい装丁デザイン


136ページのこの厚さ。
これで無料!
巻頭はカラーページの豪華さ


結局、書泉グランデでは写真下の2冊を購入。
丸善でもどこでも買える本ではあるが。


SF関連の科学本、時空理論本の類いは条件反射的に読みたくなる。SFの世界観を現実レベルで楽しく知識補完できるから。
SFマガジンは気に入った特集月だけ買う。


さて、最後は洋書専門店の北沢書店で〆よう。

靖国通りを白山通りに向かって歩く。

ずらーっと並ぶ古書店を眺めながら移動
真ん中の建物は「BOOK HOTEL 神保町
“「私の本」を見つけるホテル”
らしい。
その横の黄土色れんがの建物が北沢書店


北沢書店に到着。
北沢書店はビルの2階。階段を上がると、異空間の古書店がそこにある。

なんとなく誘われてしまう雰囲気


入口から中を店内をのぞいたところ。お屋敷内の図書室みたいな雰囲気だ。


入口真正面


絵本の原書探しが目的だったが、お目当て本が見つからずに家路をたどった。

疲れた。荷物が重い。
家に着いたら戦利品の本を眺めながら、『タイムマシンで未来へ行けますか』を真っ先に読もう。

あれ? 私、仕事が詰まってたんだっけ。
神保町マジックのおかげですっかり忘れてしまっていたわ。



イラストACよりせいじんさんのイラストを使用


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